サイズが大きくなったiPhoneにがっかりし、未だにiPhone 5Sを使い続けて4年。スマートフォンにスペックを求めていないこともあって、更新のスパンが短めなスマートフォンにしては長期間愛用しているのですが、バッテリーの劣化が深刻なレベルになってきました。
iOSのアップデートサポートも、次期iOSのiOS12でサポート対象外となる可能性が大きいため、iPhone SE2はまだかと待っていたのですが、スタンバイで1日も持たなくなるほど深刻なレベルだったため、不本意ながらバッテリーの交換をしてみることにしてみました。
■バッテリーの劣化したiPhone 5s
バッテリーの劣化は末期になると特徴的な症状が出てきますが、私の環境では数十%程度有ったはずのバッテリー残量が突然1%になり、バッテリー残量警告が出る症状が特徴的でした。
この症状は、SoC(CPUやGPU・通信系等のチップを1つのチップにまとめた物)の処理能力を求められるアプリを立ち上げた際に出てくることが多いと感じます。
恐らく、SoCに大きな負荷がかかる処理の最中、消費電力に対してバッテリーの放電能力が間に合っていないことで電圧降下を起していることが原因ではないかと予想しています。
この症状を緩和するためか、iPhone 6以降では意図的にバッテリーの劣化に応じて処理能力を落とすという制御が秘密裏に行なわれていたようですが、この制御が明るみに出て問題となったのは記憶に新しいところです。
他にもバッテリーの持ちが悪くなる症状もありますが、こちらは突然というよりは、ゆっくりと劣化していくので、症状としてはある程度進行しないと分りにくいです。
私の環境では、劣化の兆候が顕著に出てきているまで使い続けていたため、スタンバイ5時間5分で使用時間17分という状況にて、バッテリー残量は64%という酷い状況になっていました。
私の環境では、劣化の兆候が顕著に出てきているまで使い続けていたため、スタンバイ5時間5分で使用時間17分という状況にて、バッテリー残量は64%という酷い状況になっていました。
■自己責任でiPhone 5sのバッテリーを交換する前に
iPhoneのデザインの美しさについては、ユーザーがバッテリーの交換を前提としない事で成り立っている部分もあり、バッテリーをDIYで交換する場合の難易度は高めです。
電子工作がある程度できるレベルでないと、配線を引きちぎり、発火して大切な部品を破損させ、場合によっては火災に繋がることもあるため、正直なところお勧めできないのが現状です。
iPhone 6以降ではAppleによるバッテリーの無償交換サポートがあるようですが、対象外のiPhone 5sではショップにお任せかDIYという選択肢になると思います。
が、あいにく地方にはそのようなサービスを行なってくれるところはなく、毎日使うものだけに手放すこともできず、DIYで交換せざるを得ない状況です。
ということで、ネットで探してみると出てくる出てくる・・・。iPhoneのバッテリー単体から交換に必要な物がセットになったキットまで、iPhoneのDIY向けアフターマーケットは予想以上に充実しています。
分解する時点でサポート対象外になるのはもちろん、バッテリー等もAppleのサポート対象外の製品ばかりですので、失敗したら全て自己責任です。
その分安価なので、その点はとても助かるのですが、重要な部品だけに価格だけで決めず、実績のあるショップで購入してきました。
今回購入したのは、Amazonでベストセラーかつ高評価となっているDIGIFORCEのiPhone 5s用キットになります。
■チャンレジ!iPhone5Sバッテリー交換
バッテリーの交換を前提としている機種は簡単にバッテリーの交換ができますが、iPhoneはやや強引な手段が必要になることもあります。
その際に役に立つのが専用に作られている治具で、これらの治具と特殊ドライバーがセットになっているキットでは、必要な物はほぼ揃っているため、説明書に従って作業を開始するだけです。
DIGIFORCEのキットは説明書が非常に詳しく、写真入で解説しているため、指示に従っていれば交換ができますが、実際に作業をして説明書で物足りない部分を捕捉しつつ交換作業を紹介していきます。
分解する前に、まずiTuneでバックアップをしておきます。最悪、作業中に壊してしまっても、別のiPhoneを入手してバックアップから復元することで環境を復元できるので、絶対にやっておく作業になります。
バックアップが終了したら電源を切ります。
Lightningコネクタ周辺にあるネジを特殊ドライバーで外します。ネジロックが塗布されている跡が見えますが、弱強度なので簡単に取り外せます。
次に、吸盤をホームボタンが被らないギリギリに寄せて取付けます。この後、3mm程度の隙間ができるまで引っ張り上げるとありますが、勢い余って引っ張りすぎるとホームボタンのケーブルが断線するので、ここは慎重に作業をする必要があります。
が、フレームを曲げてしまった影響なのか、吸盤が外れる強さで引っ張っても僅かな隙間しかできず、その隙間にピック状の治具をやや強引に差し込み、何とか上部フレームを外すことができました。
上部フレームが外れたらホームボタンのケーブルを基盤から取り外します。接続については上から押さえつけてロックしているだけで、固定カバーを外したら、付属のピンセットで真上にコネクタ部分を引き上げるだけで外れます。
基盤とご対面です。クリアランスが厳しく隙間など殆ど無いような設計ですが、想像したよりも中にホコリやチリが入り込んでいました。
フレームをひん曲げた箇所に至っては特に酷く、バイブレーターのユニットが有るため、バッテリー交換の前にエアダスターで一旦清掃してから再びバッテリーの交換作業に戻ることに・・・。
基盤側のバッテリーコネクターを外したら、いよいよバッテリーを交換するのですが、バッテリーは両面テープで下部フレームに接着されており、両面テープを外す必要があるのですが、これが失敗しやすいです。
フレームをひん曲げた箇所に至っては特に酷く、バイブレーターのユニットが有るため、バッテリー交換の前にエアダスターで一旦清掃してから再びバッテリーの交換作業に戻ることに・・・。
基盤側のバッテリーコネクターを外したら、いよいよバッテリーを交換するのですが、バッテリーは両面テープで下部フレームに接着されており、両面テープを外す必要があるのですが、これが失敗しやすいです。
説明書では、バッテリーのホームボタン側にある両面テープの端をなるべく水平に引っ張り引き抜くとありますが、途中で引きちぎれてしまいました。
もちろん、ちぎれた場合のリカバリーについても説明書に記載されているのですが、工程が増えて面倒なので、途中を端折ってそのままヘラ状の治具でバッテリーを浮かしにかかりました。
説明書には剥離しやすいようにドライヤーで下部カバーの背面を温めてと記載がありましたが、暖かい時期になってきたので人肌で気持ち温める程度でヘラ状の治具を突っ込みました。
この作業は全行程で最も神経を集中する作業で、冷や汗をかきながら恐る恐る作業を進めていったところになります。
というのも、Li-ionバッテリーは扱いを間違えると燃えることで有名だからです。実際に、同じようにバッテリー交換の作業中に発火した事例をネットでも見かけます。
デジカメ等で使用されるケースに入っているLi-ionバッテリーであれば少々手荒に扱っても大丈夫なように設計されていますが、iPhoneに採用されているものは保護ケースなど無い剥き出しのLi-ionバッテリーです。
強い力が加わり、内部の電解液が漏れ出て外気に触れたり、内部がショートすればたちまち発熱して、辺り一面に煙と炎が立ちこめる訳で、今回のように、想定されている使用範囲を超えた扱い方をする場合は慎重さが求められます。
それを知っているからこそ、冷や汗をかきながらの作業となったのですが、いくら発火時の対策をしているとはいえ、精神力をごりごりと削る嫌な行程で、二度とやりたくないと感じさせるには十分でした。
無事にバッテリーを浮かせることができたので、隙間から両面テープを再び剥がしてバッテリーの取外しは完了です。
ここで付属の新品バッテリーを取付けます。バッテリーは3.8V 5.921Wh(1560mAh)と純正のバッテリーとほぼ変わらない仕様です(誤差の範囲かもしれないが1560mAhだと5.928Whでは?純正に合わせているのだろうか)。
バッテリーは使用していくにつれ性能が低下していますが、これは仕様からは読み取れないため、製造メーカーの実績で評価する方法があるのですが、今回はこの方法は使えず・・・。
とはいえ、次の機種変更までの繋ぎなので、性能低下はそれほど気にして選んでいません。
しかし、Li-ionバッテリーだけに、粗悪なものは膨張、発熱、発煙、発火の可能性が高くなるため、その点だけは絶対に譲れません。
そのため、販売実績とユーザーの評価を調査したうえで選んでいます。
再びバッテリーに交換に戻り、付属の両面テープを温めた後に新品のバッテリーに張り付けて、バッテリーの収納箇所に張り付けます。
後は、分解した手順とは逆の行程で組み上げ直したら作業完了となるのですが、途中、バッテリーの接続後とホームボタンのケーブル接続後に動作テストをするため、フレームを開けたまま電源を入れるという作業があります。
分解された状態にもかかわらず、正常に動作している状況はPCなら見慣れているのですが、スマートフォンでは初めてなので画的に新鮮みを感じるところです。
組み立て後、説明書に従ってバッテリーをリフレッシュしたら全ての行程は完了となります。
■バッテリー交換で問題は改善できたのか
バッテリーの交換後、約3週間使用していますが、バッテリー残量が突然1%になる症状は出なくなりました。もちろん、バッテリーの膨張や発熱、発煙や発火というトラブルはありません。
バッテリーの持ち具合も改善しており、以前は日中ほぼスタンバイ状態のみでも夜にはバッテリーの残量不足で電源が落ちるほど持ちが悪かったのですが、同じ条件でも1日中持つのではないかと思うほどまでに回復しました。
私の利用状況では、十分にバッテリー残量を残して1日が終わるため、もうしばらくはiPhone 5Sで頑張れそうだと安堵しています。
ただ、iOS10の頃ほどバッテリーの持ち具合は回復したわけではなく、iOS11にアップデートしてから消費電力が大幅にアップしている影響は少なくないようです。
iOS11にアップデートしてからバッテリーの劣化に伴う問題が顕著に出たのを覚えていますが、スタンバイでもバッテリー消費が激しいのは、OSの多機能化により、OSそのものの負荷が大きくなったことが原因だと思われます。
故に、負荷の大きなアプリをガッツリ使う場合や、スマートフォンの利用時間が長い場合は、バッテリーの交換よりも後継機種に更新した方が良い結果になるでしょう。
■Li-ionバッテリーはどう廃棄したらよいのか
交換したLi-ionバッテリーはどう廃棄したらよいのか・・・。説明書に記載が無いため、迷うこともあるかもしれませんが、Li-ionバッテリーは燃えないゴミとして棄ててはいけません。
上記のとおり、Li-ionバッテリーは扱いを間違えると発火します。
過去に貨物航空機がLi-ionバッテリーの発火により墜落して人命が失われていることもあり、航空業界や流通業界でも扱いが厳格になってきたことで事故は減っているのですが、未だに誤った廃棄によりごみ処理業界では火災の原因になっています。
※UPS航空6便墜落事故
こういった背景を知っているので、Li-ionバッテリーの危険性と廃棄方法について説明書に書いてもらいたかったと感じるところです。
Li-ionバッテリーを廃棄する場合は、小型充電電池のリサイクル協力店に持ち込んで引き取ってもらう方法がありますが、JBRC 会員が製造・販売した小型充電式電池が対象となっているので対象外となるのですが・・・。
それでも引き取ってくれるのか、結構な数のサイトで廃棄方法として紹介されています。気になる方は事前にお店に連絡をしてから持ち込むと良いかもしれません。
なお、小型充電電池のリサイクル協力店は下記のページから検索できます。
注意するべき点としてJBRCで回収する電池は、輸送及び保管の安全上、打痕や圧壊などの外部ダメージのないものに限らせて頂いております。と記載があるため、膨張したバッテリーは引き取ってもらえない可能性があります。
引き取りを拒否された場合は個人で廃棄処理しないといけないのですが、その際は、塩水処理といって3%~5%の濃度の塩水にバッテリーを水没させ、数週間放置することで完全に放電させてから燃えないごみとして処分します。
※膨張していないものでも塩水処理した物はダメージがあるものとして扱われるためJBRCの回収対象外のもよう。
■まとめ
DIYでiPhoneのバッテリーを交換する場合、費用については安価なのですが、リスクについては大きすぎて安易にお勧めはできません。
チャンレンジするにしても、バッテリーの発火に備えて準備しておく必要があり、発火した場合は火災を防げてもiPhoneは無事では済まないため、相応の覚悟が必要になります。
それでも挑戦してみたい!というチャレンジャーなら、バッテリーの発火対策を入念のうえで挑んでください。
最後に・・・。技術の進化により、スマートフォンのみである程度のことができるまでに環境が整ったことで、スマートフォンに機能をより集中するため、高性能化と大型化が進んでいるのは理解ができるのですが、旧来のiPhoneが持っているデザインやサイズを好んでいるユーザーがいるということをAppleは忘れないで欲しいと思うところです。
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