その撮影時に重宝していた旧Eye-Fiカード(Eye-Fi Pro X2・Eye-Fi Mobile X2・Eye-Fi Connect X2)が困ったことにサポート終了に伴い使用できなくなってしまいました。
サポート終了後もEye-Fi X2 Utilityで延命できたのですが、OSをWindows 10へと更新した際、新規の旧Eye-Fiカード登録はできなくなり、旧Eye-Fiカードはバッテリー無駄に消費するただのSDカードと成り果てました。
仕方なく、従来のようにSDカードをカードリーダーで読み込んで確認するという方法に戻したのですが、とてつもなく不便なことが改めて分かったので、新しくFlashAirを使い旧Eye-Fiカードと同じ撮影環境を整えてみることにしました。
■FlashAirとEye-Fiの違い
FlashAirと旧Eye-Fiカードは同じ無線LAN内蔵のSDカードになるのですが、撮影後の動作は異なっています。
旧Eye-Fiカードは、環境が整っていれば撮影したデータを自動的に転送するため、撮影後に即PCの大画面で撮影結果を確認できるというメリットがありました。
対するFlashAirについては、撮影したデータをPCから確認しに行く必要があり、保存も別途手動で行なう必要があるので、物撮り作業では非常に面倒な行程を経る必要があります。
過去に旧Eye-Fiカードをメインに使用していた際、第一世代のFlashAirをテスト導入してみたことがありましたが、物撮りの作業効率は旧Eye-Fiカードに軍配が上がり、FlashAirに注目することはその後もありませんでした。
しかし、ここに来てEye-Fiは事業を終了していました。最近のデジタルカメラは無線転送機能が付いているものも増え、Eye-Fiの果たした役目は終わったと経営者が判断したようです。
結局、Eye-Fiのサーバーはリコーが事業を引き継ぎ、Eye-Fiに搭載されていた技術の一部はTOSHIBAへ技術提供され、第4世代FlashAirに搭載して販売されています。
発売当時、画期的な発想で知名度を上げたEye-Fiのコンセプトは、様々なデジタルカメラや競合製品に受け継がれていき、会社と共に消えてしまいました。
今でもEyefi Mobi カードは入手できないこともないのですが、サポートを受けることはできず、また、Eyefi Mobiに刷新された際、従来のモードを切捨ててダイレクトモードのみ対応という残念な仕様に変わりました。
撮影後に、自動的にデータを転送してくれるものの、PCの無線LAN接続先をEyefi Mobi カードに切り替える必要があり、接続中はLAN内の機器へ接続ができなくなるため、Eyefi Mobiに更新する価値を見いだせず、最終的にFlashAirを選択することにしました。
■FlashAirを旧Eye-Fiカードの代わりとして使う場合の問題点
FlashAirを旧Eye-Fiカードの代わりとして使おうとしても、基本的な動作が違うため、FlashAirを買ってきただけでは旧Eye-Fiカードを使用していた環境と同じ環境を構築することはできません。
上記で説明したとおり、FlashAirは旧Eye-Fiカードでいうところのダイレクトモード(FlashAirはアクセスポイントモードと呼称)で動作します。
FlashAirが無線LANの親機となり、PCの無線LAN接続先をFlashAirへと変更して使うわけですが、当然、FlashAirに接続した際は、インターネットが使えないどころか、LAN内にあるNAS等の機器へのアクセスもできないため、撮影時に調べ物もできなければ、NASに撮影データを保存することもできません。
そのため、FlashAirにはインターネット同時接続モードが用意されているのですが、これはFlashAirを経由して無線LAN親機へと接続するモードのため、転送速度がFlashAirの性能に依存してしまい、有線LAN環境を常用している身としては転送速度が遅くなることは目に見えています。
旧Eye-Fiカードと同じように、無線LAN子機として動作することができれば問題無いのですが・・・、実は、FlashAirには開発者向けにFlashAirを無線LAN子機として動作させるステーションモードなるものが用意されています。
ステーションモードは、FlashAir設定用のFlashAirToolでは設定できない隠しモードなのですが、CONFIGファイルを手動で書き換えることで、ステーションモードに切り替えることができます。
これで、FlashAirが無線LAN子機として無線LAN親機と接続することになり、LAN内の機器へアクセスすることも、インターネットの接続も従来どおりのままとなります。
しかし、撮影データの自動転送については解決していません。そこで、有志の方がFlashAirのデータを随時確認して新しいデータをPCに自動的に転送するSnowyというアプリケーションを利用します。
SnowyをステーションモードにしたFlashAirと組み合わせることにより、旧Eye-Fiカードと同じように、撮影したその場で自動的に撮影データがPCに転送され、PCで撮影結果を確認する環境が整うことになります。
これら全ての要素が揃ったため、FlashAirを購入して撮影環境を再構築することにしました。
■並行輸入品の第4世代FlashAir
FlashAirは第4世代まで販売されていますが、今回購入したのは第4世代FlashAir 16GBモデルです。
とはいえ、国内正規流通品は高いので、安価な並行輸入品を購入してきました。
パッケージは海外製品のため中国語表示になっていますが、日本語ではっきりと日本国内のサポートはできない旨が表記されています。
並行輸入品は安価に購入できるのがメリットですが、メーカーのサポートは無く、小売店の保証期間を過ぎれば初期不良品の交換もできません。
もちろん、購入時からメーカーサポートを受ける権利は無いため、設定が分からないとか、繋がらないといったトラブルも自身で解決しなければいけません。
しかし、それらのデメリットをすべて許容できるのであれば安価に入手できますし、FlashAirに関しては日本国内で製造していることもあり、製品の品質については間違いありません。
これが、並行輸入品の第4世代FlashAir W-04 16GBモデル本体ですが、第3世代まで非常に似たデザインだったものが、第4世代では瞬時に第4世代と認識できるデザインに変わっています。
おそらく、第3世代のFlashAirより無線転送速度と読書きの速度が劇的に進化しているため、今までのものとは性能が違うという意味で、あえて従来のデザインから変更しているのではないかと察しています。
実際にメーカーの仕様では、読み込み90MB/s書き込み70MB/sと動画の撮影にも耐えられる性能になっており、ベンチマークをしてみたところ、読み込み86MB/s、書き込み77MB/sという結果が出てきました。
車載機器向けに第3世代のFlashAirを所有しているので、第3世代FlashAirのベンチマークも実施してみたのですが、従来のFlashAirとは比較にならないレベルの性能差が出ています。
無線転送速度に関しては2.9倍と公表していますが、第3世代FlashAirが1.9MB/sの転送速度だったのに対して、第4世代FlashAirで公表値と同じ約2.9倍の5.6MB/sという転送速度に向上しています。
※障害物がない環境で無線LAN子機から1m先のデジタルカメラに挿入したFlashAirにアクセスポイントモードで接続した際の転送速度
従来の撮影環境では、写真撮影については旧Eye-Fiカードを使い、動画撮影は高速タイプのSDXCカードを使用していましたが、第4世代FlashAir 1枚で事足りそうです。
※第4世代FlashAirは64GBモデルのみSDXC仕様で他はSDHC
※第4世代FlashAirは64GBモデルのみSDXC仕様で他はSDHC
■FlashAirで撮影データをPCに自動転送する環境を構築する
上記のとおり、FlashAirには3つのモードが存在し、アクセスポイントモードとインターネット同時接続モードで動作させる場合であれば、初期設定はさほど難しくありません。
アクセスポイントモードについては初期設定すら不要です。デジタルカメラへ挿入したら電源を入れ、PCの無線LANの接続先をFlashAirにして、Snowyを立ち上げて自動ボタンを押せば自動的に撮影したデータがPCに転送されます。
インターネット同時接続モードについては、カードリーダーでPCに接続後、FlashAirToolで従来使用している無線LAN親機を設定しておけば、後はダイレクトモードと同じ扱いで使えるようになります。
しかし、FlashAirが無線LAN子機として動作するステーションモードについては、事前にCONFIGファイルを手動で書き換える必要があります。
このCONFIGファイルは隠しファイル属性になっているので、まずはPCから見える用に設定を変更します。
隠しファイルを見えるようにするには、適当なフォルダを開き「表示」タブに切り替え「オプション」のアイコンをクリックします。
※Windows7の場合はメニューバーのツールからフォルダオプションをクリック
※Windows7の場合はメニューバーのツールからフォルダオプションをクリック
フォルダーオプションが開くので「表示」タブに切り替えます。
ファイルとフォルダーの表示を「隠しファイル、隠しフォルダー、および隠しドライブを表示する」に切り替え「OK」を選択すれば隠しファイルが表示されます。
これで、FlashAirのSD_WLANフォルダにあるCONFIGファイルが見えるので、CONFIGファイルをメモ帳で開きます。
書き換え及び追加部分は以下の点になります。
・APPMODEを「5」に変更
・APPSSIDを追加して無線LAN親機のSSIDに変更
・APPNETWORKKEYを無線LAN親機の接続パスワードに変更
・APPNAMEを追加して識別用の名前に変更
実際に追加及び書き換える部分の記入例は下記のようになります。
APPMODE=5
APPSSID=接続先のSSID
APPNETWORKKEY=SSIDのパスワード
APPNAME=flashair01
なお、DHCPサーバーを有効化していないLAN環境では、手動でIP等を指定する必要があります。
これについては、開発者向け資料が役に立ちますので、環境に合わせて必要な物を追加で入力してください。
設定変更したら上書き保存し、FlashAirカードをデジタルカメラに入れ、電源をONにしておきます。
設定が間違っていなければ、FlashAirが指定した無線LAN親機に接続して待機するので、Snowyを立ち上げてFlashAir アドレス(コピー元)の設定をhttp://flashair/からAPPNAMEで指定した文字列に変更(flashair01ならhttp://flashair01/に)して自動ボタンを押せば、撮影したデータが自動的に転送されるようになります。
※デジタルカメラの電源を入れ、無線LANに接続しない状態が指定した時間を超えると、無線LAN機能が自動的にOFFになるので、そのときはデジタルカメラの電源を入れ直すこと。
Snowyの設定は簡潔で、自動的にFlashAirを確認する間隔と、保存先を変更する程度で十分でした。
できれば、最小化した際にタスクバーに収納できる機能と、日付ごとに作成されるフォルダの命名規則をユーザーが選択できるとさらに使いやすくなると感じます。
なお、Snowyのショートカットを作成してコマンドラインを追加しておくと、便利な使い方ができます。「/autocheck」で起動時に自動チェックが有効になり、「/minimized」で最小化した状態で起動します。
コマンドラインはショートカットを作成してプロパティを開き、ショートカットタブのリンク先に表示してあるパスの最後にスペースを付け加えて追加すれば有効になります。複数のコマンドを有効化したい場合は、間にスペースを加えて追加していけば全て有効になります。
私の環境では、/autocheckを設定したショートカットをスタートアップフォルダに置き、Windowsが起動する際に自動的に起動するように設定しています。
これにより、FlashAirをステーションモードで接続している環境であれば、PCを起動してデジタルカメラで撮影すれば、自動的にPCに転送する環境が整い、旧Eye-Fiカードと同じ撮影環境が整うことになります。
■ステーションモードで接続できないときは・・・
実はステーションモードにしたFlashAirとSnowyの組み合わせにより撮影したデータを自動的に転送する試みは失敗しています。
原因は特殊なLAN環境の可能性が高く、転送先のPCが二つのLANにまたがって存在し、それぞれのLANは別々のWANを持っているという環境で使用しようとしたのですが、どうやら複雑なLAN環境での運用は難しいのかもしれません。
もし、ステーションモードで接続できないときは問題の切り分けを行わないといけません。
最初に転送が可能になる環境が整っている状態だとして、ブラウザからFlashAir にアクセスしてみます。
アドレスはデフォルトでhttp://flashair/ですが、APPNAMEで文字列を指定した場合はその文字列に変更します(flashair01ならhttp://flashair01/に)。
これでアクセスできたら、FlashAirに接続されているのは間違いないので、問題はSnowyかPC側の設定になります。
これでアクセスできない場合は、FlashAirと無線LAN親機が正常に接続されているか確認します。
無線LAN親機には、接続されている機器を表示できる機能を備えている物があるので、その機能で確認します。
※バッファロー製無線LAN親機は接続機器のMACアドレスを表示するので、FlashAirカードの背面に書かれているMACアドレスが認証されているか確認する。
この機能がないものは、ログを確認するか対応した機器で試すしか思いつきません。
無線LAN親機にFlashAirが正しく接続されている場合は、PC側の環境かSnowyの設定に問題がある可能性が高いです。
もし、セキュリティソフト一時的に停止した状態で、正常に転送するようであればセキュリティソフトの設定を見直してください。
無線LAN親機にFlashAirが正しく接続されていない場合は、無線LAN親機、デジタルカメラとの相性、FlashAirの設定ミスが原因として考えられます。
無線LAN親機については再起動してから再び接続を試みてください。場合によってはこれで解決することがあります。また、可能であれば別の無線LAN親機に交換して試してみます。
これでも接続できない場合は、デジタルカメラの省エネ機能が邪魔している可能性があるため、他のデジタルカメラかEye-Fi連携機能をONにした状態で接続できるか確認します。
※Eye-Fi連携機能は第4世代FlashAirのみ対応
まだ接続できない場合は、FlashAirの設定を見直します。特にSSIDとパスワードは間違えやすいので、再度正しいものを入力して再接続を試みます。
最後に駄目だった場合は、FlashAirの故障を疑い、アクセスポイントモードに戻してからPCと無線LANで直接接続してから動作確認を行います。
PC環境により接続ができない場合だと、単純に接続しただけでは接続できない場合があるため、FlashAir意外に接続先が無い状態(有線LAN含む)にして確認するか、そのような状態にできる他のPCで接続してみます。
ここまでやって駄目な場合はあきらめるしかありません。私の環境では、実際にここまでしても問題を解決することができませんでした。
同じLAN内にFlashAirが存在しているのを確認できているのに、なぜかPC側からは接続ができず、FlashAir のIPアドレスを指定してブラウザで接続を試みても無反応でした。
一度のみ、なぜか接続できたことがありましたが、その際の転送速度は100KB/s以下という非現実的な速度で、FlashAirの故障を疑いましたが、アクセスポイントモードに戻して別のPCで試してみると正常に動作したため、特殊なLAN環境にあるのが原因だと決めつけて諦めてしまいました。
しかし、ある方法を使うことにより、アクセスポイントモードのFlashAirを使いながらインターネットやLAN内の機器に同時にアクセスできる方法が存在しました。
■最後の手段は無線LAN子機増設
ステーションモードでの接続は、同じLAN内にFlashAirが存在しているのを確認できているのに接続ができず、アクセスポイントモードでもなぜか無線は繋がるのにネットワークから接続できない状況にFlashAirの故障を疑うも、サブのノートPCだとアクセスポイントモードで正常に作動するのを見て、いったい何が原因なのか皆目見当が付かない状態になってしまいました。
もはやここまで来ると、原因を探すよりも解決策を手探りで探すしかなかったのですが、思いつきで今まで使っていた物とは別の無線LAN子機を追加で取り付けて接続してみると、今まで何だったのかというほどすんなり使えるようになりました。
※BUFFALO WI-U3-866Dは駄目だったが、同社のWLI-UC-G300HPは正常に動作した。
アクセスポイントモードで接続のため、本来はインターネットへの接続もLAN内の機器への接続もできないとのことなのですが、FlashAir とは別に2つのLANに接続している状態のため、それらに接続している機器へアクセスしながらFlashAirも使える環境になっていました。
ステーションモードでの接続については、元々、インターネットが使えなくなることと、LAN内にある機器への接続ができなくなるデメリットに対する解決策だったのですが、アクセスポイントモードで接続しながらこの問題が解決されるのであれば、ステーションモードでの接続にこだわる必要はありません。
なお、Snowy説明の一部に下記の説明書きがあったため、ステーションモードで使わないと、LAN環境をそのままにした状態でSnowyが使えないと思い込んだのも遠因としてあります。
”このアプリを使う前に、FlashAirと無線接続がされている必要があります。さらに、他のネットワーク接続(無線、有線を問わず)は一時的に切る必要があります。これはFlashAirが初期設定(アクセスポイントモード)では実質的に唯一のアクセスポイントとなる必要があるからです。他のネットワーク接続と同時に使うには、FlashAirをステーションモードか、インターネット同時接続モードに切り替える必要があります。”
※Snowy紹介ページの説明文より参照
しかし、実際はPCに接続している2つの無線LAN子機のうち1つはLANに接続した状態で、有線LANでさらに無線LANとは別のLANに接続しているため、FlashAir以外に2つのLANに接続している状態にもかかわらず、Snowyの自動転送機能は正常に動作しています。
特殊な環境下だからこそ可能だったのかもしれませんが、ステーションモードでの接続に失敗し、それでも、インターネットとLANの接続をしたままFlashAirと接続してSnowyの自動転送機能を使いたい場合は、無線LAN子機を増設し、FlashAirをアクセスポイントモードに戻して接続すると解決するかもしれません。
■まとめ
トラブルはあったものの、FlashAirで旧Eye-Fiカードと同じ撮影環境を整えることには成功しました。
トラブルが多い無線LANという環境下で、FlashAirを開発者向けのモードに変更して使用するという、一般的な使い方とはかけ離れた使い方により、いったんトラブルに陥るとはまる可能性が高く、万人向けの使用方法とはいえませんが、旧Eye-FiカードのようにPCに自動転送してもらわないと困るという場合には有効な手段となります。
また、上記の環境についてはLAN内で完結するため、旧Eye-Fiカードのようにインターネット側に用意されたサーバーで認証を行う必要も無く、メーカーがサポートを終了しても使い続けることができるのも大きなメリットです。
コメント
コメントする