デジモノ好きなら必ず持っているといってもいいOAタップですが、1部屋で40口を超えるコンセントを使っている身としては、とりあえず口数が多くて安価なものを選んでいました。
しかし、OAタップの品質はピンキリで、品質が低いものは抵抗が大きく、高負荷時の電圧降下や発熱の原因となるとのことをつい最近知りました。
そんなことを知らずにOAタップを選んでいたのですが、今回、OAタップが更に必要になったため、OAタップを価格ではなく品質で選んでみることにしました。
■OAタップの品質とは
OAタップの品質といってもどのように判断するか外観からでは理解できません。基本的には分解して内部構造をみる必要があるのですが、品質の善し悪しを決める要素は概ね下記の要素になるといわれています。
・導線の太さ(大きいほど良い)
導線は太さにより流せる容量が変わる。導線が小さいものほど消費電力が限界容量に近づくほど発熱し、限界を超えた際は、被服やケースが溶けて発煙や発火につながりやすい。また、発熱するということは電気が熱として消費されているわけで、無駄な消費電力が発生している証でもある。
・ハンダの有無(使用していないものが良い)
ハンダは金属の中では融点が低く260度で溶融する。消費電力が大きな機器により発熱した際に、瞬間的にハンダ部分が高熱となり、熱でハンダが溶融する可能性がある。ハンダが取れるごとにその箇所の許容電流が落ちていき、発熱が大きくなるため、発煙・発火の危険性が高くなる。
・抵抗(抵抗が低いものほど良い)
導線の抵抗値が大きいほど導線は発熱する。発熱はそれだけで電力を消費するため、無駄な消費電力が発生する。
・ケース剛性(硬いケースほど良い)
内部を保護するケースの剛性が低いと、破損して内部構造を傷つけてしまうことや、破損箇所から内部に異物が入り込んでショートする可能性がある。
・放熱性(放熱性に優れるものが良い)
放熱性が悪いと熱がこもり発煙や発火の可能性に繋がっていく。
・構造のシンプルさ(シンプルなほど良い)
スイッチやUSB電源等の機能は抵抗を上げてしまう可能性がある。また、複雑化により故障の原因にもなりやすい。なお、USB電源機能については使用していなくとも電力を消費する。
以上がOAタップの品質を決める要素になるのですが、分解してまでレビューしている人は殆どいないため、今回は、高品質のOAタップを出し続けていることで定評があるPanasonic製から出ている8口OAタップWCH2438Hをチョイスすることにしました。
■Panasonic WCH2438Hの品質は?
WCH2438Hは8口タイプのOAタップになります。8口タイプともなると長さはどうしても長くなりますが、コンセント口の間隔が大きめにとってあるため8口タイプの中でも長く、全長は44cmもあり、ネジに掛けるブラケット部分を除いても38cmとなっています。
コンセント口の形状は抜け止め機能付きの3Pタイプです。
筐体にはアース線を取り付ける箇所が1カ所用意されており、ここからアースを落とすこともできますし、アース線付き2Pコンセントや、アースが電源コードとは別に設定されている機器のアース用に使うことができます。
また、筐体の左右には壁掛け用にネジ掛け穴が用意されています。
コードは太めですが、柔らかい素材で柔軟性があるので配線時の使い勝手は良く、また、壁コンセントへの接続側が回転タイプではないため、抵抗の原因を極力排除している設計です。
分解にはY字ドライバーが必要となります。脱着式のマグネットの裏にもネジがあるため、マイナスドライバーでマグネットを取り外して分解していきます。
導線単体は直径2.6mm 37心で断面積は2.0mmと記載してありますが、実際にノギスで計測したところ近い直径を示していました。
※内部で使用している導線は全て同じ規格
導線の規格を調べてみると、概ね19Aの許容容量(3心束ねた場合)があるため、導線の太さは十分に余裕を持って設計されていることがうかがえます。
また、コンセントの固定はバネ式ではなく、自身の3Pコンセントを差し込んで固定してみたのですが、しっかりと固定して簡単には抜けないようになっています。
抵抗は計測環境がないため不明ですが、内部構造は評価の良い同社の製品や、愛三電機製のものと比較した場合、比較的類似点が多く抵抗になりそうなものは見当たりません。導線の件も含めてここで手抜きをしているとは考えにくいです。
Panasonic製のOAタップにはOAタップでは当たり前に使われる黄銅よりも伝導性に優れる銅を使用した物が一部にありますが、さすがに高価になるためかWCH 2438Hでは圧着端子以外での使用はありませんでした。
ケース剛性については横と縦には強いが、8口という長さのためひねり剛性は若干弱くなっています。ただし、ぎちぎちと音を立ててねじれるような弱さではありません。
他に気になった箇所として、抜き差しの際に負荷がかかる部分は補強が入っており、耐久性を重視した設計になっています。抜き差しが多いとOAタップの寿命も短くなりますが、WCH2438Hはその点も含めて設計されています。
少し残念だと感じた部分としては、マグネットを固定する爪部分に隙間があるため、防塵性は若干ですが落ちてしまいます。
マグネット部分にテープでも貼り付けておけば防塵性の確保もできますし、マグネットを使用して貼り付けた際にずれても傷が付きにくくなるので、養生テープでも貼り付けておくといいかもしれません。
放熱性に関しては、筐体自体が長く、無駄なものが無いため放熱性は良好だと考えられます。
実はこの商品は業務用向けの製品で、パワー機器ビジネスユニットという法人向けの部門が扱っている商品になります。
説明書を見ると、使用用途の一つとしてサーバーラックを想定しているのですが、業務用ともなると家庭用とは品質基準が違い、耐久性や品質は高く設定されているのが常です。
実際に分解してもシンプルかつ丁寧な作りで、OAタップとしては高価なだけあって、その価格に見合った品質だと感じます。
ということで、メインで使用しているOAタップをWCH2438Hに交換しました。
3Pコンセント口のため2Pのコンセントを差し込むと、アース部分のソケットが空いてしまい、防塵性が落ちるため、2P コンセントを差し込んでいる箇所は養生テープで隙間をふさいでいます。
業務用のため、3Pコンセントが当たりまえという環境での使用を想定しているのでしょうが、家庭で使用する分には、この点は少し我慢しないといけません。
ただ、品質については良好で、前のOAタップは高負荷を掛けるとOAタップ末端の電圧が95Vを切ることがあったのですが、WCH2438Hに交換してからは95Vを切ることは無くなりました。
電圧が95Vを切ると、正常に作動しないものや動作が不安定になる機器が出るので重要です。
OAタップから電源を取っているPCの動作が不安定という人は、OAタップの電圧降下が原因の可能性もあるので、テスターで調べてみるといいかもしれません。
※デスクトップPCの電源は可能な限り壁コンセントから直接取ること。
また、壁コンセント口のコンセントは自由度が低いストレート形状ですが、古いOAタップでは回転部分の抵抗により高負荷時に発熱していたため、その点は全く気にしなくとも良くなりました。
古いOAタップは低負荷の機器用に再利用していますが、いつ購入したかすら覚えていない最も古いOAタップについては、さすがに使い続けるには抵抗があったので、清掃して予備として保管しています。
なお、OAタップを多数使用してたこ足配線をしているのに大丈夫か、という疑問を持たれている方も居るとは思いますが、実はあることを守れば100口たこ足配線をしても問題はありません。
■これはやってはいけない!コンセントの扱い
たこ足配線は良くないと言われますが、一般的な家庭レベルでもタップを使わないとコンセントの口数は足りないという人は多いと思います。
私の環境では1部屋で40口以上のコンセントを常時接続していますが、これだけ繋いでも発煙、発火、ブレーカーが落ちるといったトラブルは起きません。
理由は簡単で、常に消費電力を計算してOAタップやブレーカーの容量を超えないように意識して接続するものを決めているからです。
たこ足配線は良くないというのは、消費電力を計算せずにたこ足配線をして、消費電力がOAタップやブレーカーの容量を超過してしまうためで、発熱・発煙・発火・ブレーカー遮断に繋がるからです。
そのため、OAタップを使ってたこ足配線をする場合はOAタップとブレーカーの容量を確認する必要があります。
OAタップは一般的なもので1500Wが限界ですので、接続した機器の消費電力合計が1500Wを超えないようにする必要があります。
電気を消費する機器には必ず消費電力の表示があるので、接続した機器の消費電力を足していけばよいのですが・・・。
実際の消費電力と表示されている消費電力は同じとは限りません。過去にワットチェッカーで様々な機器の消費電力を計測してみたのですが、中には表示されているよりも大きい消費電力を計測したものもありました。
可能であれば消費電力を実測したほうが良いのですが、できない場合はある程度余裕をもって(個人的には1000W~1200W程度を目安に)使用しましょう。
ブレーカーの容量については配電盤にある子ブレーカーが何Aになっているか確認します。20Aであれば2000Wの容量があるので(100V×20A=2000W)その子ブレーカーに繋がっている機器が2000Wに収まっていればブレーカーは落ちません。
ただし、子ブレーカーに複数の壁コンセントが繋がっていることもあるため、コンセントごとに2000Wの容量があるとは限りません。実際に子ブレーカーが何処まで繋がっているのか一度確認しておいた方が良いです。
また、家屋の築年齢が高いと、子ブレーカーの容量以下でも屋内配線の途中でトラブルが出ることがあります(築40年以上の建屋で導線途中の一部が熔解して断線した経験有り)。
OAタップの注意点として他に、消費電力が大きいものをOAタップに繋げることは避けましょう(大抵は説明書に記載有り)。
大きな消費電力を持つものは導線の発熱が大きく、場合によっては接続したコンセント口が発熱して発火する可能性があります。
OA関連ではレーザープリンターの消費電力が大きいので要注意機器になります。また、PCは安定した電源を確保する意味でも、壁コンセントに直接接続することをお勧めします。SLI構成だと使用するGPUによっては800Wを超えることも珍しくありません。
他にもOAタップを延長すると(導線が長いものも)電圧降下を起こして正常に機器が動作しない場合がありますし、無理に捻る、コードを束ねて使用する(熱が逃げずに高温になる場合も)、家具や人が踏みつけると内部の導線が断線し、そこから発熱して発火に繋がることがあります。
長期的に使用しているコンセントについては接続部のホコリを取り除き、トラッキング火災を防止すると共に、使用していないOAタップのコンセントはホコリが入らないように対策をしておきます。
最後はOAタップも消耗品のため最長でも5年目安に交換が推奨されています。長い間使っているものは早めに交換した方が良いでしょう。特に、抜き差しが多く酷使しているものは早めに消耗してしまうようです。
長々と書きましたが、OAタップ含めてコンセントの扱いは気をつけないと火災に繋がることがありますので、コンセントを多数必要とする環境にいるのであれば注意しておきましょう。
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