今回のプレイ編では、実際にプレイしてみて感じたことをまとめていますが、フッティングやトラッキング、光学関連等ハードウェア編と一部被る内容もあります。その点はご了承ください。
■Oculus Riftの性能はいかに?
セットアップを終えてOculus Riftを装着してみましたが、ハードウェア編でも説明しているとおり、装着感については非常に良好だとHMDを装着する度に感じます。
大きさも小柄で仰々しさがありませんが、これは、Oculus RiftのHMDがトラッキング用の光源を搭載しているのに対して、HTC ViveはHMD側にセンサーがあるため大型にならざるを得ないようです。
机の上に一時的に置くような時でも、それほどスペースを取らないこともあり、最近ではOculus Riftの利用頻度はとても高くなっています。
HTC Viveに劣るとされているトラッキング性能ついては、想定していたよりも良好なトラッキング性能で、HTC ViveのようにHMDやコントローラーの動きを滑らかにトラッキングしてくれます。
しかし、センサーの認識距離については2m程度となっており、センサーを追加してルームスケール対応にしたとしても、プレイエリアはHTC Viveよりも狭く、10畳程度の部屋をPCVRに使っている身としてはもの足りません。
部屋全体をプレイエリアにできるHTC Viveのトラッキング範囲は、ルームスケールを前提に設計されているだけに広範囲で、この点は引けを取ってしまいます。
なお、Oculus Riftはセンサーが2個でもHMDのトラッキングは360度対応しているのですが、コントローラーは後ろを向くなどしてセンサーの影に入るとトラッキングを瞬時にロストしてしまいます。
追加で1つセンサーを設置すればルームスケールに対応するのですが、センサー含め初期セットアップについてはHTC Viveよりも簡単な点はOculus Riftのメリットでしょう。
光学関連に関してはフレネルレンズを採用していることもあり、光の乱反射によるコントラスト低下がみられ、暗い映像の中に明るい箇所があるとよく目立ちます。
HTC Viveではフレネルレンズの筋が入った映像が乱反射することがあるため、この点は両者改善の余地有りと感じます。
ピントが合うスイートスポットについても同じく狭い領域ですが、HTC ViveはHMDとレンズの間が調整できるためスイートスポットに合せやすいのですが、Oculus Riftはこの点がうまく調整できないので不満を感じることがあります。
しかし、映像の編み目感については、両者ペンタイル式のディスプレイであってもOculus Riftの編み目感は少ないので、没入感を削ぎにくくなっています。
特にSteamVRでスーパーサンプリングを上げた際の差は際立っているものがあり、PCへの負荷が多少大きくなろうとも、フレーム補間技術のASWが補助することにより、より綺麗な映像を得ることができます。
使い勝手についてはよく考えられており、HMDの内部センサーがHMDを被ると反応してOculusソフトウェアが自動的に立ち上がるようになっています。
HMDを装着したままOculus Touchでホーム画面を操作することができるので、HMDを装着後、そのままVRコンテンツ立ち上げるという合理的な操作になっています。
※Oculusソフトウェア対応のVRコンテンツのみ完全対応。登録されても完全対応していないものはディスプレイ側で一時的に操作が必要なものもある。
操作についてはOculus Touch以前では専用リモコンとXboxOneコントローラーが付属していたこともあってか、手持ちのXbox360無線コントローラーにも対応していました。
当たり前ですが、Oculusソフトウェアや対応しているVRコンテンツでコントローラーとしても使えますし、Oculusソフトウェアでバッテリーステータス表示が出る以外にバッテリーが減ってくるとバッテリーの残量警告表示が出てきます。
Oculus Touch発売以前のコンテンツでは、XboxOneコントロ-ラーが標準のコントローラーとして扱われていたため、コンテンツによってはXboxOne(もしくはXbox360)コントローラーが必要となるものもあります。
Elite:Dangerous(英語ページ)やMocuMocuDance等有名なPCVRコンテンツでも大活躍してくれますので、追加で用意しておくと良いでしょう。
■コントローラーらしさがあるOculus Touch
コントローラーに必要な要素といえば、個人的には操作していると感じるカッチリ感のようなものが必要だと思っています。
※カッチリ感(ボタンやレバーの反応がハッキリと操作したと感じさせてくれるフィードバック)
その点で評価した際にOculus Touchの操作感はまさにコントローラーを操作しているという感じがあり、使っていてしっくりと来るものがあります。
欧米人と比べて小柄な日本人の手にもしっくりと収まる形状は良好なフィット感を生み出し、ボタンやレバーの操作感と合わさって気持ちよく操作ができます。
また、限定的ながら指の動きをトラッキングするセンサーが付いており、握る、人差し指を指す、親指を立てる、人差し指と親指を立てて指鉄砲の形にすることができます。
※ここでは反映されていないが、親指はボタンかスティックどちらに親指があるか位置を把握することができる。
※ここでは反映されていないが、親指はボタンかスティックどちらに親指があるか位置を把握することができる。
ただし、指の状態をトラッキングしているとはいえ、開いている状態か閉じている状態かを検出するのみなので、リープモーションのように現実の手指の動きを完全にトラッキングしているわけではありません。
この指の動きについては現実感が乏しく、直感的な操作とは少しかけ離れていると感じる動きです。
しかし、Oculus Touch の総合的な評価は高く、Oculus Touch を使ったあとにHTC Viveのコントローラーを使用するとも、その大きさと操作性にもどかしさを感じてしまいます。
■フレーム補間技術ASWは予想以上
PCVRコンテンツはPCの負荷が大きくフレームレートの低下を感じることがありますが、HTC ViveとOculus Rift双方にはフレーム補間技術が組み込まれており、高負荷時のフレームレート低下を抑制しています。
フレーム補間はOculus Riftに組み込まれているASWが優秀で、同じVRコンテンツの同じシーンで比較した場合、HTC Viveが45fpsを維持するのに対し、Oculus Riftは映像出力側が45fpsでもデバイス側で90fps相当のフレームレートを維持することができます。
※他にもATWと言うフレーム補間技術が実装されている
このASWについては、リアルタイムで未来のフレームを補間する必要があるため限界が有り、ASWが効いている時は画面の一部に蜃気楼が掛かったかのように歪むという映像の破綻が時折見られますし、映像出力側(VRアプリ)で45fps以下のフレームレートに落ち込むような強烈な負荷だと補間が増加する分破綻が酷くなります。
※ドライバー側で補正されるため、VRアプリがディスプレイに表示する映像にはASWが反映されたものは出力されない。特殊な条件下だとドライバーを通した後の映像がディスプレイ側に一時的に反映されることがある(上記のスクリーンショットはその状態)。
※ドライバー側で補正されるため、VRアプリがディスプレイに表示する映像にはASWが反映されたものは出力されない。特殊な条件下だとドライバーを通した後の映像がディスプレイ側に一時的に反映されることがある(上記のスクリーンショットはその状態)。
直線的な表示(HUDやメニュー等)が画面にある場合は破綻が分かりやすいですが、それ以外の場合はコンテンツに集中していればそれほど気になりません。
なにより、フレームレートの低下と比べればASWのフレーム補間は不快感が低く、フレームレートの低下によるVR酔いをかなり軽減してくれます。これはHTC Viveにも実装してもらいたいと思うほどの機能です。
このASWについてはWindows10環境のみで機能するため、Windows7環境で使用していた私の環境では効果が発揮できなかったのですが、この際と覚悟を決め込んでWindows10へと移行してみることにしました。
Windows10移行後、Windows7環境ではフレームレートが落ちでカクツキを感じるシーンをWindows10環境でも再現して確認してみたのですが、フレームの落ち込みは感じられず、比較するまでもないほど劇的に変わったのが分かりました。
ASWの実装により、Oculus Riftの動作スペックが若干下げられたのですが、確かにPCVR用に使うPCとしてはスペックがそれほど高くない構成(Core i7 2600K@4.25GHz GTX1060 6BG)でも滑らかなフレームレートを維持するのは驚愕です。
■追加のセンサーが欲しくなるバンドルコンテンツ
Oculus RiftはバンドルコンテンツとしてOculus Medium・Toybox・Quill ・Dead and Buried ・Lucky's Tale・Robo Recallが付いていきます。
バンドルコンテンツはOculusソフトウェアのライブラリーからダウンロードすることでプレイすることが可能となります。
特に面白いと感じたのがLucky's TaleとRobo Recallです。
Lucky's Taleはまるでマリオ64(プレイアブルキャラはSEGA風だが・・・)をVRでプレイするというアクションゲームで、FPS視点ではないため人によってはとても酔いやすいコンテンツのようです。
Robo RecallはOculus Touchのバンドルとなっているため無料でプレイできましたが、このゲームは360度全てから敵が襲ってくるのでセンサー2個でもプレイできるものの、ルームスケールでプレイしたいという欲が出てきます。
もちろん、そのためには追加のセンサーが1個必要となりますが、このゲームの完成度はPCVRシューター最高峰と言っても過言ではない完成度のため購入欲をそそられます。
VRコンテンツをハードウェアのセールにすら繋げようとする練り込み具合には感心してしまいます(後日センサーを追加で購入したのは言うまでもない)。
センサー2つでは立つか座るかの限定的な姿勢のみでVRコンテンツをプレイすることになりますが、それでもダンスビューワーのMocuMocuDanceやコクピット視点のElite:DangerusといったVRコンテンツはセンサー2つで十分に楽しむことができます。
PCVRが初めてのユーザーは、セットされているセンサー2つでVRコンテンツをプレイして、物足りなくなったら追加でセンサーを購入すると良いでしょう。
HTC Viveでルームスケール対応のVRコンテンツを既に利用している場合や、紳士向けのVRゲームコンテンツを楽しむ場合はプレイエリアの縛りが足枷になるため、センサーは必須となります。
■HTC Viveとの共存は可能か?
HTC Viveを持っていながらOculus Riftの購入を考えているユーザーの中には、HTC Viveとの共存は可能かという疑問を持っているユーザーもいると思います。
結論から言うと共存は不可能です。
両方を接続した状態だと、SteamVR起動時にコンポジターが利用できずにエラーになります。このため、SteamのVRコンテンツは使用できません。
ただし、双方接続した状態でも、Oculus Riftのみ対応のコンテンツ(Oculusランタイムを使用するもの)は正常に使えるようになっています。
現実的な運用では排他的と言っても良いので、双方にあるUSBケーブル(Oculus RiftはHMDのUSBのみ切り替え)とHDMIを切り替える必要があります。
■独自コンテンツはハイクオリティのものも
Oculusでは独自のVRコンテンツを販売しているのですが、Oculus専売のコンテンツもいくつかあります。
前述のRobo Recallもその一つですが、UnrealシリーズやGears of Warを手がけている大手ゲームメーカーが製作しているだけありクオリティはAAAクラスタイトルで、ゲームボリュームがもっとあればVRコンテンツにおける完全なAAAクラスタイトルといえる完成度になっています。
このような完成度の高いVRコンテンツを制作するゲームメーカーと手を組み、Oculus専売でVRコンテンツを提供しています。
もちろん、SteamVRにも対応しているためSteamのVRコンテンツも楽しめます。
SteamのVRコンテンツはHTC VIVEだけでなく、Oculus Riftにも対応しているVRコンテンツを多数供給しており、SteamVRを介してコンテンツをプレイすることが可能です。
※ルームスケールコンテンツのプレイは要センサー追加
※HTC Viveのみ対応のコンテンツはOculus Riftでプレイできる場合もあるが、操作などプレイに支障をきたす場合がある
※HTC Viveのみ対応のコンテンツはOculus Riftでプレイできる場合もあるが、操作などプレイに支障をきたす場合がある
■まとめ
全3回に及ぶOculus Riftのレビューとなりましたが、結局どちらのPCVRを買えば満足するのかという点については、個々の性能を自身が必要としているかどうかで判断するしかないという状態です。
大雑把ですが、ルームスケール範囲重視ならHTC Viveで、画質や映像重視ならOculus Riftではないかと個人的には考えています。
また、PCVRにMicrosoft勢力が進出してきており、一般ユーザー向けのWindows MRゴーグル(実質VR)が約6万円(Acer製コントローラー付モデル)で販売され始めました。性能やコンテンツ次第ではPCVRの選択肢が3つなる可能性もありそうです。
Windows MRゴーグルはSteamVRにも正式対応するとの情報も出ているので、こちらの動向にも注目していく予定です。
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