サマーセールということで、専用コントローラーのTouchとセットで5万円というPCVRとしては破格の販売価格でセールをしたOculus Riftですが、HTC Viveを持っているにもかかわらず思わず購入してしまいました。
購入後、セールで一気に発注が入ったためか、およそ1ヶ月待たされたのですがOculus Riftが無事に手元に来たので、HTC Viveユーザーとして比較しつつレビューをしていきます。
■価格競争に突入したPCVR!Oculus Riftは今、買いか?
今回Oculus Riftはサマーセールを経て63,800円(税別・送料別)へと改訂され、より入手しやすくなったのですが、この機会に購入を検討しようとしているユーザーもいると思います。
しかし、ただ安くなっただけで買いかどうか?と言われると微妙な時期で判断が付きにくい状態ではあります。
競合機種のHTC Viveもケーブルを細くし、HMDの軽量化を経て77,800円(税別・送料込)へと改訂されており、ここに来て大幅な価格競争が始まっています。
※2017年09月30日現在の価格
HTC Viveに限っては一時10万円を超えていたこともありましたが、このようにPCVRが価格を下げてくるのは、Windows MRの参入を見据えてのことだと思われます。
HMDだけなら399ドル(DELLは350ドルとも)というPCVRとしては格安な製品が市場に出てくるため、先に攻勢を仕掛けておきたかったのだと予想されますが、今のところ開発機が市場に僅かに出ているだけで、ハードウェアの性能や最も大切なコンテンツ自体が未知数のため、Oculus Rift やHTC Viveと並べて単純に比較することはできません。
しかし、数多くのゲームが楽しめるSteamVR対応の噂やミドルスペック程度のPCでも対応するといった話も聞こえており、ユーザーにとってはPCVRへの敷居が下がる可能性は十分にあると思われます。
MicrosoftというビックプレイヤーがAcer・Dell・Lenovo・HP・ASUSといった大手企業をパートナーとして引き連れて参入することを考えると、今後のPCVRは価格競争による低価格化と多様化によりPCVRを欲しているユーザーにとっては大きなメリットになるでしょう。
今すぐPCVRが楽しみたいというユーザーにとっては、現状、Oculus Rift 若しくはHTC Viveしかまともにコンテンツが楽しめるハードがないため、二者択一となっています。
結論から言えば、得手不得手が両者にあるため、どちらが総じて優れているとは言い難い状況となっており、価格だけにとらわれず、自身が求める要素をより多く持っている方を選択したほうが満足できるハードとなるでしょう。
今回はOculus Riftのレビューとなりますが、HTC Viveも気になるという人はこちらにレビュー記事がありますので、あわせて読んでもらえると答えが出てくるかも知れません。
■Oculus Rift開封
最初に届いたとき思ったほど梱包サイズが大きくないのに少し驚かされましたが、専用コントローラーのTouchとセットになったものの、今まで付属していたXbox Oneコントローラーと専用リモコンは付属しなくなりました(サマーセール当初は付属したものが届いた人もいる模様)。
とはいえ、HTC Viveの梱包サイズは一回り以上大きかったので、随分とコンパクトだなと感じたのですが、中を開けてみて分かりました。
ハードのサイズ自体がHTC Viveよりも小柄にできており、HTC Viveのように未来的ハードウェアといった仰々しさがありません。どちらかというと、おしゃれガジェットという雰囲気に近いものがあります。
・内容物一覧
HMD本体
センサー×2
Touchコントローラー
マニュアル・セットアップガイド
ステッカー×2
クリーニングクロス
単3電池×2
ヘッドフォンユニット脱着用治具
■HMD
HMDはシンプルなデザインとなっており、センサーやトラッキング光源などを想像させるようなものは見えません。
一部はファブリック素材で覆われていますが、このHMDにはいたるところにトラッキングに使用する赤外線LEDが埋め込まれており、その光源を専用のセンサーが捉えることでトラッキングしています。
可視領域の赤外線ではないため、発光していても肉眼では見ることはできませんが、後頭部部分になる後方の三角形バンド部分に至るまで赤外線LEDが埋め込まれているため、ゴーグルはセンサーに対して真後ろを向いても正常にトラッキングします。
ヘッドバンドはマジックテープによる伸縮対応型で、頭頂部のバンドは帯バンドのような構造になっています。
両サイドはバンドで調整するものの、頭部に当たる部分のバンドは柔らかめの樹脂が支えているため、しっかりと保持してズレにくいというメリットがあります。
また、2~3cm程度伸縮するうえ長さの調整幅もあるため、フィット感はノーマル状態のままでも非常に良好です。
ヘッドフォンは調整式で、HMDを横にした状態から見て上下に移動します。
また、付け根を支点に前後に弧を描くように移動することで最適な位置にヘッドフォンを留めることができます。
脱着時は、HMDを後ろから見てハの字に跳ね上げることができ、HMDの脱着時にヘッドフォンが邪魔にならないようになっています。
HTC Viveのオーディオストラップと構造としてはよく似ていますが、ヘッドフォンの状態を保持する力はOculus Riftが強く、プレイ中に頭を振ってもヘッドフォンの位置が変わることはありません。
なお、音質については必要十分で、重低音が強調され過ぎているようにも感じますが、不満であれば取り外し、好みのヘッドフォンやイヤフォンを使うことが可能です。
ただし、音声出力がHTC ViveのようにHMD側に用意されていないため、PC側の出力から長いケーブルを介してHMDまで持ってくる必要があります。
フェイスクッションについては、スマホVRゴーグルやHTC Viveで使われているマジックテープタイプではなく、上下のソケットをはめ込むタイプのため、スマホVRゴーグルのフェイスクッションを流用するといったことができません。
ルームスケールのVRゲームは汗をかきやすいものが多く、フェイスクッションの汚れが気になるところですが、社外品のカバーを取付けるか、消耗品と割り切って使うしかありません。
また、Oculus Riftは体格の良い海外のユーザー向けに設計されているため、フェイスクッションがしっかりフィットせず、鼻の部分から外界が見えてしまうため没入間が落ちるという要素があります。
ただ、没入感的にはデメリットですが、HTC Viveのように外部を確認できるカメラが搭載されていないため、この隙間から外界を確認するといった使い方もできますし、HMD内部の換気もある程度できないこともありません。
隙間が気になるなら、ゴーグル部分の角度を下向けにすると隙間は殆ど気にならなくなります。
残念ながら、フェイスクッションとレンズ間の調整する機能は付いておらず、奥行きが少ないうえに、フェイスクッションの形状もあってメガネを装着したままHMDを被るのは難しくなっています。
ツルの部分がフェイスクッションに干渉するため、フェイスクッションを加工してツルの部分をテープなどで絞るなど方法はあるようですが、それでも毎回メガネのフィッティングを調整しないといけないので、お互いのレンズに傷が入る可能性もあり、リーフツアラーや社外品のレンズを装着する方が簡単で楽です。
レンズはHTC Viveと同じくフレネルレンズを採用しているため、独特の縞模様が見えます。
フレネルレンズは薄いため、軽量化のためには最適なのでしょうが、HTC Viveでは投影された映像が屈折し、映像の一部がレンズの縞模様のように表示されることがありましたがOculus Riftはレンズの縞模様は出てきませんでした。
ただし、光が乱反射してコントラストの低下を引き起こす減少が出るため、一長一短といったところです。
どちらでも感じることがあると言われている液晶パネルの編み目感については、ペンタイル式のため編み目感は有りますが、HTC Viveよりも控えめで、液晶パネルの光度が低いことも手伝ってかあまり目立ちません。
※原寸サイズの写真はこちら
※原寸サイズの写真はこちら
また、光度が低いと言うことは目への負担が軽く、長時間のプレイはHMDのフィッティングの良さを含め、HTC ViveよりもOculus Riftの方が使いやすいと感じます。
視野角については仕様上HTC Viveと同じ110度ですが、HTC Viveが楕円形の映像として視認できるのに対して、Oculus Riftは両サイドが角張った映像に見えます。
見える映像の形状により、HTC Viveが僅かに視野角が広いように感じますが、殆ど差は無いようなもので、視野角についてはもっと欲しいと感じてしまいます。
これについては、スマホVRからPCVR全てにおいて共通する課題ですので、今後の改良を期待したいところです。
ケーブルはHDMIとUSBが一体化した特殊なケーブルとなっています。長さは約4m(コネクタ端から端までの長さ)となっているため、ルームスケールで使用する場合ケーブルが短く物足りなくなります。
1mのHDMIとUSB3.0(もしくは2.0)で延長してやれば大幅に改善されますが、HMDIは合計で5mを超えると信号が正常に伝わらず映像が映らないと言う情報があったので、ケーブルの総延長には要注意です。
気になるHMDの重量については実測してみたのですが、結果は476gとなりました。
なお、HTC Viveもマイナーアップデートによりゴーグル単体で550gから468gまで軽量化しているので、サイズやフィッティングは別として、重量についてはマイナーアップデート後のHTC Viveと良い勝負です。
なお、HTC Viveもマイナーアップデートによりゴーグル単体で550gから468gまで軽量化しているので、サイズやフィッティングは別として、重量についてはマイナーアップデート後のHTC Viveと良い勝負です。
しかし、こうしてOculus RiftのHMDを被ってみると、HTC Viveがフィット感を向上させるためにオーディオストラップを開発した理由が分かるような気がします。
フィット感で言えば、オーディオストラップを付けたHTC Viveと良い勝負といったところで、ノーマルの状態での比較であればOculus Riftが優秀と言えます。
なお、Oculus RiftのHMDは電子機器特有の臭いが気になり、使い始めの頃は臭いに酔ってしまうことがありましたので、あの臭いが嫌いな人は開封して暫く放置しておくと良いでしょう。
■専用コントローラーOculus Touch
サマーセールから標準でセットになったのが専用コントローラーOculus Touchです。
Oculus Touchは左右が非対称のデザインで、右手と左手用が分かれているため、HTC Viveのように左右兼用ではありません。
操作部分はスティック(プッシュ有)、ボタン2つ、メニュー用ボタンが上部に・・・
グリップ部分の中間にトリガーが1つ・・・
前面にもう1つトリガーが用意されています。また、センサーが上面と人差し指部分にあり、指の開閉を別々に認識するようになっています。
親指と人差し指はセンサーによる認識になるのですが、それ以外はトリガーのスイッチによる一括動作となり、リープモーションのように指の形状を認識してトラッキングしているわけではなく、開いた状態か閉じた状態か2形状だけの動作のため、現実を反映したような操作感はそれほどありません。
しかし、137gという軽い重量(電池含めず)とコントローラーの握りやすさ、そして、コンテンツ中の操作性は非常に良好で、いかにもコントローラーを操作していますという感覚があり、使っていてしっくりときます。
Oculus TouchはVRにおけるコントローラーの最適解は何か?という難しい問題に対する答えを探し、あえてコントローラーのみ後日発売にしてまで開発し続けたコントローラーだけあって完成度は非常に高く、タッチパッドの仕様に不満を感じるHTC Viveのコントローラーよりも使っていて気持ちが良い操作ができると感じます。
なお、Oculus Touchは電池駆動で単三電池1本が必要になります。バッテリーが切れても交換すれば良いだけなので、いざ使おうというときにバッテリー切れになっても直ぐに使えるようになります。
ただし、乾電池だと購入の手間やごみ処理の問題も付きまとうため、充電電池で運用がお勧めです。
■小型でおしゃれ Oculus Sensor
PCVRは多くのハードが外部センサー必須となっていますが、Oculus Rift も例外では無くOculus Sensorという外部センサーが付いてきます。
セットで同梱されているのは2個のみとなり、このままではルームスケールでプレイすることができません。
HMDは後方を向いてもHMDの後部にある光源により正常にトラッキングされますが、Oculus Touchは人陰に隠れただけでトラッキングを失い、正常な動作は期待できなくなります。
ルームスケールに対応させるにはOculus Sensorを1台追加で買う必要があり、標準でルームスケールに対応しているHTC Viveと価格比較する場合は、センサー込みでの値段で考える必要があるでしょう。
Oculus Sensorは税抜7,800円+送料となっており、本体(税抜63,800円+送料)とセットで71,600円+送料で、HTC Viveは送料込みで税抜77,880円です。
※2017年9月30日現在
ルームスケール前提ならば殆ど価格的な優位差は無いといえますが、トラッキングできるエリアはHTC Viveが若干広くなっています。
Oculus Sensorに話は戻りますが、このOculus SensorはUSB3.0でPCと接続する仕様ですが、このUSB3.0が結構曲者です。
Oculus Rift のトラブルとして有名なのがUSB3.0コントローラーとの相性で、初期のチップセットに内蔵されていないUSB3.0コントローラー(ASMedia・VIA・NEC(ルネサス))では特に相性問題が出やすい傾向にあるようで、ポートの数も少ないうえ、HUBを介して接続するのも相性問題が出やすいので困りものです。
最近のMBでは、チップセットがUSB3.0 or 3.1コントローラーを内包しているため相性問題は出にくくなっているようですが、古いPCで使おうとするとこの問題に当たる可能性があります。
対策としては、最新ドライバーの適用やOSをWindows10へ更新、PCの買換えや組み直し、又はOculusが推奨するUSB3.0IFを増設する方法があります。
私が使用しているPCでは、最新ドライバーの適用で相性問題は何とか回避できたものの、プレイに支障が出たのでUSB3.0IFを増設する方法で安定化させています。
これについては、別途記事にして公開する予定です。
Oculus Sensorの設置自体はそのままPCデスクの両端に設置すれば完了するため、HTC Viveと比べるとセンサーの設置は非常に簡単です。
また、このマウントはねじるとセンサー部分が外れるようになっており、ネジ部分はカメラ三脚に使うネジ穴(1/4インチねじ)のため、撮影用の三脚やポールマウント・クリップマウント等が流用できるようになっています。
設置が簡単で機能性もあるセンサーですが、HMDと合わせるとUSBのコネクタを3個も埋めてしまうためUSBポートに余裕があるPCが必要になり、HMDIケーブルと併せると4本(ルームスケール対応させる場合はさらにもう1本)ものケーブルがPCから伸びるため、配線はどうしてもゴチャゴチャしてしまいます。
HTC Viveはベースステーションの初期設置が面倒で、センサーごとに電源を確保する必要があるため、この点についてはどちらも改善の余地有りと感じます。
■ハードウェア編まとめ初期型のHTC Viveを持っているため、小柄でOculus Riftを最初に手にしたときは若干華奢なイメージを受けましたが、実際にHMDを被ってみるとフィッティングは良好で、VRコンテンツをプレイしている際に頭部や顔にかかるストレスはノーマルの状態でも良好といえるものでした。
その一方で、レンズと顔の空間が調整できないため、眼鏡ユーザーには辛い仕様となっており、リーフツアラーの流用によりプレイに支障は無くなりましたが、物足りないと感じる部分があるのも確かです。
しかし、Oculus Touchの使いやすさ等、全体的な完成度の高さは素晴らしいもので、HTC Viveよりも優れている点もあるため、ハードウェアの性能では優劣付けがたいという結果に感じます。
次回はOculus Riftレビュー セットアップ編となります。
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