Oculus Riftに始まったVRブームですが、少し遅れながらもVRブームに乗ってみようとハコスコの段ボールVRゴーグルに始まり、PCのVR環境を整えるためGTX1060の導入を経てHTCのVIVEを使えるまでになりました。
何故、Oculus RiftではなくHTC VIVEを選んだのかは前回の記事を振り返ってもらうとして、今回はHTC VIVEの商品構成からセットアップまでをレビューしていきたいと思います。
なお、「VRって何?」という人はこちらに詳しく書いてありますので興味がある方はどうぞ。
覚悟はしていましたがパッケージは大きめです。ノートPCのパッケージサイズを厚さに倍にした感じのサイズがあります。
中を開けるとセットアップガイドが出てきますが、基本的には必須となるVIVEアプリがセットアップ手順について動画を交えつつ詳しく説明してくれるため、このセットアップガイドに書いてある内容は簡易的なものになっています。
HTC VIVEはパーツ点数が多いため、必要なパーツが揃っているかセットアップガイドに照らし合わせてチェックすることが初めの作業になります。
セットアップガイドを取り除くと一部のパーツが見えてきました。右側がゴーグル、左上側はベースステーション×2、左下がコントローラー×2です。
・VIVEのVRゴーグル
※絶対位置検出とは外部のセンサーから位置を特定して位置を確定する精度重視の方法。PC用VRゴーグルや業務用モーションセンサーはこの方式。対義語は相対位置。相対位置は今いる場所からどう動いたかをセンサーで特定して位置を特定する。絶対位置検出はセンサーを別途用意するためコストが高いがその分位置精度は高い。相対位置検出は動くほど位置情報にズレが生じるなどの問題があるが、センサーを内包できるのでコンパクトかつ安価。スマホのVRは相対位置方法を使っている。
事前に情報は手に入れていましたが、やはりケーブルの本数は多く径が太いのが気になります。
このケーブルは5mもあるため、プレイ中は常にケーブルを引きずりながらプレイすることになります。
また、ゴーグル本体だけでも少し重量があるように感じましたが、ケーブル部分を机の上に置いた状態で計測した際の重量は602gとそれなりに重量があることが分かりました。
ゴーグルのヘッドバンドによる支持の良さと没入感が凄いため、ゴーグルを被って熱中しているとそれほど気になりませんが、意識すると重たいと感じることはあります。
ゴーグルを正面から見て右側には設定ボタンが用意されています。このボタンを操作することで、ゴーグルを被りながら外部が確認できるカメラを起動したり、設定画面を表示することができます。
反対側にはIPD(瞳孔間距離)の調整ダイヤルがあり、計測したIPDをここで設定します。
IPDとは瞳孔の中心から反対側の目の瞳孔の中心までの距離です。人ごとに数値が違うため、付属の説明書の目盛りを使い鏡で事前に数値を確認しておきます。
このIPDは誤って広すぎる数値にすると、物体が大きく見え、逆は小さく見える状態になるのですが、わざと変化させてみても気になるほどの差はないため、大ざっぱに何mm程度という感覚で計測しても問題はありません。
フロントには外部を確認するためのカメラがついています。Oculus Riftにはゴーグルにカメラがついていないため外部の様子を確認することができませんが、HTC VIVEは常時、及び必要な際に外部の状態を確認できます。
これがゴーグルのレンズ部分です。一眼レフ用レンズのような分厚いレンズが目立ちます。このレンズを通して映像が表示されます。
顔にフィットする箇所にはクッションが用意されており、必要に応じて取り外すことが可能です。
初期状態ではWideタイプのクッションがゴーグルに装備されていますが、付属品にNarrowタイプも同梱されており、両方試してみたところ、ピントが合いやすく没入感も良かったと感じるのはNarrowタイプで、現在もNarrowクッションを使っています。
なお、VITEはメガネを装着しても問題無くプレイできるように設計されており、両サイドのダイヤルを回すことでゴーグルと目の間の隙間を調整することでメガネ分のスペースを確保できます。
大きなフレームのメガネは入りませんが細めのフレームであれば支障はありません。
なお、VIVEのVRゴーグルはHDMI端子から映像を入力しますが、PCやAV機器のHDMIポートに差し込みHMDの代わりに使用する用途には使えません。
※PCにVIVEのリンクボックスを経由して接続している時のみ、SteamVRの設定からダイレクトモードをOFFにするとPCに通常のモニターとして認識される。ただし、グラフィックボードが平面ディスプレイ用の映像を表示するためまともに見られたものではない。
また、HMDの代わりに使うには適していない表示方式のため、HMD用途としての購入を考えているのであればVRゴーグルではなくHMDをお勧めします。
・Steam VRコントローラー
HTC VIVEでは専用コントローラー「Steam VRコントローラー」が2個付属しています。
これらも独特の凸凹形状を持っており、赤外線センサーにより絶対位置を把握するようになっています。
ボタンは表側に、上からメニュー、トラックパッド付きボタン、電源となっています。トラックパッドボタンは指でなぞる、タッチする、押し込むという操作が可能です。
背面にはトリガー。両サイドにもボタンが用意してあります。両サイドのボタンについては片方だけを押すのは難しいため、グリップ部分握る動作に対応するボタンという扱いになっています。
操作については特にグリップ部分が太いわけでもなく、手に馴染むように作られており、ゴーグルをかけた状態でも違和感なく扱えます。
このコントローラーは無線タイプで、充電はグリップ底部にあるマイクロUSBコネクタより給電します。
USB電源アダプターとマイクロUSBケーブルが付属していますが、コンセント周りが埋まってしまうので、複数USBソケットの有るUSB電源アダプターから給電しています。
コントローラーの重量は最適化されており、重量は約200gとプレイ中は気になるほどの重さには感じません。
・ベースステーション
この箱がベースステーションです。
正面は光沢のあるパネルになっていますが、電源が入ると正面から赤外線が照射され、赤外線を受光したVRゴーグルとコントローラーがトラッキングされるシステムになっています。
背面、及び下部にはカメラの三脚などに使う1/4-20UNCネジの穴が用意されています。
コレはベースステーションの設置用に使うもので、付属の壁取付け用キット意外にも、別途三脚等を用意することで、壁に取付けずに固定することが可能です。
他にもベースステーションの取付けに流用できそうな物として、ポールに取付けるアタッチメントや大きなクリップに取付けるタイプなど、カメラ関係のアイテムを流用することができます。
特に、ウェアラブルカメラ関係のパーツは取付けアタッチメントが豊富なので、取り付けの際に流用できそうなものが多いです。
このベースステーションには、左から電源ソケット、チャンネルボタン、同期ケーブルソケット、マイクロUSB端子が備わっていますが、使用時は電源ソケット以外使用することはありません。
マイクロUSB端子はファームウェアの更新時に、同期ケーブルソケットとチャンネルボタンはベースステーション同士の同期に失敗する場合に利用することになります。
なお、国によって商品構成が若干違うようですが、日本向けのパッケージには同期ケーブルが同梱されています。
ベースステーションは赤外線を走査するためのモーターが2個内蔵されているようで、重量は314gと見た目の割に重量があります。
これを、高さ2m以上の位置に対角線上に位置するように設置する必要があります。
付属品にはベースステーション用の壁取付けキットが付属していますが、ねじ穴を開けるのに抵抗がある場合は、あらかじめベースステーションを固定する方法を用意しておく必要があります。
また、壁取付けキットは長いネジを使うため、壁内部の電気配線を避けて取付ける必要があります。
壁の内部で電源コードがショートすると最悪火災に繋がるので、安全のため取付け時に「壁うらセンサー」を使う事をお勧めします。
高さ2.5mの位置に取付けてみました。なんだか、小売店にある来客を知らせる人感センサーのように見えます。
これに付属のアダプターで電源を供給すると、走査のためのモーターが動作してキーンという甲高い音がして赤外線LEDが光り始めます。なお、電源スイッチはないため、初期設定のままだと常にこの音が鳴り続けます。
さすがに鬱陶しいので、設定を変更して使用していないときはスタンバイ状態に移行させるように設定しています。
※ベースステーションのスタンバイ設定は後述
正常にベースステーションが稼働すると赤外線を照射し始め、両方のベースステーションの同期ランプが緑に光ります。
このベースステーションは稼働中常に赤外線を照射するため、鏡、ガラス、金属など光沢のあるものは赤外線を反射してトラッキングを妨害してしまうことがあります。
室内に光沢のあるものはなるべく置かないようにするか、使用時はカーテンを閉める、シートやカバーを被せるなどの対応が必要になる場合があります。
また、赤外線を使用するリモコンはベースステーションの発する赤外線に妨害されることもあるため、リモコンによっては正常に使えなくなることがあります。
赤外線タイプのリモコンを同時に使用する場合は、ベースステーションを起動後に妨害されないか確認しておいた方が良いでしょう。
※ルンバ等の掃除機もこの赤外線により進入不可領域と誤認してベッドや机の下に隠れてしまう
・リンクボックス
小箱の中を開けるとマニュアル類と共にリンクボックスが入っていました。
内容はリンクボックス、リンクボックス用電源アダプター、USBケーブル、HDMIケーブル、シリコンシート(リンクボックス固定用)、レンズクリーニングクロス、カナル型イヤフォン、保証書、安全規制ガイドです。
リンクボックスはVRゴーグル側の出力として左からHDMI、USB、電源ソケット。
PC接続側に左から電源ソケット、USBソケット(入力側)、miniDisplayPort入力、HDMI入力となっています。
このリンクボックスはリモコンやベースステーションとの無線通信も行なっているようで、各通信機能以外にもBluetooth機能を搭載してスマートフォン等と接続することでVRゴーグルを装着した状態でも着信を通知してくれる機能も持っています。
付属のUSBケーブルはAタイプ-AタイプというUSB3.0規格にあるものですが、USB3.0ホストコントローラーとの相性が発生しないようにUSB2.0ポートでの使用が推奨されています。
リンクボックス本体側もUSBポートのソケットはUSB3.0である青色ソケットですが、問題が無い限りUSB2.0ポートを使います。
※VIVEはVRゴーグルのカメラを使用するとUSB2.0の帯域を圧迫するので、USB2.0の帯域が不足した場合はUSB2.0を使用している周辺機器をUSB3.0に接続するか、USBのI/Fボードを増設してそこに接続する必要がある。
※VIVEはVRゴーグルのカメラを使用するとUSB2.0の帯域を圧迫するので、USB2.0の帯域が不足した場合はUSB2.0を使用している周辺機器をUSB3.0に接続するか、USBのI/Fボードを増設してそこに接続する必要がある。
リンクボックス用電源アダプターはベースステーションによく似た電源アダプターなのですが、仕様は違います。ソケットの形状が違うため差し間違えることはありません。
付属のイヤフォンはカナルタイプで、交換用のイヤフォンチップが添付されています。
付属のイヤフォンはカナルタイプで、交換用のイヤフォンチップが添付されています。
ゴーグルの近くから伸びているケーブルに差し込むため、イヤフォンのケーブルは短め。かつ、フラットケーブルを採用して絡まりにくくしています。
見た目が安っぽく見えますが、音質はとても良く交換する必要性を感じさせないレベルです。
・セットアップ
セットアップはセットアップガイドに記載されたURLに飛び、Vive Setupをダウンロードしてインストールすることから始めます。
このセットアップにはベースステーションの設置から、VIVEの初期セットアップまでを丁寧に画像付き(一部説明動画もあり)で説明してくれるため、これらの指示どおりにセットアップするだけで初期セットアップが完了します。
VIVEはPCの前で立位、いすに着席したままのプレイも可能ですが、ルームスケールに対応したコンテンツをプレイするためには、最低でも2m×1.5mの空間が必要になります。
これ以下のスペースだと初期設定ができないため、ルームスケールの場合はこの空間を確保することが必須条件です。
※トラッキングはセンサーの照射範囲内なら設定エリア外でも可能なため、部屋の一部をプレイエリアにしても、ベッドやイスの上でもセンサーの範囲内ならトラッキングする。
次にベースステーションを高さ2m以上の箇所に対角線上になるように取付けます。
私は壁裏に電気配線がないところを確認して、そのまま付属の木ねじを使い付属のマウントを固定して取付けました。
三脚など簡単に設置できる方法もありますが、一度設置した箇所から少しでも動くと、再度検出のための初期セットアップをする必要があります。
プレイ中はコントローラーをぶつけることも多々あるため、なるべくなら壁への設置が望ましいです。
ベースステーションの取り付けが終わったら、電源アダプターを差し込み電源を供給します。暫くするとキーンという音と共にLEDが光り始め、ベースステーションのステータスランプが各々bとcを表示し、上部中央のリンクLEDが緑色になれば正常に設置ができています。
同期がうまくいかない場合は、ベースステーションの角度を調整するか、赤外線を反射する物(鏡、ガラス、金属板等)や赤外線を発する物(赤外線センサー等)が部屋の中にないか確認し、あれば除外します。
それでも同期ができない場合は、付属の同期ケーブルでベースステーションを接続し、有線同期モードに切り替えて使用します。
ベースステーションが正常に設置できたらリンクボックスに各ケーブルを接続します。
PC側の接続は、トラブルを避けるため映像入力はHDMI接続(変換アダプタや変換ケーブル経由は非推奨)が望ましく、USBも可能であればUSB2.0ポートと接続します。
PC側の接続は、トラブルを避けるため映像入力はHDMI接続(変換アダプタや変換ケーブル経由は非推奨)が望ましく、USBも可能であればUSB2.0ポートと接続します。
リンクボックスの黄色いソケットはVRゴーグル側の出力なのでVRゴーグルのケーブルと接続します。
リンクボックスをPCと接続した段階で自動的にドライバーがインストールされますが、この際、PCにDisplayLink ドライバーがインストールされた状態だとドライバーが競合を起こしてブルースクリーンを表示して再起動がかかります。
USB接続タイプのHDMI、DVI、D-subアダプターを使用している場合は、DisplayLink ドライバーが入っている可能性が高いので、あらかじめアンインストールしてからセットアップを開始しましょう。
※専用のドライバー削除ツール(英語ページ)も提供されている
もしも、ブルースクリーンになり再起動した場合は、一度DisplayLink ドライバーとVive Setupをアンインストールしたうえで、再度Vive Setupをインストールしてセットアップを開始します。
※DisplayLink ドライバーを使用するタイプのアダプターだとVIVEと共存できないため、グラフィックボードの出力ポートを使用する
正常にリンクボックスがPCに認識されたらリモコンの電源を入れてVIVEのセットアップは終了となります。
VIVEが使える状態になったので、VIVEセットアップからSteamVRにセットアップガイドに切り替わります。
VIVEが使える状態になったので、VIVEセットアップからSteamVRにセットアップガイドに切り替わります。
SteamVRのセットアップガイドでは、ルームセットアップを実行します。
ルームセットアップは部屋のプレイエリア設定と床の高さ検出して、シャペロン境界を決めます。
シャペロン境界とはプレイエリアとそうではないエリアの境目で、VRゴーグルを被りプレイ中にシャペロン境界に近づくと映像内にシャペロン境界の枠を表示して警告をしてくれます。
この設定が終了するとVRゴーグルを被るように指示が出て、今度はVRゴーグル内でチュートリアルを受けることになります。
チュートリアルではシャペロン境界の説明やコントローラーの説明があり、このチュートリアルが終了すれば晴れてセットアップが完了します。
説明ではセットアップに必要な時間は30分と説明されていましたが、DisplayLink ドライバーのトラブルで1時間以上もかかってしまいました。
とはいえ、VRゴーグルを被りチュートリアルに入ると、その苦労も吹き飛ぶほど新しい体験が待っています。
VRは画面の向こう側の世界に入る体験ができると良くいわれますが、今ではその意味がよく分かります。
余りのリアリティについついVR中の物や人に触ってしまおうとしますし。VRゴーグルを取り外した途端に「現実に帰ってきた」と感じるほどです。
そして、この体験は全くの新しいものなので、言葉で表現しても実際に体験しない限り伝えることができないという、まさに未知の体験になります。
これらの体験については次回の実践編で詳しくレビューしていきたいと思います。
・ベースステーションのスタンバイ設定

ベースステーションのスタンバイ設定方法は、SteamVRのメニューから「設定」を選択します。
設定画面の「Bluetoothコミュニケーション」を有効化とVRを使用していない時は、ベースステーションを「スタンバイモードにする」にチェックを付け、Bluetoothドライバーをインストールします。
設定画面の「Bluetoothコミュニケーション」を有効化とVRを使用していない時は、ベースステーションを「スタンバイモードにする」にチェックを付け、Bluetoothドライバーをインストールします。
正常に設定されていればSteamVRが終了して1分程度経過するとスタンバイ状態になり、ステータスLEDは光っていますが、チャンネル表示と赤外線照射が止まりモーターの音がしなくなります。
なお、スタンバイ機能を使うとベースステーションの復帰に1分程度時間が必要になるので、あらかじめプレイする前にSteamVRを立ち上げておくと良いでしょう。
・音声出力の自動切り替え
SteamVRが起動している間はVIVEから、終了したときはいつものスピーカーやイヤフォンから音が出るように設定をしておくと非常に便利です。

設定方法は、SteamVRのメニューから「設定」を開き。
「SteamVRが有効なとき」の箇所にある「プレイバックデバイスの設定」をVIVEのHDMIオーディオかUSBオーディオに。
「SteamVRを終了するとき」の「プレイバックデバイスの設定」を通常使用しているデバイスに設定します。
なお、SteamVRが起動している間は使用していなくてもGPUに僅かながら負荷がかかりGPUの省エネ設定が働かないため、使用しないときにはSteamVRを終了しておくと良いでしょう。
なお、 アプリケーションのクラッシュなどでSteamVRが正常に終了しなかった場合、この設定が反映されない、もしくは設定がクリアさせることがあるので、その際は再設定が必要なります。
なお、 アプリケーションのクラッシュなどでSteamVRが正常に終了しなかった場合、この設定が反映されない、もしくは設定がクリアさせることがあるので、その際は再設定が必要なります。
・ファームウェアのアップデート
SteamVRに表示される各機器のアイコンに「!」マークが表示されることがありますが、この表示はファームウェアのアップデートが用意されていることを示します。

表示が出ているハードを説明に従いPCと接続したうえで、ファームウェアのアップデートを実行してください。

この際、コントローラーは付属のマイクロUSBケーブル以外だとファームウェアのアップデートに失敗することがあるため、VIVEに付属している純正のマイクロUSBケーブルで接続しましょう。
ということでかなり長くなったHTC VIVEのセットアップ編ですが、次回は実際にVRコンテンツを体験して感じたことや、使い勝手を紹介していきたいと思います。
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