そこで、前から考えていた明るいLED電球に交換して撮影するとどうなるのか?実際に2000lmという明るいLED電球XLEDIA D125Nを使い、現在使用している電球型蛍光灯の日動F32W-Tと比較してみることにしました。
しかし、その結果、演色は高いものの照度不足で、写真撮影は三脚必須、動画撮影はとても使える照度ではありませんでした。
それもそのはず。高演色のLED光源は未だ発展途上にあり、技術的な問題やコストの点で高演色、なおかつ電球相当の(810lm)照度を大きく超える電球型LED光源は探しても見つかりません。
そのため、高演色のLED電球については導入試験を実施した結果、採用に至らなかった経緯があるのですが、今回は演色性ではなく照度に焦点を当てたLED電球の導入試験をしていきます。
今回、光源として使用するのはXLEDIA D125Nです。このLED電球は部屋の光源としても使用しており、2000lmという明るさが部屋をパリッと明るく照らしてくれます。
中身を開けてみると仕様が変更されたのか、表面にこれでもかと書かれていた文字が無くなっています。かなり目立っていたので受けが良くなかったのかもしれません。
※写真右側は旧ロット
※写真右側は旧ロット
大きさはF32W-Tよりも小さいのですが、重量はF32W-Tの103gに対して146gとF32W-Tよりも重たくなっています。照明に取付けた場合、上部が重たくなるため転倒には少し気を遣う必要があります。
ただ、本体は金属とプラスチックで構成されているため、万が一照明を倒しても割れにくいというメリットがあります。また、持ち運びの際にも気を使わなくて良いところはLED電球のメリットでしょう。
さっそく、ライト照明の電球を交換してみたのですが、ブーンというコイル鳴きのような音が出るのが気になり調べてみると、8個中4個が耳を澄ませば聞こえる程度のノイズを発していました。
このノイズは電球が高温になると音も大きくなるため、熱により電球内部の回路に負荷が掛かっている可能性があります。
とりあえず、ノイズについては撮影に影響がないのでそのまま使い、電球型蛍光灯のF32W-Tと比較していきます。
まずはEOS Kiss X7iのWBをプリセットの太陽光(5200K)にして色温度の違いを見てみます。
こちらがF32W-T(6500K)です。F32W-Tは明るさを重視しているため、緑と青色の光が強めに出ているといわれますが、影にその傾向が強く表れます。
こちらはD125N(5000K)です。5000Kに近いWBを設定しているのに200Kの差でここまで赤くなるのか少し疑問に感じます。
グレーカードでマニュアルWBを設定をするので色温度については特に困ることはないのですが、WBのマニュアル設定が無くオートWBの精度が甘い場合は困ることがあるかもしれません。
続いて一番気になる明るさです。ライト照明8個全ての光源を交換して、撮影ブースの机の台の上に置いた照度計で照度を比較してきます。
なお、F32W-Tは1個あたり1650lm(カタログなどでは2000lmや1800lmの表記もあるが箱は1650lm表記)でXLEDIA D125Nの2000lmより暗い仕様となっています。
※照度の比較は経年劣化を考慮していません。
まずはF32W-Tです。明るさは1268lmとなりました。これでも撮影ブースは眩しいぐらいなのですが、普段使用している50mmのレンズ(APS-Cなので80mm相当)ではISO400 F5 1/80をよく使います。
続いてD125Nです。照度は1736lmとF32W-Tよりも明るくなっています。
照度は3割近く明るくなっていますが、シャッタースピードに換算すると1/3段の差です。たった1/3段とみるのか、されど1/3段とみるのかは意見が分かれるところでしょう。
※シャッタースピードの1段は露光時間が倍違う。
続いて発熱比較です。蛍光灯でもLEDでも熱いと回路が故障してしまうため、発熱が低いに越したことはありません。計測は照明のボックス上部で一番温度の高い箇所を計測します。
※室温25.1度の環境で計測。
結果はF32W-Tが48.9度に対して43.5度とF32W-Tよりも低くなっています。
真夏にF32W-Tで撮影をしていると室温がみるみる上がり、クーラーが激しく部屋を冷却していましたが、D125Nはそこまで暑くならないので、真夏の撮影ではそれほどクーラーを酷使しなくて済みそうです。
ただ、LED光源の温度は86.3度と高温なので、光源の寿命についてはある程度短くなることを覚悟しておかないといけないかもしれません。
また、D125Nには熱保護回路が組込んであるようですが、ある程度暑くなった状態で一度消灯し即点灯すると熱保護回路が働いて点滅を起こすことがあります。
続いて演色性の比較です。演色性の比較写真は撮影後リサイズ以外の補正を一切かけていません。
最初の比較はデジモノなどに多い黒色の被写体です。まずはF32W-T。
続いてD125Nです。白地のバックにデジモノによく見られる黒色の物体を置いて撮影しても目立った変化はありません。
白黒のコントラストが強い写真なのでF32W-TでもD125Nでも撮影後にPhotoshopで補正をかければ、色かぶりも黒にかき消されて似たような結果になるので、このような撮影環境のみで使う場合はわざわざ光源を変える必要性は感じません。
続いて演色性で差が出やすい肌色です。
F32W-Tでは肌の色に緑がかぶって不健康な発色です。
D125Nはやや青色が強めに出ているのか、肌色の場合は赤と相殺されて色が淡くなるので色白に映ります。
そして演色性の高いLED電球LDA9N-D-Gのテストで最も差が出たドールの撮影です。
演色性についてはどちらも難がありますが、F32W-Tの緑かぶりは肌色が不健康に映りますし、グレーカードで何度もWBを設定したのにもかかわらず影が緑かぶりの影響を受けてしまうため、撮影後の補正が一部省けるD125Nに軍配が上がります。
ここまで撮影していると気になったのがフリッカー(ちらつき)です。
蛍光灯でもLEDでもフリッカーは出ますが、フリッカーで暗くなったところに合わせてシャッターを切ってしまうとF32W-Tよりも明るい時と暗い時の差が大きく出ます。ただ、F32W-Tの時のようにフリッカーで色が大きく化けることはありません。
また、フリッカーは動画撮影時にも影響を与えますが、こちらはシャッタースピードを映像のフレームレートまで落としておけば、フリッカーで映像がチカチカすることはありません。
※オート設定のみのビデオカメラだと撮影時にちらつきが出てくる可能性がある。
※動画撮影時のフリッカーについては蛍光灯でも発生する。
なお、動画については部屋の電球をD125Nに全灯交換した際に撮影用に流用し、試験的に動画を1本作り上げてます。結果は満足いくもので、今回のD125N導入の大きな要因となりました。
さらに、部屋の照明も同じD125Nなので、影の出方や反射光の映り込みにより画の質は落ちますが、動画撮影時の追加光源としても使えるようになりました。
もう1点気がついたのは、LED特有の指向性は特に気にならないということです。
D125Nは元々広拡散タイプなのですが、撮影照明は光を拡散するためのデュフーザーがあるため光が拡散して影がやわらかくなります。
F32W-Tと比較すると、指向性のためか僅かに影がシャキッとした雰囲気を持っていますが、あくまでも比較して初めてそうかなと感じる僅かな差でしかありません。実際、上記で公開している数々の写真を見ても分るとおり、影の出方は何ら問題がありません。
まとめ
当初の目的である照度の確保については、特に照度が足りないと感じていた動画撮影時に効果を発揮することを既に実感していることもあり、写真の撮影も含め、私の撮影環境では実用性有りという結果でした。
コストが高い点とフリッカーの影響がやや強めに出てくる点については明らかに蛍光灯に劣る点ですが、撮影した写真や動画に気持ち悪い緑かぶりが出てこないので撮影していて気持ちいいですし、補正の手間も少なくなりました。
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