今回は、新たに空中都市コロンビアへと舞台を移し、新しい物語となったBIOSHOCK INFINITEをネタバレ無しでレビューしていきます。
二つの指南書
BIOSHOCK INFINITEのレビューといっておきながら、冒頭からPCゲームすら関係無い話をしないといけないのすが、これは大事なことなのであえて冒頭で記載しておきます。
この世の中には、兵法について記された有名な書物が2冊あります。「孫子」と「戦争論」という二つの書で、この2つの書は有名無名問わず、多くの経営者が読んでいる経営のバイブルとなっています。
面白いことにこの書物は対極にあり、孫子は「兵は詭道なり」といい、戦争は謀りごとで敵を欺くことであると常々書いてあるのに対し、戦争論は「チェス盤の上に謀無し」と謀りごとを否定し正攻法を説いています。
これは、この2つの書が生まれた時代の背景を知るとわかるといわれ、孫子は2500年前の中国で、戦争に負けることは国の滅亡と等しく、戦いは1度しかないため敵を欺くことが有効と説くことになったといわれています。
対して戦争論は近代ヨーロッパのドイツで生まれ、戦争が外交の手段の一つとして存在する時代のため、何度も敵と戦うことがあり、お互い相手の手の内は知っているため正攻法を説いているといわれています。
ここでBIOSHOCK INFINITEのレビューにもどりますが、何度も同じ相手と戦うと手の内が見えてくるため、謀は通用しない・・・
そうです!シリーズ1作目は「兵は詭道なり」のごとく欺かれましたが、2作目は、もう通用しないと「チェス盤の上に謀無し」で正攻法ストーリーで攻めてきたのに対し、3作目で再び「兵は詭道なり」で攻めてきたことが、見事にBIOSHOCK INFINITEの評価を落とす原因になりました。
ストーリーを追っていくと「あれ、もしかして・・・」なんて予想が見事に当るような、底の浅いストーリーでは落胆していまいます。しかも、それが主要キャラだとするとネタバレ同然のレベルです。ストーリーに趣を置いている作品だけに、プレイしていて落胆してしまいました。
初代からプレイしていたため、相手の手の内が分かってしまい、このような結果になったのですが、前作をプレイしていないのであれば、この点はある程度評価されるのではと思いますが・・・
それでも後半で、圧縮されたストーリー展開により、プレイヤーが置いてきぼりにされるのはどうかと思います。
また、ストーリーで重要な人物が、蓋を開けてみるとストーリーとはあまり関わらない存在で拍子抜けしたり、道中の選択が全く意味がなかったりと、所々にほころびを感じることもあり、総じて詰めが甘いと感じます。
古き良きアメリカ?
BIOSHOCK INFINITEの舞台は1912年のアメリカを土台としたもので、アメリカ、特に南部特有の文化が色濃く反映されているように思います
アメリカ南部といえば・・・
有色人種を迫害した組織、KKKを生み出した「白人至上主義」
未だにダーウィンの進化論を学校で教えることを拒む「キリスト教原理主義」
強いアメリカを求める「国粋主義」
このステレオタイプ的な南部のイメージに加え、産業革命最盛期に起こった「労働者と経営者の対立」というテーマが反映された世界が、空中都市コロンビアです。
このステレオタイプ的な南部のイメージに加え、産業革命最盛期に起こった「労働者と経営者の対立」というテーマが反映された世界が、空中都市コロンビアです。
綺麗に見える理想郷は上辺だけで、ストーリーの序盤は上流階級である白人の移住区で理想郷のイメージを与えておきながら、中盤からは綺麗に見えたコロンビアという理想郷も、有色人種、ネイティブアメリカン、低階級の労働者が支えているという現実が見えてきます。
アメリカ人にとっては考えさせられる内容ですが、これらの点はアメリカの歴史や文化についてある程度の知識がないと楽しめない内容になっていますので、個人よって良し悪しが分かれる要素だといえます。
加えて人種の問題は日本人には分かりにくい要素故に、アメリカの評価と日本の評価が剥離しているのかもしれません。
純粋なFPSとして
BIOSHOCK INFINITEでは武器の携行が2種類までとなっおり、前作の用似好きな武器を好きなときに使うというスタイルは廃されています。
数多くの武器が出る中、あれもこれも使いたいという欲求は満たせませんが、武器の種類が増え、また開放的な空間での戦闘も加わったため、戦闘スタイルに大きな変化を与える要因となっています。
さらに、空中都市という開放的な空間での戦闘になったことで、一部のエリアでは立体的な戦闘もでき、閉鎖的だった前作とは対照的な戦闘となります。
また、ティアという空間の裂け目から戦闘に使える物資や兵器を出したり、バディの物資補給などが、戦い方に大きな変化をもたらしています。
FPSの純粋な要素である「戦闘」要素については、驚きはないものの十分に満足できるレベルになっています。
可愛い?バディ
可愛いかどうかは人の好みによるでしょうが、道中「エリザベス」という少女と同行することになります。
バディといっても戦闘に直接参加するわけではなく、補給物資を戦闘中に渡してくれたり、ティアから戦闘の役に立つ物を引き出したりと、後方援護をしてくれます。
パッケージではそこそこ日本人受けしそうな容姿だったのですが、作中ではディズニーのキャラクターのような容姿に・・・(どうしてこうなった)、!動きまでディズニーキャラクターそのものです(さすがにいきなり歌い出したりまではしませんが)。
FPSといえば男臭くてジメッとしたイメージがありますが、そんな中で清涼剤としての存在になるはず・・・だったのでしょう。しかし、それはアメリカ人が対象ということなのでしょうね(ここも好き嫌いが分かれると思います)。
ちなみに声は良いです!というか個人的に素晴らしいです。ローカライズで選んでいる声優は有名な人たちで、主役や主用キャラクターを数多く経験している人たちなので、話を聞いていても違和感を感じませんし、個人的にも好きな声優が多いのでこの点は、良しといったところです。
DLC
BIOSHOCK INFINITEのDLCには武器と装備強化、武器のビジュアルが一部変更になる第1段、決められたステージで競う、競技向けの第2段、そして前作の舞台であったラプチャーに行くことになる3段と4段が用意されています。
3段と4段目のDLC以外は特に面白いものでもありませんが、DLCが全てセットになっているシーズンパスのほうが3段と4段目のDLCを単体で買うより安いので、今回はシーズンパスを購入してみました。
なお、3段と4段目のDLCはネタバレしてしまうため、BIOSHOCK1と2をプレイする前にプレイするのはお勧めしません。もし、前作をプレイせずにやろうものなら面白さを台無しにすること間違い無しです。
さっそく、3段と4段目をプレイしたところ、本編では何かBIOSHOCKらしさを感じなかったのですが原因が分りました。
DLCでラプチャーに戻ってきたのに、ここでも何故かBIOSHOCKとは違う雰囲気で、前作が如何に微妙なバランスで雰囲気を保っていたのかということがわかります。おそらく開発元が変わったせいでBIOSHOCKらしさが失われたのでしょう。
ストーリー自体は初代をプレイしないと分りにくい部分もあり、前作経験者向けとなっています。難易度も上がり手応えはありますが、総じてプレイ時間は短めで、両方クリアするのに3~4時間程度のボリュームとなっています。
4段目については、主人公が切り替りステルス要素が入るなど純粋なゲームとして面白くなっていますので、前作をプレイ済みであれば是非ともプレイすることをお勧めしたいところです。
結局ところ
結局のところ「宙に浮いているのは都市だけでなく、ストーリーそのものだった」という始末で、新しく空中都市に舞台を移してマンネリ化を防ごうとしていたのにも関わらず、ストーリーが台無しにしてしまったといえる作品に感じます。
さらに前作の舞台、ラプチャーの閉鎖的空間は絶妙な雰囲気をかもしていたのですが、今作にはそれほど異常というか、異質な雰囲気がないのも魅力をそいでる要素だと感じます。
あれほどゲーム業界から賞を授かり、海外でも高評価を受け、国内でもBIOSHOCK1・2をプレイした人も楽しめるという話もあったほどでしたが、初代BIOSHOCKの完成度を期待すると裏切られます。
ただし、純粋なFPSとしては十分に楽しめる完成度になっていますので、そういう意味ではBIOSHOCKシリーズを未プレイの人にはお勧めでしょう。
前作をプレイしていなくても、ストーリー的に繋がりがないため、BIOSHOCK INFINITEをプレイ後(DLCは除く)にBIOSHOCK1・2をプレイするのが一番楽しめる順番かと思います。
さて、今回は酷評に終わりましたが、次回作では今回の評価を帳消しにできるのか、次のBIOSHOCKシリーズを期待したいところです。
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