Day 146 - In Technicolor / saebaryo
パソコンはその利便性のより多くの人々が当たり前のように扱うものに発展していきました、しかし同時にデジタルデータの不正コピーという問題を新たに生み出したのも事実です。
そのような不正コピーを防ぐためソフトウェアやオーディオファイル、動画などは厳重に著作権を保護する機能を付加して販売されることとなり、その保護機能を解除して不正コピーをする個人や組織とのイタチごっこが今もなお続いています。
すでに音楽の世界ではAppleが不正コピーを入手するより買った方が手間がかからないという革新的な方法で不正コピーを防止するという手法をとりiPodの人気と相まって音楽業界に風穴を開けることに成功しました。
しかし映像コンテンツはそうもいかず、ブルーレイとなった今ではDVDより厳重なコンテンツ保護をかけられ、地上デジタル放送も同じく不正コピーを防ぐ仕組みが幾重にも張られています。
しかしその結果がもたらしたのはかつて大ヒットしたSONYのウォークマンがAppleのiPodにいとも簡単に蹂躙されたあのときと同じ、そう利便性の欠如をもたらしてしまっているのです。
あの当時の国内メーカーが販売していたポータブルオーディオは音楽業界や著作権団体からの強い要望でコンテンツにコピーガード機能を要求しオーディオCDはCCCDにし、パソコンからデジタルポータブルオーディオに転送する際には専用のソフト(一部には有償のものがあった)を使いデータを暗合する必要があり使い勝手は最悪でした。
当時の私もデジタルポータブルオーディオを購入しましたがもちろん使い勝手の悪い国内のメーカーの商品など見向きもせず海外のポータブルオーディオを購入したほどです。
その結果は今でもiPodシリーズがポータブルオーディオのシェアを握っていることから影響の大きさを想像できると思います。
今まさにその状態がデジタル放送コンテンツにおいて発生しているのです。
特に地上デジタル放送をパソコンで視聴・録画するのは難しく、デジタルチューナーを買ってきたからといって簡単に観られるとは限りません。
今回はそんな難しいデジタル放送のコンテンツ保護の経緯や専門用語の解説を時系列で紹介していき、いかにデジタル放送をパソコンで観るのが難しく複雑なのかを紹介していきたいと思います。
謎のカード「B-CAS」
デジタル放送を観るためにはパソコンもTVも関係なくB-CASカードというものを使わないといけません、TVなら裏側や横にB-CASカードを差込むスロットが存在しています。
またパソコン向けデジタルチューナーにもデカデカとカード差込むスロットが存在しています。
このB-CASカードはコンテンツを保護する機能であるDRM(デジタル著作権管理)機能の一部です。
デジタル放送のデータは暗合化されているため電波を受信するだけでは観ることができません、このB-CASカードに保存されている鍵により暗号化を解除して正常な元のデータに戻し初めて映像を見ることが可能になるのです。
しかし単純に考えればデジタルTVを生産する各メーカーがB-CASと同じシステムをハードウェアに内蔵すれば済むことをわざわざ独立したB-CAS社がカードを発行してまでする必要があるのか?さらにB-CASカードの発行手数料をメーカーが払いそのコストを消費者が最終的にかぶる必要があるのか?随分前からですがB-CASを発行しているB-CAS社についていはその存在意義について疑問を持つ人々が多く現在B-CAS事態の見直しも検討されています。
B-CAS社については話すと長くなるので気になる方は個々で調べてもらとして、ともかくパソコンでデジタル放送を観るためにはセットになっているB-CASカードを説明に従い差込む必要があるということです。
デジタル放送が開始された当時、不正コピーを防止するために取った行為は究極のコンテンツ保護ともいえる行為でした。
それは著作件団体がデジタル放送のチューナーをパソコンで出すことを認めないというものでした。
録画する機能がなければコピーもされないということでデジタルチューナーは一体型パソコン(モニター・本体が一体化しているパソコン)の一部のみに提供され自作パソコンの世界ではデジタルチューナーは無縁のもとなっていました。
しかしその考えはある時期をもって見直されました、パソコンが新しいメディアの出口として人々に迎えられていきインターネットで情報を求めることが当たり前の時代となった結果TV離れが進み、結果著作件団体と組んでいたコンテンツ提供側が自分たちの首を絞めていたことに気付き始めます。
そしてその考え方にとどめを刺したフーリオが2008年に登場します。
業界激震!!フーリオ登場
相も変わらずパソコンでのデジタル放送コンテンツを視聴することに抵抗を示している著作件団体とコンテンツ提供側に対して怖ろしいハードウェアが登場しました、それがフーリオです。
それまでに販売されている正規のデジタルチューナはHDDに録画データを保存する際DRM(デジタル著作権管理)により暗号化することが求められ録画したパソコン以外のハードウェアでデータを再生しようとしても暗号化に阻まれ再生ができませんでした。
しかし一部の人々はこれを認めませんでした、個人の利用範囲を超えないコンテンツのコピーやパソコンなのだからもっと自由にデータを使いたいといった要求が数多くありました。
同時に一部では個人利用の範囲を超えた不正コピーを目的としている人々もいたのは確かです。
この需要に応えるがごとく録画データに暗号化を加えず自由に録画データを扱えるようにするフーリオが日本に向けて販売されました。
USBケーブルでパソコンと接続してどこからか手に入れてきたB-CASカードを差込めば使える簡単なセットアップが人気を博し、インターネットを通じてあっという間にその話が広がった結果それまで不満を持っていた人がこぞってフーリオに手をのばし始めました。
これにより業界に激震が走ります、このままフーリオを野放しにしているとB-CASやDRM(デジタル著作権管理)といった今までのコンテンツ保護対策が根底からひっくり返ると慌ててフーリオの販売指し止めに動きます。
しかし販売元は台湾でインターネットを通じた個人輸入という形から制限もかけられず結果現在も野放しになっている状態です。
ここでデジタルTVやHDDチューナーを製造している国内メーカーも手のひらを返し始めます、著作権を盾にコンテンツ保護を強化した結果がコレだと批判も出てき始め、結果フーリオに乗っ取られるならばいっそと今まで認めなかったパソコン用の単体デジタルチューナーが販売できるように著作件団体が規定を改定しました。
結果フリーオのおかげでパソコン用単体デジタルチューナが各メーカーから販売されることとなりました。
しかしフーリオの与えた影響はこれだけではありませんでした、消費者があまりの使いにくさにうんざりしていたコピーワンスの見直しにまで影響を与えていきます。
コピーワンスとダビング10
デジタル放送を録画したデータは自由にコピーすることはできませんでした、しかしHDDからBD-RやDVD-Rにデータをコピーして保存しておきたいという要求もあり当初はコピーワンスという機能により録画データを他のメディアに移すことのみ許可をしていました。
コピーワンスという機能はHDDに録画したデータをBD-R等の他のメディアに移す際にコピー元のデータを消去して同じものが二つとない状態にするもので、録画したコンテンツを大量に複製して配布することを抑制しつつ消費者の利便性を考えたものであったのですがこの録画データの移動中に失敗するとどちらのデータも消え二度と観られなくなるという問題を抱えていました。
消費者はもちろんこの仕様に納得がいきませんでしたがコピーワンスが見直されるにはフーリオの登場を待たなければなりませんでした。
フーリオは先にも書いているとおり録画したデータを自由にコピーすることが可能なハードウェアでその機能に業界に衝撃をもたらしました、この騒動でデジタルTVやHDDチューナーを製造している国内メーカーが著作権団体に手のひらを返しはじめ前々から不便と消費者にいわれていたコピーワンスについても見直しを求めていきます。
そして著作権団体・ハードウェアの製造メーカー・消費者団体で折り合いがついたのがコピーワンスに変わる新しい機能ダビング10です。
このダビング10とは9枚のコピーと1枚のムーブで合計10枚のコピーが作れる機能です、これによりHDDからメディアにコピーしている最中に停電やメディア不良による失敗をしても残り回数分コピーが可能になり失敗の可能性が激減しました。
もちろんコピーしたメディアから安易にコピーを作成することはできないように保護しています、DVDにコピーした場合はCPRMで、ブルーレイの場合はAACSというコピーガードにより映像コンテンツを保護しています。
現在パソコンもダビング10の制限によりHDDに録画したデータをBD-RやDVD-Rにコピーする場合は失敗を含め10枚までと制限(最後の1回はムーブ)されています。
パソコンとDRM(デジタル著作権管理)
フーリオの登場という予想もしなかった事態により単体パソコン用チューナーが発売されはじめましたがパソコンならではの問題に直面します、それがDRM(デジタル著作権管理)です。
このDRM(デジタル著作権管理)はデジタルコンテンツの著作権を守るために使われるデータの保護機能技術全般を指している言葉でDRMという明確なシステムやソフトウェアが存在している訳ではありません。
パソコンにおいてはDRMというとハードウェア(CPUやHDD等)の構成から作られたパソコン固有のIDやネットワークからダウンロードしてきたデータを使用して録画データを暗号化・復号化することを指しますが、DVDのDRMであるCSSはすでに解読されコピーを簡単に作成できるようになったという経緯があるため今日のDRMはより強力なものになっています。
このDRMの機能を担うソフトウェアはデジタルチューナのサポートソフトに付属しており初期インストール時に同時にインストールします、このソフトウェアをインストールしないとデータの録画はおろか再生もできません。
このように録画データをDRMが保護することにより不正なコピーを防止しダビング10のみでしかコピーできないように制限されているのです。
しかしパソコンといえばデジタルTVやHDDデジタルチューナーと違い自由にハードウェアを構築することができるものですがこの利便性がかえって仇となってしまいます。
実はこの問題に私も直面したのですがパソコンのハードウェア(今回はCPU)を変更したとたんにDRMによりデジタル放送を観ることができなくなりました。
これはハードウェアの構成を変えたためそれらから作成されるハードウェア固有のIDが変化し、今までDRMで認証していたパソコンではないと認識されたためです。
この経緯は過去の記事で公開しているのですが、ともかく元に戻すには複雑でかなり手間のかかる方法でした、間違いなく初心者はこの状態になるとお手上げでしょう。
パソコンで地上デジタル放送を視聴・録画する場合はこのようなデメリットが存在することをあらかじめ理解しておく必要があります。
パソコン故のHDCP・COPP
DRMによりパソコンの録画データを自由に扱えないことに対し著作件団体が一定の理解を得たと思ったらそれは間違いです、DRMの暗号化はファイルのコピーを制限することはできても再生している最中のデータを保護することはできません。
パソコンには映像を処理するためにGPU(ビデオカード・オンボードビデオ・オンCPUビデオ等の映像を処理するハードウェア)がありますがDRMで復号化されたデータはドライバーを通してこのGPUへと届けられます、しかしここにデータを複製することが可能になる不正なドライバーを使用したり、ビデオカードから出ていくデジタル信号をそのまま複製すれば全く同じものがコピーできてしまいます。
それではDRMで暗号化した意味がありません、そこでモニターまでDRMの効果を失わせないためデジタルコピーガードを施すことになりました、それがCOPPとHDCPです。
まずCOPPですが、これはGPUのドライバーに不正のものを使用できなくするための規格で再生ソフトウェアとGPUの間を保護する機能です、コレにより不正なドライバーを使用して復号化されたデータを抽出できないようにしています。
そしてHDCPによりGPUからモニターへ送られる信号を暗号化してケーブルを伝わる信号からコピーを作成されることを防止しています。
このCOPPとHDCPによりDRMで保護されたコンテンツをモニターに投影するまで保護することが可能となり著作権団体も納得する規格ができあがりました。
このためパソコンで地上デジタル放送を視聴するにはCOPP対応ドライバー(最新のドライバーはほぼ対応済み)とHDCPに対応したモニター(今のモニターはほぼ対応、デジタルTVも対応しているものが多い)が必要となります。
ただし救済措置もありHDCPに対応していないモニターでもアナログ接続であれば画質を落とした映像を表示できるようになっています。
ハードウェアの進化がもたらしたDLNA
パソコンの高性能化に比例してデジタル家電の性能も大きく進化してきました、また家庭に増え続けるネットワーク対応機器に対応するため家庭でもネットワークを構築することも珍しくなくなりました。
それらの環境が揃ったことにより動画・音楽・画像がネットワークを通してデジタルTV等のデジタル家電で再生できるようになりましたが過去の機器では規格が統一されていないため各社バラバラに動き、互換性がない時代を通過しやっとDLNAという規格により統一されパソコンでもBDレコーダーでもデジタルTVでも同じように動画・画像・音楽といったデジタルコンテンツが再生できるようになりました。
このDLNAに対応したハードにはDLNAのマークが付いておりDLNA対応サーバーとDLNA対応クライアントは相互に通信が可能なことが一目で分かるようになっています。
これにより消費者はDLNAのマークが付いた機器同士を繋げて自由にその中に保存されているコンテンツをネットワーク越しに楽しむことができるようになりました。
しかし利便性が増した一方で著作権団体はそれを危惧します、デジタル放送の録画データをDLNAで配信されてはたまらないとDRMの保護を緩めることはありませんでした。
DLNAとDTCP-IP
DRMにより保護されDLNAでの配信はできない録画データですが、やはり消費者としてはDLNAを使って録画したデータを他のハードウェアでも再生できるようにして欲しいと要望を出してきます。
そんな要望に対応するためDRMで暗号化されたコンテンツを暗号化したままネットワークを通じて他のハードウェアで再生させるための規格DTCP-IPが登場しました。
DTCP-IPによりDLNAに対応しなおかつDTCP-IPに対応した機器同士であればDRMで保護されたコンテンツを転送して再生することができるようになります。
※DLNAサーバー同士、DLNAクライアント同士は接続不可
しかしこのDTCP-IPは日本独自の規格で海外には存在しない規格です、そもそも海外では録画したデータは自由にあつかえるためDTCP-IPで保護する必要がないのです。
このため海外製のDLNA機器やアプリケーションの殆どがDTCP-IPに対応していないので日本製の家電と繋いでもDRMで保護されたコンテンツの再生はできません。
実は驚くかもしれませんがDLNAに対応しているWindows 7すらDTCP-IPには対応していません、このため家電で録画したデジタル放送をWindowsパソコン観るためにはDTCP-IPに対応したソフトウェアを別途購入する必要があります。
ただし配信に関してはデジタルチューナーにDTCP-IP対応のサーバーが同梱されている場合があり、DLNAを通してDTCP-IPに対応した家電やパソコンに録画データを配信することは可能です。
ちなみにDTCP-IPに対応したWindows用のソフトウェアは殆ど存在しません、これにはDTCP-IPによる暗号化が無効にされる原因を作った場合(DVDの時にあったキーの流出等)、多額の損害賠償請求をされるためです。
DTCP-IPの暗号化が無効ともなれば今までコンテンツを保護してきた各機能は意味をなさなくなるわけでそのリスクを金額で示しているともいえるでしょう。
このため技術的には作れても損害賠償請求のリスクが大きすぎて個人ではとても手が出せないという状態になっているようです。
「著作権保護」追い求めた結果・・・
もともと暗号化されている電波をB-CASカードにより復号化
そして復号化されたデータを保存する際はDRMにより再び暗号化
再生時も復号化したデータをCOPPがソフトウェアからGPUまでを再び暗号化
GPUで復号化されたデータは再びHDCPによりモニターまで暗号化
モニター内の回路ではじめて完全に暗号化が解かれ正常な映像として表示
ネットワーク越しの再生はDTCP-IPで転送されるデータを暗号化
これらの著作権保護対策により入ってきたデジタル放送のデータはどこに保存しようがどのように通信しようが暗号化されて安易にコピーできなくなりました。
四方八方を取り囲み抜け道を無くすという徹底的な保護により確かに著作権団体が求めるものができあがったのですがそれは消費者が求めていたものでしょうか?
問うまでもなく消費者はこのようなものは望んでいませんし私も納得がいきません。
パソコンでデジタル放送が観られると期待しハードウェアを購入しようとしている初心者にこのような難しい話をしてみたらどうなるでしょうか?ほとんどの方は専門用語の羅列に頭を抱えるでしょう。
このような現状に納得がいかないのです。
ただ一部で叫ばれている全て著作権団体が悪いというのも認められるべきではありません。
このブログの記事を書いて尚更そう思うのですが長い時間調査と実証などを行ない作られた記事がたった数回の操作でコピーされあたかも他人が自分が書いた記事のように公開されるのを認めるのと同じです、クリエイターと呼ばれる人たちなら誰もがその行為に怒りを感じるでしょう。
しかし全て保護しろというのも無茶な話で利便性を損なわない程度の譲歩は必要なはずです、それはこのブログの記事を参照元を表記して引用したり自由に記事にリンクやトラックバックを飛ばしてもいいということと同等なはずです。
すべきことは見えています、もっと消費者とメーカーと著作権団体が歩み寄りお互いを理解する必要があるのではないでしょうか。
それこそがお互いのメリットへと繋がり結果より多くの人へコンテンツを供給することになり最終的にお互いの利益に貢献できるのではと思います。
デジタル放送を観るためにはパソコンもTVも関係なくB-CASカードというものを使わないといけません、TVなら裏側や横にB-CASカードを差込むスロットが存在しています。
またパソコン向けデジタルチューナーにもデカデカとカード差込むスロットが存在しています。
このB-CASカードはコンテンツを保護する機能であるDRM(デジタル著作権管理)機能の一部です。
デジタル放送のデータは暗合化されているため電波を受信するだけでは観ることができません、このB-CASカードに保存されている鍵により暗号化を解除して正常な元のデータに戻し初めて映像を見ることが可能になるのです。
しかし単純に考えればデジタルTVを生産する各メーカーがB-CASと同じシステムをハードウェアに内蔵すれば済むことをわざわざ独立したB-CAS社がカードを発行してまでする必要があるのか?さらにB-CASカードの発行手数料をメーカーが払いそのコストを消費者が最終的にかぶる必要があるのか?随分前からですがB-CASを発行しているB-CAS社についていはその存在意義について疑問を持つ人々が多く現在B-CAS事態の見直しも検討されています。
B-CAS社については話すと長くなるので気になる方は個々で調べてもらとして、ともかくパソコンでデジタル放送を観るためにはセットになっているB-CASカードを説明に従い差込む必要があるということです。
Intel Core 2 Duo E7300 CPU / William Hook
デジタル放送が開始された当時、不正コピーを防止するために取った行為は究極のコンテンツ保護ともいえる行為でした。
それは著作件団体がデジタル放送のチューナーをパソコンで出すことを認めないというものでした。
録画する機能がなければコピーもされないということでデジタルチューナーは一体型パソコン(モニター・本体が一体化しているパソコン)の一部のみに提供され自作パソコンの世界ではデジタルチューナーは無縁のもとなっていました。
しかしその考えはある時期をもって見直されました、パソコンが新しいメディアの出口として人々に迎えられていきインターネットで情報を求めることが当たり前の時代となった結果TV離れが進み、結果著作件団体と組んでいたコンテンツ提供側が自分たちの首を絞めていたことに気付き始めます。
そしてその考え方にとどめを刺したフーリオが2008年に登場します。
業界激震!!フーリオ登場
相も変わらずパソコンでのデジタル放送コンテンツを視聴することに抵抗を示している著作件団体とコンテンツ提供側に対して怖ろしいハードウェアが登場しました、それがフーリオです。
それまでに販売されている正規のデジタルチューナはHDDに録画データを保存する際DRM(デジタル著作権管理)により暗号化することが求められ録画したパソコン以外のハードウェアでデータを再生しようとしても暗号化に阻まれ再生ができませんでした。
しかし一部の人々はこれを認めませんでした、個人の利用範囲を超えないコンテンツのコピーやパソコンなのだからもっと自由にデータを使いたいといった要求が数多くありました。
同時に一部では個人利用の範囲を超えた不正コピーを目的としている人々もいたのは確かです。
この需要に応えるがごとく録画データに暗号化を加えず自由に録画データを扱えるようにするフーリオが日本に向けて販売されました。
USBケーブルでパソコンと接続してどこからか手に入れてきたB-CASカードを差込めば使える簡単なセットアップが人気を博し、インターネットを通じてあっという間にその話が広がった結果それまで不満を持っていた人がこぞってフーリオに手をのばし始めました。
これにより業界に激震が走ります、このままフーリオを野放しにしているとB-CASやDRM(デジタル著作権管理)といった今までのコンテンツ保護対策が根底からひっくり返ると慌ててフーリオの販売指し止めに動きます。
しかし販売元は台湾でインターネットを通じた個人輸入という形から制限もかけられず結果現在も野放しになっている状態です。
ここでデジタルTVやHDDチューナーを製造している国内メーカーも手のひらを返し始めます、著作権を盾にコンテンツ保護を強化した結果がコレだと批判も出てき始め、結果フーリオに乗っ取られるならばいっそと今まで認めなかったパソコン用の単体デジタルチューナーが販売できるように著作件団体が規定を改定しました。
結果フリーオのおかげでパソコン用単体デジタルチューナが各メーカーから販売されることとなりました。
しかしフーリオの与えた影響はこれだけではありませんでした、消費者があまりの使いにくさにうんざりしていたコピーワンスの見直しにまで影響を与えていきます。
コピーワンスとダビング10
デジタル放送を録画したデータは自由にコピーすることはできませんでした、しかしHDDからBD-RやDVD-Rにデータをコピーして保存しておきたいという要求もあり当初はコピーワンスという機能により録画データを他のメディアに移すことのみ許可をしていました。
コピーワンスという機能はHDDに録画したデータをBD-R等の他のメディアに移す際にコピー元のデータを消去して同じものが二つとない状態にするもので、録画したコンテンツを大量に複製して配布することを抑制しつつ消費者の利便性を考えたものであったのですがこの録画データの移動中に失敗するとどちらのデータも消え二度と観られなくなるという問題を抱えていました。
消費者はもちろんこの仕様に納得がいきませんでしたがコピーワンスが見直されるにはフーリオの登場を待たなければなりませんでした。
フーリオは先にも書いているとおり録画したデータを自由にコピーすることが可能なハードウェアでその機能に業界に衝撃をもたらしました、この騒動でデジタルTVやHDDチューナーを製造している国内メーカーが著作権団体に手のひらを返しはじめ前々から不便と消費者にいわれていたコピーワンスについても見直しを求めていきます。
そして著作権団体・ハードウェアの製造メーカー・消費者団体で折り合いがついたのがコピーワンスに変わる新しい機能ダビング10です。
このダビング10とは9枚のコピーと1枚のムーブで合計10枚のコピーが作れる機能です、これによりHDDからメディアにコピーしている最中に停電やメディア不良による失敗をしても残り回数分コピーが可能になり失敗の可能性が激減しました。
もちろんコピーしたメディアから安易にコピーを作成することはできないように保護しています、DVDにコピーした場合はCPRMで、ブルーレイの場合はAACSというコピーガードにより映像コンテンツを保護しています。
現在パソコンもダビング10の制限によりHDDに録画したデータをBD-RやDVD-Rにコピーする場合は失敗を含め10枚までと制限(最後の1回はムーブ)されています。
パソコンとDRM(デジタル著作権管理)
フーリオの登場という予想もしなかった事態により単体パソコン用チューナーが発売されはじめましたがパソコンならではの問題に直面します、それがDRM(デジタル著作権管理)です。
このDRM(デジタル著作権管理)はデジタルコンテンツの著作権を守るために使われるデータの保護機能技術全般を指している言葉でDRMという明確なシステムやソフトウェアが存在している訳ではありません。
パソコンにおいてはDRMというとハードウェア(CPUやHDD等)の構成から作られたパソコン固有のIDやネットワークからダウンロードしてきたデータを使用して録画データを暗号化・復号化することを指しますが、DVDのDRMであるCSSはすでに解読されコピーを簡単に作成できるようになったという経緯があるため今日のDRMはより強力なものになっています。
このDRMの機能を担うソフトウェアはデジタルチューナのサポートソフトに付属しており初期インストール時に同時にインストールします、このソフトウェアをインストールしないとデータの録画はおろか再生もできません。
このように録画データをDRMが保護することにより不正なコピーを防止しダビング10のみでしかコピーできないように制限されているのです。
しかしパソコンといえばデジタルTVやHDDデジタルチューナーと違い自由にハードウェアを構築することができるものですがこの利便性がかえって仇となってしまいます。
実はこの問題に私も直面したのですがパソコンのハードウェア(今回はCPU)を変更したとたんにDRMによりデジタル放送を観ることができなくなりました。
これはハードウェアの構成を変えたためそれらから作成されるハードウェア固有のIDが変化し、今までDRMで認証していたパソコンではないと認識されたためです。
この経緯は過去の記事で公開しているのですが、ともかく元に戻すには複雑でかなり手間のかかる方法でした、間違いなく初心者はこの状態になるとお手上げでしょう。
パソコンで地上デジタル放送を視聴・録画する場合はこのようなデメリットが存在することをあらかじめ理解しておく必要があります。
パソコン故のHDCP・COPP
DRMによりパソコンの録画データを自由に扱えないことに対し著作件団体が一定の理解を得たと思ったらそれは間違いです、DRMの暗号化はファイルのコピーを制限することはできても再生している最中のデータを保護することはできません。
パソコンには映像を処理するためにGPU(ビデオカード・オンボードビデオ・オンCPUビデオ等の映像を処理するハードウェア)がありますがDRMで復号化されたデータはドライバーを通してこのGPUへと届けられます、しかしここにデータを複製することが可能になる不正なドライバーを使用したり、ビデオカードから出ていくデジタル信号をそのまま複製すれば全く同じものがコピーできてしまいます。
それではDRMで暗号化した意味がありません、そこでモニターまでDRMの効果を失わせないためデジタルコピーガードを施すことになりました、それがCOPPとHDCPです。
まずCOPPですが、これはGPUのドライバーに不正のものを使用できなくするための規格で再生ソフトウェアとGPUの間を保護する機能です、コレにより不正なドライバーを使用して復号化されたデータを抽出できないようにしています。
そしてHDCPによりGPUからモニターへ送られる信号を暗号化してケーブルを伝わる信号からコピーを作成されることを防止しています。
このCOPPとHDCPによりDRMで保護されたコンテンツをモニターに投影するまで保護することが可能となり著作権団体も納得する規格ができあがりました。
このためパソコンで地上デジタル放送を視聴するにはCOPP対応ドライバー(最新のドライバーはほぼ対応済み)とHDCPに対応したモニター(今のモニターはほぼ対応、デジタルTVも対応しているものが多い)が必要となります。
ただし救済措置もありHDCPに対応していないモニターでもアナログ接続であれば画質を落とした映像を表示できるようになっています。
ハードウェアの進化がもたらしたDLNA
パソコンの高性能化に比例してデジタル家電の性能も大きく進化してきました、また家庭に増え続けるネットワーク対応機器に対応するため家庭でもネットワークを構築することも珍しくなくなりました。
それらの環境が揃ったことにより動画・音楽・画像がネットワークを通してデジタルTV等のデジタル家電で再生できるようになりましたが過去の機器では規格が統一されていないため各社バラバラに動き、互換性がない時代を通過しやっとDLNAという規格により統一されパソコンでもBDレコーダーでもデジタルTVでも同じように動画・画像・音楽といったデジタルコンテンツが再生できるようになりました。
このDLNAに対応したハードにはDLNAのマークが付いておりDLNA対応サーバーとDLNA対応クライアントは相互に通信が可能なことが一目で分かるようになっています。
これにより消費者はDLNAのマークが付いた機器同士を繋げて自由にその中に保存されているコンテンツをネットワーク越しに楽しむことができるようになりました。
しかし利便性が増した一方で著作権団体はそれを危惧します、デジタル放送の録画データをDLNAで配信されてはたまらないとDRMの保護を緩めることはありませんでした。
DLNAとDTCP-IP
DRMにより保護されDLNAでの配信はできない録画データですが、やはり消費者としてはDLNAを使って録画したデータを他のハードウェアでも再生できるようにして欲しいと要望を出してきます。
そんな要望に対応するためDRMで暗号化されたコンテンツを暗号化したままネットワークを通じて他のハードウェアで再生させるための規格DTCP-IPが登場しました。
DTCP-IPによりDLNAに対応しなおかつDTCP-IPに対応した機器同士であればDRMで保護されたコンテンツを転送して再生することができるようになります。
※DLNAサーバー同士、DLNAクライアント同士は接続不可
しかしこのDTCP-IPは日本独自の規格で海外には存在しない規格です、そもそも海外では録画したデータは自由にあつかえるためDTCP-IPで保護する必要がないのです。
このため海外製のDLNA機器やアプリケーションの殆どがDTCP-IPに対応していないので日本製の家電と繋いでもDRMで保護されたコンテンツの再生はできません。
実は驚くかもしれませんがDLNAに対応しているWindows 7すらDTCP-IPには対応していません、このため家電で録画したデジタル放送をWindowsパソコン観るためにはDTCP-IPに対応したソフトウェアを別途購入する必要があります。
ただし配信に関してはデジタルチューナーにDTCP-IP対応のサーバーが同梱されている場合があり、DLNAを通してDTCP-IPに対応した家電やパソコンに録画データを配信することは可能です。
ちなみにDTCP-IPに対応したWindows用のソフトウェアは殆ど存在しません、これにはDTCP-IPによる暗号化が無効にされる原因を作った場合(DVDの時にあったキーの流出等)、多額の損害賠償請求をされるためです。
DTCP-IPの暗号化が無効ともなれば今までコンテンツを保護してきた各機能は意味をなさなくなるわけでそのリスクを金額で示しているともいえるでしょう。
このため技術的には作れても損害賠償請求のリスクが大きすぎて個人ではとても手が出せないという状態になっているようです。
「著作権保護」追い求めた結果・・・
もともと暗号化されている電波をB-CASカードにより復号化
そして復号化されたデータを保存する際はDRMにより再び暗号化
再生時も復号化したデータをCOPPがソフトウェアからGPUまでを再び暗号化
GPUで復号化されたデータは再びHDCPによりモニターまで暗号化
モニター内の回路ではじめて完全に暗号化が解かれ正常な映像として表示
ネットワーク越しの再生はDTCP-IPで転送されるデータを暗号化
これらの著作権保護対策により入ってきたデジタル放送のデータはどこに保存しようがどのように通信しようが暗号化されて安易にコピーできなくなりました。
四方八方を取り囲み抜け道を無くすという徹底的な保護により確かに著作権団体が求めるものができあがったのですがそれは消費者が求めていたものでしょうか?
問うまでもなく消費者はこのようなものは望んでいませんし私も納得がいきません。
パソコンでデジタル放送が観られると期待しハードウェアを購入しようとしている初心者にこのような難しい話をしてみたらどうなるでしょうか?ほとんどの方は専門用語の羅列に頭を抱えるでしょう。
このような現状に納得がいかないのです。
ただ一部で叫ばれている全て著作権団体が悪いというのも認められるべきではありません。
このブログの記事を書いて尚更そう思うのですが長い時間調査と実証などを行ない作られた記事がたった数回の操作でコピーされあたかも他人が自分が書いた記事のように公開されるのを認めるのと同じです、クリエイターと呼ばれる人たちなら誰もがその行為に怒りを感じるでしょう。
しかし全て保護しろというのも無茶な話で利便性を損なわない程度の譲歩は必要なはずです、それはこのブログの記事を参照元を表記して引用したり自由に記事にリンクやトラックバックを飛ばしてもいいということと同等なはずです。
すべきことは見えています、もっと消費者とメーカーと著作権団体が歩み寄りお互いを理解する必要があるのではないでしょうか。
それこそがお互いのメリットへと繋がり結果より多くの人へコンテンツを供給することになり最終的にお互いの利益に貢献できるのではと思います。
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