DELTA1010
DTMの世界では音楽を製作するために数十万もするオーディオI/Fを使うことがありますが、音楽を高音質で聴きたいという聴き選ユーザーがその音質に魅せられてDTM用のオーディオI/Fを導入することがあります。

私もそんな聴き選ユーザーの1人ですが、かつて聴き選ユーザーの中で評価が高かったM-Audio Delta 1010を使い続けていたものの、とうとうアナログアウトに盛大にノイズが乗るようになってしまいました。

暫くM-Audio Delta 1010のPCI基盤にあるデジタルアウトを利用していましたが、やはりDAC(機器ではなく回路の意味)の差が音質に微妙に影響を与えていたこともあり、M-Audio Delta 1010修理をしてみることにしました。

■アナログアウトのノイズはブレークアウトボックスに問題あり

M-Audio Delta 1010のノイズが乗る症状は、アナログのアウトプットのみでインプット及びデジタル出力には症状が出ません。

この症状を調べてみると、アナログアウトのノイズはブレークアウトボックス内部に問題が発生していることが多いとのことでした。

特に原因として多いのがコンデンサーの故障で、コンデンサーが膨らんでいる場合や内部の電解液が漏れている場合、ノイズが乗る症状が出るようです。

思い切って分解

コンデンサーを確認するためには分解する必要がありますが、既に保証が効かないしサポートも受け付けてもらえない古いモデルのため、思い切って分解してみました。

内部はギチギチに部品が詰まっているかと思いきや意外にも空間があり、部品の構成もシンプルなので簡単に基盤を見ることができました。

見たところコンデンサーに異常がないように見えたのですが・・・・

コンデンサーの頭頂部が膨らんでいる

1個だけコンデンサーの頭頂部が膨らんでいるのが見つかりました。

破損箇所もある

よく見てみると中身を噴いたような跡や破損箇所があります。こうなってしまうとコンデンサーの容量低下が発生して、想定した性能を発揮できず故障の原因となります。

ここは電源関連の部品が近いため、比較的発熱が多い箇所になるのですが、熱害によって寿命を迎えた可能性が高いと考えられます。

このコンデンサーが恐らく原因だろうと予想し、同じ規格のコンデンサーを取り寄せて修理することにしました。

■ハンダこてと電解コンデンサーと電子基板と

今回、膨らんでいたコンデンサーは電解コンデンサーという電子部品に使われるコンデンサーとしては一般的なタイプになります。
25V 2200μF 105℃の電解コンデンサー

規格は25V 2200μF 105℃の物です。これと同じ規格の物を取り寄せます。

同じ規格の電解コンデンサー

ちょうどAmazonで同じ規格の日本ケミコン製電解コンデンサーがあったので入手してみました。色は違いますが表記されている規格は全く同じ物です。

電解コンデンサーの交換は、ハンダこてでハンダを溶かしてアルミ電解コンデンサーを取り除き、そこに新しい電解コンデンサーを差し込んで再びハンダで固定します。

ハンダ付け

コンデンサーの極性を間違えないように慎重に確認し、ハンダ付け時の熱害を防ぐため、コンデンサーの端子にアルミクリップを取付けて放熱させたうえでハンダ付けしています。何せ相手がビンテージレベルの代物なので壊すわけにはいきません。

ハンダは苦手

久しぶりにハンダ付けをしましたが、相変らずハンダは苦手で綺麗な仕上がりにはなりませんでしたが、しっかりと固定できたので大丈夫でしょう。

コンデンサーの高さが微妙に高い

後は元に戻すだけだったのですが・・・。コンデンサーの高さが微妙に高いため内部のパーツに干渉してしまいました。

どうやらアルミの黒い放熱板に当たったらしく、何とかスペースを取るため放熱版を固定するネジ部分にワッシャーを取付けてかさ上げすることで、ようやく収まりました。

電気特性的な規格だけに注目していたせいで、サイズの確認は失念していたのが仇となったようです。

■復活のDelta 1010

元に戻したDelta 1010のブレークアウトボックスをPCに取付けて動作確認をしましたが、最悪、PCを巻き添えに故障することもあるかもしれないので恐る恐る作業したところ・・・

全アナログアウトがノイズまみれになってしまいました。PCのミキサー表示は全てのトラックが真っ赤に染まっていましたが、こちらは逆に真っ青です。

失敗したかと思いきや電源アダプターが刺さっていないことに気がつき、電源アダプターを取付けてみると・・・

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ!!復活したー!!

見事に澄んだ音がアナログアウトから出てくるではありませんか。

もう少しで20年

久しぶりに聞いたDelta 1010のアナログアウトの音は、PCスピーカーのDACを通した音とは違い、同じスピーカーでも広がりがあって面のように音が迫ってくる感覚で、潰れていた音域も見事に再現しています。

DACの差で音質が大きく変化するのはDelta 1010導入時から気がついていたので、Delta 1010がダメだったらTEAC AI-503の導入も考えていましたが、しばらくはDelta 1010で音を楽しめそうです。

しかし、久しぶりに音の世界に触れたせいで、PC用のアクティブスピーカーやプリアンプも欲しくなってきました(この世界も沼は深い)。