HTC VIVE

とうとう入手にしてしまったPCVRのHTC VIVE。前回はセットアップ編ということで長々と開封から初期セットアップまでを紹介していきましたが、今回は実際にHTC VIVEをしばらく使ってみた感想についてレビューしていきたいと思います。

PCVRの体験とはどのレベルのものなのか。ルームスケールのアドバンテージはどうなのか。また、プレイ中に感じた様々なことをまとめてみました。
・VIVEのとてつもない没入感

VIVEのセットアップでは最後にVRゴーグルを被りチュートリアルを受けるのですが、VRゴーグルを被った途端にそこには別の世界が広がっています。

その瞬間の感覚たるや衝撃的で同時に感動すら覚えます。この体験は全くの新しい体験のため、どのような言葉で語り尽くしても伝えることができないレベルに達しています。

画面の向こう側に

よく、PCVRゴーグルのレビューで画面の向こう側に入ったみたいだと表現している人がいますが、まさに画面の向こう側に入った感覚そのものです。

スマートフォン用の簡易VRゴーグルを使用していたのでVRについてはある程度触っていたのですが、立体感と没入感がスマートフォンを使うVRの比ではありません。

MocuMocuDance

大げさかもしれませんがスマートフォンVRの10倍以上の没入感といっても良く、周りは見渡す限り異世界が広がっていますし、特にキャラクターに近づくとリアル感が半端ではありません。

この強烈な没入感に長時間プレイしていると、コントローラーを置こうとしてVR映像の中で表示されている机に置き始めようとするほど。もちろん、現実にはそこには何もなく、思わず肩すかしをくらいます。

平面ディスプレイやHMDなどに使われる没入感という言葉は、「画面に映る内容にどれだけ集中できるか」というレベルで語っているのですが、VRにおける没入感は「その世界に入り込んでいるかのような錯覚感」というべきで、VRの没入感は従来のディスプレイとは違い一線を画しています。

この没入感を損なわせないようにVIVEではメガネを使用してもVR体験を損なうことなく楽しめるように設計がしてあり、若干没入感は損ないますがメガネを着用したままでもしっかりと楽しめます。
※付属のフェイスクッションをNarrowタイプを交換するとフィット感も良く、画面にピントも合わせやすいため没入感が向上する

また、しっかりと装着すれば鼻部分や周囲から光が入り込んでくることは無いため、プレイ中に没入感を阻害することもありませんでした。

・VR酔いは未経験

PCVRでは、逆に没入感が凄すぎて、FPSを平気でプレイしている人でも酔ってしまう「VR酔い」を体験する人もいるようです。

VR酔いは、回転イスのうえでグルグル回っていると酔う感覚と同じもので、折角の楽しいゲームもVR酔いになるとゲームどころではありません。

VR酔いは未経験

今のところVR酔いは体験していませんが、酔わないだけで精神的に苦痛に感じる状態になります。

特に、頭を動かしていないのに強制的に視線を左右に振られると、脳がギギギギと悲鳴を上げているかのような強烈な違和感を覚え、これを高頻度でやられると精神的に耐えられません。

VR酔いするかしないかは個人的な差によるところが大きいようですが、VR酔いを誘発する表現については没入感を損なうことにもなる規制ではなく、ある程度レーティング表示してユーザーが選択する方向になると良いと感じます。

VR酔いを誘発する表現とは別に、PCVRではVR酔いを誘発しないよう、ある程度のフレームレートが出せるPCスペックを求められるのですが、前にPCを改修しておいたおかげで性能不足によるVR酔いもありませんでした。

VRゴーグル内の映像はヌルヌルと動いており、フレームレートがあからさまに落ちていると感じるようなことは無く、性能不足によるVR酔いや苦痛とは無縁です。

ただ、一部のコンテンツでは性能不足になるとの話も出ているようですが、現状では最上位のGPUでも性能不足で、コンテンツ側の最適化か次世代のGPUが求められています。

・専用コントローラーがVR体験をより楽しくする

Steam VRコントローラー

VIVEではベースステーションから照射される赤外線を捉えてVRゴーグルとコントローラーの位置を捕捉するのですが、この捕捉精度は高く、トラッキングカウント回数も高いため、コントローラーのヌルヌルした動きに驚らかされました。

このコントローラーは存在しているだけでも没入感が全然違います。VIVEに対応したコンテンツではコントローラーが映像内に表示されるため手の位置の感覚がしっかりと認識できます。

手元のコントローラー

これにより、コントローラーが表示されている場合は没入感が増加して、そこに居るという感覚、そこに手があるという感覚がより強く感じられるようになります。

VRのゲームコンテンツでは、剣、弓矢、銃などを使う事がありますが、使っている感覚が従来のコントローラーとは断然違い、まるで本当に持っているかと錯覚するほど感覚的にしっくりとくるものがあります。

手の表現だけはコントローラーと相性が悪い

ただし、手の表現だけはコントローラーと相性が悪く、グローブ型コントローラーのように手の動きを完全にトレースできるコントローラーが欲しいと感じます。

これに関しては、Oculusが開発しているTouchコントローラーの方が手の感覚に近いということもあり、今後のサードパーティーを含めたコントローラーの開発に期待したいところです。

・ゴーグルカメラは便利

外部を確認するためのカメラ

VIVEのVRゴーグルにはカメラが用意されており、このカメラを通してゴーグルを装着したまま外を見ることができます。

このカメラのおかげで、周りが見えなくなるVRゴーグルの使用時における安全性を向上させています。

シャペロン境界

カメラの機能は設定で変更が可能で、初期状態では「シャペロン境界」という安全にプレイできるエリアが格子で表示されますが、それに加えてカメラが撮影した外界の映像をゲーム画面に重ねることができます。

外界の映像を重ねた状態

カメラからの映像については、そのまま表示したのでは没入感を大幅に削ぐ原因となるため、初期の設定では緑色の淡い色で物体の輪郭を強調した表示になりますが、シャペロン境界と同じく、色や濃淡の表示を自由に調整できます。

それでも没入感は損なわれてしまうので、可能であれば広い空間を確保し、コントローラーを伸ばしても物や壁に当たらない程度の安全マージンを残してプレイエリアを確保することが重要になります。

外界の様子

他にも、ゴーグルにあるボタンを2回押すことで、外界の映像を全画面に表示して外の状態を把握するモードも用意されています。

コントローラー位置のカラー映像を表示

メニュー画面表示の際はコントローラー位置のカラー映像を表示してくれる機能など、完全ではないものの、外の様子が見えないVRゴーグルの欠点を可能な限り補おうという設計思想が見えてきます。

・VIVEのルームスケールVRのメリット・デメリット

ハッピー!

VIVEの最大の特徴ともいえるのがルームスケールでのプレイです。

最大で対角線5m(例:3.5m×3.5m)の空間を移動して楽しめるのですが、これにはメリットとデメリットが共存している状態です。

メリットとしては、ベースステーションとの間に障害物さえなければ、高精度でVRゴーグルとコントローラーをトラッキングすることです。

横にステップしようが、真後ろを振り向こうが、床に寝転がろうが、しっかりとトラッキングしますし、ベースステーションのトラッキングエリア内であれば設定したシャペロン境界を出てもトラッキングし続けます。

まさに、「ルームスケール」の名前のとおり部屋全体がVIVEのプレイエリアになります。

しかし、このメリットは物理的制約というデメリットも生み出し、最小限のプレイエリアを確保できない場合はセットアップの段階でルームスケールの要件を満たしていないと注意され、立位のみのプレイに制限されてしまいます。

また、シャペロン境界により警告はしてくれるものの、やはり周りが見えないためリモコンをぶつけてしまうことが多々あり、プレイエリアの確保がとても重要な要素になっています。

プレイ中では、購入前から気になっていたVRゴーグルへと繋がるケーブルが邪魔に感じます。

ルームスケールでは360度全てが利用できるため、コンテンツによってはグルグルとその場で回ることがありますが、ケーブルが太いため体に巻き付いたり、束になっている状態を踏んでしまうなど邪魔に感じます。

他にも、プレイ中はコードが常に背中に当たっているため、VRゴーグルを外しても背中にコードが当たっている感触が長時間残ります。

・VIVEから見たVRの課題

VIVEはPC関連のハードとしてはパーツ数が多すぎます。ルームスケール故に仕方ないのですが、これらのパーツをセットアップすることも含めて導入の敷居が高いように感じます。

また、導入の敷居をさらに高くしているのが価格でしょう。PCVR全般にいえることですが一般の人にはまだ手が届くような価格ではありません。

今後、PCVR関連が賑わい数多くのPCVRが売れる状態になれば価格も市場原理より下がってくるでしょうが、PCVRはあくまでもVRコンテンツを楽しむためのパーツに過ぎず、肝心のコンテンツが足りない現状、コンテンツの拡充が必要だと強く感じました。

現状ではミニゲームレベルの物ばかりで、フルプライスゲームレベルで堪能できるものが紳士向けのゲームというのでは、市場を動かす原動力としては強いことは理解しているもの、一抹の寂しさを感じるものがあります。

今後、期待できるビッグタイトルとしてFallout 4 VRやDOOMが予定されているので今後に期待しています。

凸凹した独特の形状が特徴的

ハードとしての課題は山積み状態で、視野角、DPI、重量、ケーブルの改良が急務だと感じます。

液晶のパネルについては447DPIと目視ではドットが見えないスマートフォンレベルなのですが、映像をレンズで拡大しているため、スクリーンドア効果によりドットの粒々とした状態を感じます。

これには、高DPIの液晶パネルが必要ですが、間違いなくコストの増加に繋がりますし、併せて3Dのデータも高精細化する必要もあり、GPUの要求スペックもさらに上がるため、ユーザー側の負担も上がるというジレンマも抱えています。

この影響についてはコンテンツ提供側にも及び、高精細なディスプレイに耐えるだけのモデルやデータを用意しないといけません。

現在のスペックでも3Dモデルは間近に寄って見ることができるため、モデリングが甘いとその部分が露呈してしまいます。

軽量化については、女性にプレイしてみてもらった感想で重たいという感想が一番に出てきたので、一般的に普及するためには軽量化は避けて通れないでしょう。

ワイヤレス化によりバッテリーの重量分が増加することを考えると、軽いにこしたことはなく、同時にゴーグルの薄型化もできればお願いしたいところです。

ワイヤレス化については必然といったレベルで、ともかくケーブルは存在自体が鬱陶しいの一言です。

さらに、一部でも良いので人体のモーションを取り込めるデバイスの追加も期待したいところです。

リープモーション

一応、手についてはリープモーションがあるのですが、これは完璧とは言えず、最低でも手の部分だけでも、可能であれば全身タイプのモーションセンサーのような物があると、さらなる没入感を得ることができると感じます。

・先駆者Oculusと後追いHTCの歪み

VRの先駆者といえばOculusですが、長い間開発者向けにVRゴーグルを販売してサポートしていたため、古くからVRコンテンツを開発していたメーカーやユーザーが提供するコンテンツはOculusに最適化されたコンテンツが見受けられます。

これらのコンテンツはVIVEに対応したしてもVIVEのコントローラーが利用できない、または、操作性に難があるなど不満を感じる点があるものが見受けられます。

この歪みは、先行していたOculusが突如迷走し始め、タイミング良く後発で高価にも関わらず、ルームスケールという動けるVRを体験できるHTC VIVEが登場してシェアを奪ったため、Oculus一辺倒だったPCVRはOculusとHTCとに二分されてしまいました。

そのため、コンテンツ提供側は両対応を迫られることになったのですが、資金、時間、人的リソースに乏しい個人や中小メーカーでは、Oculusでの開発を先行していた分VIVEは後回しとなっているように感じます。

Oculus Riftは付属のXbox One コントローラーで操作するため、Xbox360かXbox Oneのコントローラーを用意すれば、VIVEで使用する場合でもコントローラーの不満はほぼ解決します。

なお、Xbox One コントローラーはUSBケーブル接続タイプ以外にもワイヤレスアダプターで使用できるのですが、日本では正式に販売されておらず、販売されている並行輸入品のワイヤレスアダプターは日本の技適認証を受けていませんので要注意です。また、Xbox One用のワイヤレスアダプターはWindows10のみのサポートとなっています。

XOB360コントローラー


ワイヤレスタイプのXOB360コントローラーは専用のワイヤレスアダプターが付属していますし、Windows XP以上であれば使用が可能なため、VIVE用に購入する際はワイヤレスタイプのXOB360コントローラーをお勧めします。

・まとめ

HTCのVIVEでVRを体験した感覚は言葉でも映像でも表現することができない新しい感覚です。ともかく「凄い体験ができる」としか言いようがないほどで、「画面の向こう側の世界へ飛び出せる」という表現どおりだと体験すれば感じるはずです。

後半では、問題点や課題などを数多く指摘していますが、黎明期の商品では当然のことであり、それらがあったとしてもVR体験のメリットの前では小さなことだと感じるほど。

これからのVRに可能性を感じさせられずにはいられない製品なのは間違いありませんでした。