FARCRY4

最近、PCゲームはオンラインゲームから離れ、シングルプレイのゲームばかりをプレイしているのですが、旬を過ぎるとプレイ人口が少なくなり面白みが薄くなるオンラインゲームと違い、シングルプレイのゲームは人気が落ち着いてセールになったときに購入しても楽しめるため、早急にプレイしたいという欲求がないのであれば、セールで安くなったときが狙い目です。

初代からプレイしているFARCRYシリーズも現在では5作目を迎えていますが、前々からプレイしようと思っていたFARCRY4がセールで安く売られていたので、購入してプレイしてみることにしました。

FARCRY4は、前作の評価が良好だったFARCRYシリーズの4作目にあたりますが、どのような内容なのか、そしてゲームとして楽しめる内容なのか、ほぼネタバレ無しでレビューをしていきます。
・舞台は山岳地の小国「キラット」

ここはキラット

FARCRYシリーズといえば「景色ゲーム」といっても良いほどで、綺麗な景色を堪能しつつプレイするのが醍醐味でもあります。

今作では山岳地の小国「キラット」を舞台に物語が始まりますが、このキラットはネパールをモチーフにした宗教色の強い国家で、各地に宗教的な意匠や演出が用意されており、エキゾチックアジアといった表現が似合う独特の雰囲気の世界を探索することになります。

販売元のUbisoftは歴史や民族、宗教といった要素を掘り下げたゲームが多く、今作でもその要素が遺憾なく発揮されていると感じるほどで、実際にアジアの小国を探索している気分になります。

そんなキラットの国中では内戦が続いており、王立軍と反王政派のゲリラ「ゴールデン・パス」が至る所で争っています。本作では、このゴールデン・パスと共に内線を戦い抜いて勝利へと導いていくことが主なストーリーとなります。

・己を知らない主人公「エイジェイ・ゲール」

エイジェイ・ゲール

今作の主人公も前作に続いて争いに巻き込まれる形でストーリーが展開していきます。しかし、前作と違い主人公の「エイジェイ・ゲール」はキラット生まれ。しかも、彼が育ったアメリカからキラットへ戻ると王立軍とゴールデン・パス両陣営が主人公を特別扱いするという自体に・・・。

実は、主人公はゴールデン・パスを設立した英雄「モハン・ゲール」の息子だったのですが、訳あって幼少の頃にアメリカへ母と共に渡り、母も何も語らなかったため、自身の出身について詳しくありません。

劇中では、母の遺言に従いキラットへ帰ってきたものの、争いへと巻き込まれていき、その中で出身の秘密、何故母が主人公を連れてアメリカに移住することになったのか、父親の死の真相など、主人公の出生にまつわる謎が明らかになっていきます。

ただ、物語を強く引っ張っていく要素はあくまでもキラットでの内戦であり、劇中の現在、ゴールデン・パスを率いている「アミータ」と「サバル」の依頼を聞くことで物語は進むかたちになっています。

・「パガン・ミン」という男

クリア後にこの笑顔を見るとね・・・

FARCRY3ではカリスマ性あふれる敵が登場することで劇中の盛り上がりを演出することに成功していますが、今作も前作に劣らないカリスマ性あふれる敵が待ち構えています。

今作の敵は「パガン・ミン」という風変わりな国王で、元傭兵団のトップという異色の経歴をもっています。

実は、ゴールデン・パスが設立される前の内戦で、劣勢に立たされた王立軍を支援するため参戦した傭兵団のトップがパガン・ミンであり、王立軍が再び優勢に立つと王政を乗っ取り、今の地位を強奪することに成功しています。

狂気のセルフィ

劇中の冒頭では失敗をした部下をペンで刺し殺し、あろう事かそのペンをプレゼントしたうえ、血しぶきを浴びた状態で主人公とスマホで2ショットを撮るなど狂気を感じさせる演出が用意されていますが、意外にも主人公に対してはかなり好意的で戸惑ってしまいます。(劇中で本人も語っているがそっち系ではない)

落ち着いた物腰で気品に溢れるしゃべり方から漏れる言葉は狂気に満ちており、同時に国王という地位に飽きたのか、怠惰的な言動を発することもあるパガン・ミンは最後の最後まで主人公の敵で有り続けるため、前作のように「えっ?まだ続くの?」という展開にはなりません。

・ゲームシステムは正統進化

ベル

FARCRY4のゲームシステムは基本的にFARCRY3の正統進化で、ゲームエンジンは同じ物を使用していますが、マイナーアップデートはされているようで、グラフィックの進化や前作で不満だったゲームシステムの改善がなされています。

今作では起伏の激しい山岳地帯でストーリーが進んでいくため、円滑な移動を助けるための要素がいくつか盛り込まれています。

グラップル

劇中では「ベル」と呼ばれるジャイロコプター(小型のヘリコプター)や壁を上るための投げ縄「グラップル」が新しく用意されているほか、前作では、MODを導入するか、劇中中盤以降で無いと使用できなかったウイングスーツの使用が序盤から可能になっており、移動についてはストレスを軽減させる措置が数多く用意されています。
※前作よりも落下即死判定が厳しくなっているので移動は楽だが気が抜けない

それでも宝箱などの収集アイテムを全コンプリート(バグで取得できない宝箱1個と1地域を除く)するとなるとかなりの時間が必要で、サブクエストやミッションを全て完了して達成率100%するのに掛かった時間は約44時間となりました。

メインクエストだけのプレイで進めるのであれば、おそらく10時間も必要ないでしょう。それでも、セール価格からすれば、プレイボリュームは十分にあると感じる内容で、収集癖がある人はさらに長い時間プレイすることができるものになっています(といっても収集は途中から作業になって苦痛を伴いますが)。

・現実と理想と幻想と
 
保守派のサバル

劇中ではゴールデン・パスの「二人のリーダー」からミッションを受けて話が進んでいきます。

「船頭多くして船山登る」ということわざがあるように、組織全体の指揮を執る人は1人であることが望ましいのですが、伝統や仕来りに縛られず改革を進めようとする革新派のリーダー「アミータ」と、古き伝統を守る保守派のリーダー「サバル」とがお互いを認めずいがみ合い、ただでさえ装備も資金もままならないのに、尚更、王立軍に対する抵抗はまとまりを見せることができず、ゴールデン・パスは劣勢にたたされています。

そんな時に現れたエイジェイ・ゲールは、劣勢に立たされた現状を打開することができる重要な存在としてサバルが救出し、その関係から主人公はゴールデン・パスのメンバーとして行動することになります。

革新派のアミータ

劇中ではアミータとサバル、どちらのミッションを受けるかによって、ゴールデン・パス内への影響力が片方に集中していく訳ですが、急進的すぎる両者の最後は胸くそ悪いというほど。

歴史上多々あることとはいえ、現実の対極にあり、理想や幻想を楽しむはずのゲームの世界で生々しい人間の汚さを見せつけてくれるのは「後味が悪い」の一言です。

開発元がフランスということもあってか、アメリカ的ハッピーエンドやスッキリとしたエンドを迎えたい人向けとはいえず、「現実的にはこちらの方が正しいよね。」という現実の厳しさを突きつけられるエピローグが待っています。

私個人としては歴史上良くあることで完結していますが、歴史に興味がない人だとエピローグで「何コレ?」という感想になるかも知れません。

ちなみに、アミータは物語が進むにつれデレてきますが、サバルは逆にデレからツンツンというか冷たくなっていくので、サバルのミッションをプレイし続けると胸くそ感がもれなくアップします(その後、冷めた関係を解消すべく熱いC4の爆炎をプレゼントしたのは言うまでもない)。
 
・ここが惜しいよFARCRY4

いきなりドンパチ始める主人公

今作で特にマイナス評価が多かった点が「主人公への感情移入が難しい」という点です。

前作では仇討のため、また、恋人や友人を守るという使命感のため、不可抗力ながら敵を手にかけてしまい、正義感から戦うことを決意するのですが、今作は主人公がいきなり銃を手にしてドンパチ始めてしまいます。

なぜ、訓練を受けていない主人公が銃を簡単に扱えるのか。敵とはいえ人を撃つことに抵抗がないのは何故なのか(設定では元ギャングのため)。という疑問に対して劇中でまったく説明がないため、いきなりゲームが始まったという感覚で、プレイヤーが置き去りにされている感覚を覚えます。

また、主人公の感情表現が乏しく、前作の主人公が感情を吐露していたのに対して、今作の主人公は曖昧な言葉や表現が多く、感情の吐露も少ないため何を思っているのかよく分からないのも上記の問題に拍車をかけています。

他にも、DLCがゲームシステム上別体扱いになっているのも不満に感じます。ステータスの引継は全く無く、ストーリーを追うだけのショートゲーム扱いになっているため、折角のDLCの魅力が削がれていると感じます。

システムは前作同様

また、最近のゲーム全体に言えることですが、ゲームエンジンの使い回しをしており、システムも基本的には同じことも加わり、シリーズを通してプレイしている人は飽きが早くなりがちになるのも残念なところです。

結局、前作と同じことを数多くこなすため、マルチエンディングでありながら1回プレイした後は飽きてしまい、もう片方のエンディングは実況動画でストーリーを追うだけとなりました。

ただ、FARCRYシリーズはストーリーが1作1作で完結しているため、本作のみでも楽しめるようになっており、新規にFARCRY4をプレイするなら新鮮みがあって周回プレイも存分に楽しめると思います。
※前作キャラが出演しているがストーリー上殆ど絡んでくることはない。出演も無理矢理感が強いので出す必要があったのかと感じるほど。

また、ステルス縛りでプレイする人にとっては朗報となる、敵の軍事基地を超える要塞が新たに用意されており、真正面から突撃しようものなら返り討ちにあうほど強力な防衛力を音も無く無力化する醍醐味が用意されています。
 
・まとめ

メインディッシュはお猿さん

前作に引き続き、エキゾチックで綺麗なグラフィックが表現する映像はプレイヤーを異国へと引き込んでいきます。

FARCRYシリーズ通してのプレイとなるとマンネリを感じてしまい、飽きが速くなってしまうのは問題で、感情移入の難しさや最後のエピローグのことも考えると評価が分かれるところもあります。

しかし、FARCRYシリーズとしてではなく、一ゲームとして見た場合の完成度は高く、セール時の価格からすれば価格以上のボリュームがあるのは間違いない内容になっています。