HTC_VIVE Oculus Rift


PC専用のVRゴーグルといえば、コンシューマー向けVRゴーグルを開拓したOculus Riftか、後発ながら勢いのあるHTC Viveの二択になっています。

一見に似たような見えるVRゴーグルですが、実は黎明期だけあって仕様が大きく異なる部分もあり、価格や見た目だけで選ぶと失敗する可能性があります。

今回は、私が実際にOculus RiftとHTC Viveどちらか1つを購入するか検討するにあたって真剣に調査した結果を元に情報をまとめてみました。
・液晶パネルのスペックは同じだがドット感が少ないのはOculus Rift
 
VRゴーグルの液晶パネルは映像の質や没入感に大きく係わってくるパーツです。液晶パネルの性能が低いと、VR酔いの発生や没入感が損なわれるなどVR体験を阻害する原因となるため大切なパーツですがスペックだけで見ると両者に違いはありません。
 

比較項目

Oculus Rift / HTC Vive

 液晶パネルの解像度

 1080×1200 2枚(有機EL)
(両眼での解像度 1600×1200)

 視野角

 110度

 リフレッシュレート

 90Hz


しかし、スペックだけでは見えない部分があり、ドットが編み目のように見える「スクリーンドア効果」が少ないのはどちらかというと、僅かな差でOculus Riftが勝っているようです。

・トラッキング範囲とコントローラーはHTC Viveが有利
 
Oculus RiftとHTC Viveでは外部センサーでゴーグルの位置を検出しますが、センサー計測方法の違いからトラッキング範囲が大きく異なる点が両者の違いです。

比較項目

Oculus Rift

HTC Vive 

 
センサー

 机の上に1個置くのみ

 2mの高さに対角線になるよう2個設置

 トラッキング範囲 

 センサーの前のみ

(座り・立ち姿勢で使用)


最小2 m×1.5 m 

最大 対角5m(例 3.5m×3.5m)

(座り・立ち姿勢・移動しながら使用)
 


Oculus RiftとHTC Viveの最も大きな違いがこのトラッキング範囲で、机の前で動くことを前提としたOculus Riftに対して、HTC Viveは空間を移動しながらVR体験を楽しむこともできるため、対応したコンテンツの体験に大きな差が出てきます。

※Oculus Riftはセンサー側が前になるがHTC Viveには実空間に対して前後という概念はない。 


また、様々な操作をするために使用するコントローラーも大きく異なります。

比較項目

Oculus Rift

HTC Vive

コントローラー

 XBOX Oneコントローラー

(有線USB)専用リモコン

 SteamVRコントローラー

(無線)


Oculus Riftは専用コントローラーを発表はしているのですが発売までは至っておらず、暫定措置としてXBOX Oneコントローラーと専用リモコンを使い操作します。


海外では無線タイプのXBOX Oneコントローラーが同梱されているようですが、日本では電波法の関係で有線タイプとなっており、ただでさえ使用するケーブル類が多いVRゴーグルの周りがケーブルで鬱陶しくなりそうです。


対してHTC ViveはVRコンテンツのために専用のSteamVRコントローラーを用意しており、無線タイプのためコントローラーの使い勝手は良いように感じます。


この2つの差により、HTC Viveで楽しめるコンテンツがOculus Riftでは楽しめないということがあり、Oculus Riftの専用コントローラー(Oculus Touch)の発売が遅れていることも重なって、コンテンツ開発側の流れは自由度の高いHTC Viveに傾きかけているようです。


・セットアップはOculus Riftが簡単


VRゴーグルはセンサーの初期設定をしないと使えません。そのためのセンサーを設置することも必要で、付属品が多くなるほどセットアップにかかる時間も多くなります。


HTC Viveのセットアップは約30分となっていますが、これはベースステーションというセンサーを取付けてからの話で、身長よりも高い所に2箇所対角線上にセンサーを設置しなければならず、各センサーの電源確保も必要なことを考えるとセットアップに必要な時間はさらに増えます。


対してOculus Riftはセンサーを机の上に置いてセットアップを始めるだけなので、セットアップに必要な時間や手間はOculus Riftの方が楽になっています。


・センサー問題のあるOculus Rift ケーブルの多いHTC Vive
 

Oculus Riftで特に問題なのがUSBホストコントローラーとの相性に起因していると思われるセンサー問題です。


※HTC VIVEもUSB3.0もしくは3.1ポートを使用すると正常に認識しない場合などトラブルがあるようですが、USB2.0サポートなのでUSB2.0ポートを使えば良い。

この問題が発生するとVRゴーグルのセンサーが正常に動作しないもしくは認識しないようで、Oculus Riftでは対応したUSBホストコントローラーを使うように注意があります。


USBのポートが足りない場合や未対応の場合はFresco Logic FL1100EXチップセット登載のIFカードを勧めていますが、このUSBホストコントローラーを登載した製品の評価を見るに、完成度には疑問を持つところがあります(他の機器との認識トラブル)。


この手の問題はいったん填ると解決に時間が取られることも多いので、自身でトラブルを解決する必要があることが多い黎明期の商品だけに、可能な限りトラブルは避けたいところです。
※他のUSB3.0ホストコントローラーのUSBポートに繋ぐと戻る場合があるとのこと。 


HTC Viveについては、付属のリンクボックスに映像を入力する際に使用するHDMIケーブルが変換タイプや変換アダプタを介した状態だと映像が出ないことがあるようです。


これについては、ケーブルをHDMIケーブルにしてグラフィックボードのHDMI端子から出力を取れば良いだけなので大きな問題には感じません。

※DisplayPortも使えるが安定性はHDMIが高い模様


HTC Viveの最大の問題点はVRゴーグルと接続するケーブルの多さです。映像・音声を扱うHDMI、センサー情報の送受信するUSB、電源供給のためのケーブルがリンクボックスから伸びており、このケーブルの束を引きずりながらプレイすることになります。


HTC Viveはゴーグルにカメラによる警告機能がありますが、それでもゲームのプレイ中にケーブルを踏んで転んでしまわないか不安です。


また、HTC Viveは使用する機器が多い分、それらに使用する電源や充電器、ケーブルが多いのも目立ちます。


・求められるPC性能はほぼ同じ
 

各VRゴーグルのPC要求性能はほとんど変わりません。 


要求性能

Oculus Rift

HTC Vive

 GPU

NVIDIA GeForce GTX 970

AMD Radeon R9 290以上

NVIDIA GeForce GTX 970

AMD Radeon R9 290以上

 CPU

Intel Core i5-4590以上

Intel Core i5-4590

AMD FX 8350以上

 RAM

8 GB以上

4GB以上

 映像出力

HDMI 1.3以上

HDMI 1.4又は

DisplayPort 1.2以上

 USBポート

USB 3.0以上3ポートと
USB 2.0以上1ポート

USB 2.0以上 1ポート

 OS

Windows 7 SP1 64bit以上

※メモリの関係で32bit不可

Windows 7 SP1

Windows 8.1

Windows 10


どちらも3Dグラフィックが激しく動くようなゲームでも快適にプレイできるスペックですが、これはあくまでもVR体験を経験できる標準的なラインです。さらに快適性を求めるならGPUをより高性能な物にする必要があります。

また、メモリが4GBではPCゲームすら耐えられないことが多いので、今後のことを考えると最低でも8GB、できれば16GB以上は欲しいところです。

4GBを超えるメモリを扱うためには64bitOSが必須なので、VRマシンとして新規にPCを購入する場合は64bit版を選択すると良いでしょう。

・対応コンテンツはHTC Viveが有利

平成28年9月9日現在、Steamでの対応コンテンツはOculus Riftが231に対してHTC Viveが565と大きな差があります。

これはコントローラーの性能差とトラッキング範囲の差による物でしょう。

ただし、注意してもらいたいのが「対応=プレイ可能」ではないということです。

HTC Viveはプレイ空間を大きく確保することを求められるコンテンツもあり、物理的な制約によりプレイできないこともあります。

移動用の空間を確保できるのかという点については、日本の住宅事情では厳しいものがあり、マンションだとプレイ空間の確保以外にも階下の住人にも気を使う必要があるため、実質的にプレイできるコンテンツはユーザー環境に左右されてしまいます。

また、数が合っても優秀なタイトルが無ければミニゲームで遊ぶ程度の体験で終わってしまいます。

これについては、残念ながらどちらとも長時間プレイできるビックタイトルは用意されていません。現状はミニゲーム的な物が多く、コンテンツの拡充についてはまだまだ時間がかかりそうです。

また、VRゴーグルだからといって完全に互換性があるわけでは無く、専用タイトルでは指定されたVRゴーグル以外は認識できない場合もあるので、これだけは絶対にプレイしたいと思うタイトルがある場合はサポートするVRゴーグルを良く確認しておきましょう。

・価格はOculus Riftが有利だが購入やサポート体制はHTC Viveが圧勝

両VRゴーグルは一般的なPCパーツからすると高価ですが、どちらが安価かというとOculus Riftになります。

比較項目

Oculus Rift

HTC Vive

 国内販売価格(送料込)

 94,600円

 110,584円


だだし、コントローラー2個とセンサー1個の差で生まれるVR体験の差を価格の差で埋められるのかといわれると、Oculus Riftがいくら安価とはいえ厳しいように感じます。

サポートについては国内に拠点のあるHTC Viveが圧倒です。

Oculusのサポートページは日本語になっていますし、日本語で連絡を取ることは可能ですが、HTCは日本に拠点があり、10年前から日本でスマートフォン事業を展開している実績があるだけに、日本でのサポートはHTC Viveに軍配が上がります。

日本での販売店舗が多いのも拠点があるHTC Viveが有利で、公式ページから購入する意外にも、ドスパラ・ツクモ・ユニットコムの各ネットショップ、一部の店舗で購入することができます。店舗によっては実機でVR体験もできるとのことなので、実際にVR体験をしてからその場で購入も可能です。

なお、両VRゴーグル共に、並行輸入品、転売品はサポート対象外となっています。Amazonやオークションで並行輸入品や転売品と見られるものが出品されていますが、リスクがあることを理解しておかなければいけません。

・結局どちらを買ったのか

最初はOculus Riftを購入しようと思っていましたが、調べていくごとにHTC Viveが優れていると感じる部分が多かったためHTC Viveを発注してみました。

評価の分かれ目となったのは、トラブルが起きたときのサポート体制がしっかりしている点、専用コントローラーが用意されている点、移動しながら使える点、入手性が優れている点でした。

これらの点を考えると、いくらOculus RiftがHTC Viveよりも安価とはいえ、買った後のことを考えるとOculus Riftは手が出しにくいと感じます。

ということで、HTC Viveが手元に届き次第レビューをしていきたいと思います。