AG03

最近マイク関連の動画を作成しようと思い、久しぶりにDTM関連の機材を調べていましたが、YAMAHAから気になるオーディオインターフェイスが発売されていたため買ってみました。

この、YAMAHAのウェブキャスティングミキサーAG03は、最近、見かけることが多くなった実況などの配信や、宅レコといった作業に最適化されたオーディオインターフェイスです。
私は動画にアフレコをしている関係で、既にDELTA1010というAG03よりもグレードの高いオーディオインターフェイスを持っていますが、AG03を導入したのには訳があります。

DELTA1010

DELTA1010はマイクプリアンプが搭載されておらず、マイクを直接接続できないことや、機械自体が古くいつ故障する分からない件、接続がPCIで、これから益々対応しないマザーボードが増えていくことが予想されるため、保険の意味も込めて購入しています。

他にも、マイクプリアンプのART / TUBE MP STUDIO V3とDELTA1010の組み合わせや、AG03よりもワンランク上のオーディオインターフェイスRoland UR-55も考えましたが、DTMの機材としては比較的安価なので、まずはAG03で試してみようと思い購入を決定しました。


初めてDTM関連の機械に触るという人向け

最近では、ゲームをプレイしながら実況の声を乗せた「実況動画」。音楽に合わせて楽器を弾いた「弾いてみた」や、「歌ってみた」といった動画をよく見かけるようになりました。

AG03の位置づけは、まさにこれをやってみたいという人向けの入門機です。

DTM入門者向け

DTMの機材は高価なものが多く、また、規格や接続方式が一般的なユーザーが使っている民生品(スマートフォンやポータブルオーディオ、PC等に接続するタイプ)とは異なっています。

そのため、実況動画を初めてみたいけど何を使って良いのか分からない。どうやって接続するの?という疑問が最初に出てくるはずです。

その点、AG03は入門者向けに作られており、ミキサーのパネルには分かりやすいように機材のアイコンが表示してあり、何処に何を接続したらいいのか視覚的に理解できるようになっています。

また、公式の動画では懇切丁寧に接続の方法を説明しており、初めてDTMの機材に触れる人でも使えるようにメーカーがサポートしてくれるなど、YAMAHAの本気度が伺えます。

Cubase LE AI Elements 8

もちろん、AG03にはDAWソフトのCUBASE AI 8が付属しているので、PC用の音楽ソフトを別途購入する必要はありません。
※DAW 音楽製作用の統合ソフト 録音、編集、ミキシング等、音楽を作成するため必須ツールが詰まっている。

DAWのパラメーターは専門用語のうえ、操作の自由度が高いこともあって、最初は操作に戸惑うことが多いと思いますが、DTMでは有名なDAWのライト版なので、慣れてしまえば一通りのことはできます。


ミキサーでもありオーディオインターフェイスでもある

AG03の見た目はミキサーなのですが、ミキサー機能にUSBオーディオインターフェイスが付いているため、どちらかといわれると、どちらとも言えないのですが、最近はこの手の製品をUSBミキサーと読んでいるようです。

どちらとも言えない、といったのには訳があり、実はミキサーとして単体で動作することも可能だからです。
※電源供給必須
AG03全体
ですからAG03を使えば、ミキサーとオーディオインターフェイスを別々に購入する必要がありません。

もちろん、AG03の場合、入力チャンネルが少ないという不満が出てくることもあるかもしれませんが、そのような人向けには上位機種としてAG06が用意されています。


手持ちの資産がつかえる

AG03の強みは手持ちの資産が使えることです。

DTM用の機材というと、何でも接続できると勘違いしている人もいるかもしれませんが、実はDTM用の機材は業界向けの機材を接続することを前提に作っているため、一般ユーザー向けのものは、そのままだと接続できないものが多いのです。

民生品が使える

その点、AG03は入門者にも優しい設計で、PCに接続して使えるヘッドフォン・イヤフォン、ヘッドセット、マイクがそのまま使えるようになっています。
※スマートフォン・タブレット付属の4極コネクタのイヤフォンマイクやヘッドセットはマイクとイヤフォン(ヘッドフォン)を同時使用できない。その場合はST35-SM35M等で変換して接続して使うと良い。

ミニステレオフォン形式のマイク入力、ライン入力、ヘッドフォン出力がついているので、スマホを接続して音楽をBGMとして混ぜたり、PCに接続するヘッドセット(ミニステレオフォン形式のみ接続可)を使うこともできます。
 
これで大丈夫かな

もちろん、手持ちの資産が使えることは素晴らしいことなのですが、せっかくのDTM用機材ですので、声を綺麗に録ろうと思うのであれば、マイクについては少し良いものを用意することをおすすめします。

私がアフレコで使用しているShure SM58は業界定番だけあっておすすめです。ちなみに、業務用のマイクにはケーブルが付いていないので、XLRオス-XLRメスケーブル、あると便利なマイクスタンドとポップガードも一緒にどうぞ。


エフェクター搭載

AG03にはエフェクターが搭載されており、声には必須のコンプレッサーとBGMとミックスするときに声が埋もれないように調整ができるEQのセット、声に広がりが出てくるリバーブ、さらにはギターアンプシミュレーターまでも搭載しています。

AG DSP Controller

このエフェクト効果は、ボタンを押すだけで効果のON/OFFができるだけでなく、PCと接続してAG DSP Controllerを使えばパラメーターを調整ができるという本格的な作りになっています。
※ギターアンプシミュレーターはAG03単体ではON/OFFできない。
 

エフェクター搭載

アフレコの声にはコンプレッサーをいつもかけていますし、BGMによっては声と被る周波数帯の音量が大きく、ミックスすると声がBGMに埋もれて聞き取りにくいことがあるのでEQで調整することもありますが、これらのエフェクトが単体で、しかも、ボタンを押すだけで使えるのは便利だと感じます。


純粋にPCのみで音を作るDTMには向かない

最近のボーカロイド流行によりDTMをやってみたいという人も増えてきているのではないでしょうか。

ボーカロイド関連の音楽については、PCのDAWというソフトで全ての音を作り上げて完成させているものもあり、自分の声や、楽器を弾いた音を取り込んで使う必要がない場合、AG03を含め卓上ミキサーが必要になることはありません。

DTMでAG03が必要になってくる人は、ボーカルを自分でやってみたい、ギターやベース、シンセサイザー等が弾けるので、その音を取り込んで使いたいという人です。

各パートを個別に録り、DAWで編集して1曲作りあげたり、ギターの引き語りをミックスして録るなど、宅録ユーザーにはとても便利な機材といえます。


ですから、純粋にPCのみで音を作るDTMであれば、純粋なオーディオインターフェイスを購入すべきでしょう。一般的に、同程度のクラスであれば使わないミキサー部分ほど安価になっていますし、同じ価格であれば良い部品を使っているため音質が良くなっています。
※Steinberg UR12(中身はYAMAHA製とのこと)Roland UA-22等をどうぞ。


単体でもiPadでも

AG03については外出先での使用も想定してあり、モバイルバッテリーで電源供給をしてやればミキサーとして単体で使用できます。

iPadと連携

それだけではなく、iPad用のオーディオインターフェイスとしても機能するため、屋外やバンド仲間の部屋などでも音楽作成に取組むことができます。
※iPadとの接続はCameraConnectionKitが必要
※モバイルバッテリーなどで電源供給必須

もちろん、本格的に使うのであれば、iPad向けのDAWと連携させるのが前提です。AG03に付属しているCUBASEシリーズにはiPad版が用意されているので、操作の慣れなどのことを考えるとCUBASEが使いやすいと思います。


実際に使ってみて

今までのアフレコ環境は業界定番マイクShure SM58、激安アナログミキサーBEHRINGER XENYX 802、骨董品だがガチのDAW向けオーディオインターフェイス DELTA 1010という凸凹構成でしたが、AG03によりXENYX 802とDELTA 1010を使用せずともPCに声を取り込むことができます。

音の輪郭や質感といった細部の音質を無視すれば(そもそも定価10万円クラスのオーディオインターフェイスと比較するのが間違い)AG03で十分に事足りますし、小さく机の上に置いていても邪魔にならないのは気に入っています。

ただし、入力端子については排他使用の箇所があり、ヘッドセット端子を使用時は1ch(XLR/TRSコンボコネクタのマイク入力)と右上ヘッドフォン用のフォーン端子が使用できなくなります。

XLR


私の使いかたでは、SM58をXLRで1chに接続して使うだけなので困ることはありませんが、ヘッドセットを使いながら別にマイクが使いたいという場合はAG06をおすすめします。

音の雰囲気については、YAHAMAの音は高音が効いた音と良くいわれているようですが、確かにAG03を経由しDELTA 1010とAG03で同時に録音したアフレコ音声を聞くと、AG03は高音の効いた固い音質だと感じます。

固い音質のナレーションだと相手に緊張感を与えることになると思いますので、相手に緊張感を与えないように、高音をAG03搭載のEQで気持ち抑えてやると少し柔らかくなると思います。

逆に、聞く側に緊張感を与えたいのであれば、あえてそのままというのも良いかもしれません。

スライダーはマイク入力と相性が良い

ノイズについてはマイクが拾うノイズ(PCの稼動音やエアコンの音等)以外に変なノイズが入ることは無く、外付けのオーディオインターフェイスのメリットが発揮されています。

しかも、DELTA 1010よりもマイクが拾うノイズが少なく、後々のノイズ処理についてはそれほど気を使わなくても良くなるのは嬉しいところ。

生配信では、アフレコや実況のように後から音声を加工することができないため、ノイズが少ないメリットが活きてくると思います。


まとめ

実際に使ってみた感想としては、多機能で実用十分な音質、しかも扱いやすいとあって、まさに、インターネット配信時代を捉えたオーディオインターフェイスといえる完成度になっていると感じました。

なお、AG03にはVOCALOID初音ミクV3の体験版と優待販売権が付いた、特別外装のAG03-MIKUも用意されています。

体験版とはいえ、必要なものはセットにしてあるので、DTMをやったことがないけど初音ミクを使ってみたいという人向けにお勧めの構成になっています。