NY2.0

旬を過ぎればあっという間に価値の無くなるマルチプレイゲームと違い、たとえ価格が安くなっても中身のボリュームは変わらないのがシングルプレイゲームの良いところ。そんなシングルプレイゲームでも一際光るCRYSISシリーズの三作目CRYSIS 3を今回は取り上げてみました。

CRYSIS 3の発売は2013年。今となってはダウンロード版が2,500円(セール時は2,000円や半額も)というリーズナブルな価格になっているので、ここらが買い時かと思いAmazonからダウンロード版を購入してみました。

スーツを脱がされたサイコ

今回で三作目となるため、話の内容自体はシリーズ初期からプレイしている人には言っている意味が理解できるのですが、前のシリーズをやっていない場合は話が飲み込みにくい箇所がいくつかあります。できればCRYSIS1作目からプレイすることをお勧めしたいのですが、ざっとおさらいを混んで説明すると。


CRYSIS

2008年に経済改革が成功して発展した北朝鮮が2020年突如としてフィリピン海のリンシャン島を占拠。島内の住民を強制退去させ、そこにいたアメリカの考古学チームを拘束したのを発端に始まる。アメリカ特殊部隊ラプターチームが救出に投入され、このチームは最新のナノテクノロジーにより開発されたナノスーツを装備しており、その圧倒的能力で適地深くへと潜入していく。

しかし、チームの隊長であるプロフェットにはアメリカの考古学チーム救出以外に密命を帯びており、不審に思ったチームのサイコと時折衝突。やがて島の深くへ潜り込むと、実は考古学チームが調査していたのはエイリアンの宇宙船で、北朝鮮もそれを狙って行動したことが判明しチームの知るところに。その後、両者の衝突とナノスーツ(実はセフの技術を使ったもの)に反応して眠っていたエイリアン「セフ」が一気に解放され、島は氷の世界へと様変わり、今度はセフとの戦いが始まる。

なすすべ無く空母へと戻った矢先、米軍は事態の重さを考えて核攻撃を決定。しかし、核攻撃は逆効果でセフに力を与えてしまい、ついにセフの攻勢が始まる。最後はノーマッド(主人公)活躍によりセフの攻勢は止められ最悪の事態は回避された。

その後CRYSIS 2までの出来事として、世界各地で天候などの異変が起きていた。ニューヨークでは海面上昇に耐えるため巨大なローソン防波堤が建設された。


CRYSIS 2

リンシャン島の件から3年後、ニューヨークのマンハッタン島で突如として異変が起きた。人が溶けていく謎のウイルス、マンハッタンウイルスが蔓延した。原因も分からず対応のすべもなくなったため、感染拡大を防ぐために残った住人は治安維持の派遣されたPMC「セル」に殺されていく。いっこうに被害が収まらない気配とセルの横暴から米軍が事態の回復も計るため投入された。しかし、突如敵の攻撃を受ける。それは3年前リンシャン島で出会ったエイリアン「セフ」だった。

セフとの戦いで何かを感じていたプロフェットは、この事態に研究所を抜け出し独自に行動していた。しかし、運悪くマンハッタンウイルスに感染。スーツが乗っ取られることを危惧したプロフェットはナノスーツを瀕死のアルカトラズへ託して自害。

治安維持についているセルは今回のウイルスの原因がプロフェットだと考えており、彼を攻撃するように指示を受けている。ナノスーツを着けて現われたアルカトラズをプロフェットと思い込み攻撃を開始。プロフェットの相棒グールドの導きでなんとか窮地は切り抜けたものの、セフが攻勢へと出始め事態はセフとの戦いへと一転。

そんななか、ナノスーツの開発者ハーグリーブによりセフの攻勢を防ぐ手立てを教えてもらいつつ、彼よりナノスーツやセフのテクノロジーについて説明をうけることになる。前作で謎だった部分が次第に判明していく。

進化したナノスーツの機能よりマンハッタンウイルスの被害は食い止められ、セフの攻勢は失敗へと終わる。そしてナノスーツの深層プロトコルが完全に動き出し、ナノスーツに取り込まれたプロフェットの意志はアルカトラズを取り込み、彼は一言語り出す。「皆は俺をこう呼ぶ、プロフェットと。」

おはようプロフェット

そして今作CRYSIS 3ではシリーズ皆勤賞のローレンス・バーンズことプロフェットが主人公。時代はCRYSIS 2から24年後の2047年とかなり時代が経過しているのですが、その間の空白期間についてはストーリー中の資料で知ることとなります。

どうやらセフはマンハッタン島の出来事以来、各地で散発的に攻撃を繰り返していたものの人類は駆逐に成功。プロフェット率いるナノスーツ部隊も別の意志で各地で攻撃に参加。同時に戦力の空白を埋めるようにセルが規模を拡大し、気づけばセルが世界を我が物にできる規模までに拡大。

ナノスーツの技術が欲しかったセルはナノスーツの使用者を次々と捕獲し、プロフェットと行動を共にしていたサイコと共に捕らえられ、プロフェットは凍結。そして、そこから目覚めるところから今作のストーリーが始まります。

ジャングルへようこそ

今作の舞台は前回同様マンハッタン島ですが、前作でのセフの攻撃により街は廃墟と化したままの状態となっています。さらにはセフの技術を外部へと漏らさないように作られた巨大なドーム リバティドームで隔離されており、このドームに囲まれた世界が今作での舞台です。

廃墟と自然の組合わせ

都市の屋内外、廃墟、自然の残るこの特殊な舞台は今までのCRYSISシリーズの良いところを取ったともいわれていますが、環境に合わせた戦闘スタイルの変化により飽きのこない環境が構築されています。

廃墟内での戦闘

生い茂る草木が味方になることもあれば敵になることもあったり、ビルの高低差を使った戦闘なども楽しめるようになっています。プレイスタイルを変えていけば同じ環境でも様々な戦い方ができるので周回プレイも楽しさが増す要因となっています。

NY2.0

この廃墟と自然の組み合わせ、どこかで見たことがあるようなと思ったら映画アイ・アム・レジェンドの舞台にそっくりです。アイ・アム・レジェンドでは冒頭でフォードGT500が素晴らしいエグゾーストノートを出しながら走っているシーンが記憶に残っているのですが、あのときの鹿を狩っているシーンはまさにリバティドームと重なります。

この体験したことのない舞台でのプレイは、前作および初代を楽しんでいても新鮮に感じると思います。

プルトンハイドロダム

前作ではCall of Duty 4の大ヒットの影響を受けたのか、一歩道系FPSに方向性を切り替え、初代のオープンワールド系に近い広大な戦場で自由に目的地までの進行ルートを決められた楽しみがなくなったと嘆く声もありましたが。今作では初代ほど大きくはありませんが、中盤からは大きめの戦場が気持ち用意されています。

戦闘するも回避するも自由、突然のサブミッション発生など初代の要素が若干ではありますが感じられます。

変わったこともあれば変わらぬところありで、武器のカスタマイズは当然、前作から導入された戦術バイザーやナノスーツの強化も今作では健在です。
 
俺も気にいらない

武器については前作からほとんど変更がないので目新しさを感じません。ストーリー上では20年以上も経過しているのに同じ武器を使っているということに違和感を感じます。ただ、今作ではエイリアンの武器を使えるようになっているのと、売りにしていたハイテクな弓が加わって新しいといえば新しいのかもしれませんが、個人的には使い回し感が否めませんでした。

戦術バイザー

戦術バイザーでは操作に改良が加えられ、前作よりも使い勝手がよくなっています。特にスニーキングプレイでは重宝するので戦いやすくなったといえるかもしれません。

ナノスーツの強化

ナノスーツの強化も今作では健在。スキルをアンロックするためには各所に隠されているアップグレードモジュールが必要になります。

アップグレードモジュールは戦術バイザーで確認することができるので発見はそれほど難しくはありません。しかし、1週で全てアンロックはできないため全てのスキルをアンロックするには周回プレイは必須となります。

また、スキルを最大値にしたり、エアストンプなど特別な機能を解放するためにはスキルの条件を満たす必要があり、スキル目当てのプレイとなると縛りプレイになりがちで自由なプレイが楽しません。3週目当たりからほぼ全てのスキルが使えるようになっているので本当の楽しみ方は3周目からともいえます。

楽しくないゲームであれば周回プレイなんてごめんこうむるところですが、CRYSIS 3は楽しいのでこのレビューを書く前にすでに4週目のプレイを楽しんでいたところです。

ハッキング

新要素としてはハッキングが新しく追加され、補給物資コンテナやタレット・地雷のハッキングなどができるようになっています。タレットや地雷はハッキングにより敵に攻撃をするので攪乱に効果的で、よりハードなレベルでプレイする際は有効な一手となります。

戦場は地獄だぜ

敵のAIは普通といったところで。人間なら遮蔽物に隠れて攻撃、セフなら遮蔽物に隠れるものの攻撃しながら接近してくるという単調な動きです。

特にセフの場合、見つかった後にクローク状態となると最後に見たところへ直ぐに近寄ってくるため一掃しやすい傾向にあり、慣れると物足りなさを感じる原因になるかもしれません。最初のうちは低レベルでプレイして周回するうちにレベルを上げてたのしむのが正解かと思います。

ダム壊れる

そしてシングルプレイにおける最大で重要な要素であるシナリオについてはハリウッド張りの超展開ストーリーで、この手の展開が大好きな私としては面白いの一言です。

この人19世紀の人なんだが・・・

ゲームでは個性の出しにくい要素でもあるキャラクター達は生き生きとしており、相変わらず仲が悪そうで実は仲のよいサイコや、今回新たに登場するキャラクター達の個性がしっかりと煮詰められており、各々がストーリーを盛り上げてくれます。

セフの意志と力

また、各所に散らばる資料を集めていくと今作までの謎が解けていく要素がストーリーの奥の深さを演出しており、前作の後、最後までサイコが一緒に戦ってくれたことなどが資料から分かります。シリーズ通して全作プレイしていることもあるからか、周回プレイで資料を集め眺めているだけでも意外と楽しめる内容となっています。

車両戦闘

ただ、残念なのが吹き替え台詞が合っていない箇所が一部見受けられました。これは内容が合っていないのではなく、場の雰囲気に合っていないトーン、また前の台詞と明らかにつながりがおかしいトーンになっているというもので、ローカライズにはあまり力は入れられていないのかもしれません。しかし、吹き替えを担当した声優にについてはしっかりと選んできたと感じるところで、声については抵抗なく受け入れられました。

残念なところとしてはもう一つ、初代CRYSISの方向性を大幅に変更したCRYSIS 2では、同時にシナリオライターも変更となったようです。そして今作CRYSIS 3では再び初代のシナリオライターへと戻ったため、整合性が取れない点が見受けられました。

今作ではナノスーツは人体と癒着しているため簡単に脱ぐことはできないという設定でしたが、前作では冒頭でプロフェット自身が脱いでおり、つじつまがあわなくなっています。この点以外では特に目立った不整合性はなかったですが、ゲームの売りであるナノスーツだけに、この点が目立ちすぎるような気がします。

ローレンス・バーンズ

最後にCRYSIS 3の最も魅力的なところは何かと問われたら、私は「プロフェット」自身と答えます。彼はリンシャン島の件でセフと濃密な接触をしており、前作ではアルカトラズの体を最終的に乗っ取ったあげく、セフの細胞をナノスーツが吸収して進化した、いわば人ならざる者になっているわけで、ストーリーの途中でその件に触れられることになります。

そのスーツの下は・・・

彼はローレンス・バーンズなのか、プロフェットなのか、それともアルカトラズなのか。実はすでに人ではなくセフにとりこまれているのかも・・・。人々は疑いのまなざしを向けることになるのですが、彼は迷うことなく「プロフェット」であり続けます。

良いバディだ

その強い意志は彼が「プロフェット」である証拠であり、サイコだけはその点を認めておりプロフェットをまったく疑いません。しかも、最後の最後でサイコがデレるという展開に力強い友情を感じざるを得ませんでした(口は悪いが良いやつなんですよサイコは・・・)。

勝利の代償

とんでもないことなのですが、ストーリー全体における「プロフェット自身の精神的な力強さ」はプレイヤー自身に勇気を与えてくれる要素があり、冒頭で絶望的な状態に追い込まれていたのですが、それでも揺るぎない意志で戦い続けるプロフェットを見ていると勇気と自信をもらったと感じ、最後は感動すら覚えました。隠された資料を読み、周回プレイでシナリオが分かるようになってくると、私のように感じる人もいるかもしれません。

こういう要素を力強く感じるのはキャラクター達の個性の確立、シナリオの完成度など複合的な要素が絡み合い完成されていくものですが、このレベルとなると相当練り込まれて作られたものだと3周目プレイ後に感じるところでした。

Crysis3

今までゲームをプレイした後、やり遂げた感ならいくらでも感じたのですが、まさかここまで心を揺さぶられ感動し、勇気と自信を与えられるとは思いもしませんでした。CRYSIS 3・・奥が深いです。

現在、CRYSIS 3はAmazonのダウンロード版で2,500円で発売されています。ボリュームは6~8時間と少し物足りないと感じる人はいるかもしれませんが、周回プレイ前提、そして完成度の高さからいえば十分お買い得価格です。CRYSISシリーズをプレイしていない人は是非とも初代からプレイすることをお勧めします。