PLCアダプターPL-05H


無線LANには死角と似たようなものがあり、それほど離れていなくとも通信できない部屋があったりするものです。

私の家にも死角があり。無線LAN中継器を導入してデスクトップPCはインターネットに接続できる環境になったのですが、タブレットPCでは電波が弱すぎて通信できず、その部屋ではただの板と化してしまいます。

そんな無線LANの電波が届かない部屋でもLANに繋げることができるのが、屋内電線をLANケーブルの代わりに使える通信機、PLCです。

今回はバッファローPL-05H/2を使い、使い方や特徴、そして無線LANの死角を無くしていくまでを紹介していきます。

●ブレーカーの相による速度変化

ブレーカーの相

PCLではブレーカーの同相・異相により速度が変化します。

L1相からL2相へ(逆でも同じ)PLC機器の接続がまたぐ場合は異相となり、速度が低下する原因となります。

一番速度が出る条件から、同じブレーカー内>同相のブレーカー間>違相のブレーカー間となっていますので、配電盤のブレーカーを見て、極力同相のブレーカー間になるように設置をすることが望ましいです。


●ノイズ等の環境による速度低下

電力線を通信線に変えてしまうことで、LANケーブルを配線工事するよりはるかに安価に有線LANネットワークを構築できるPLCですが、電力線を使っているだけに出てくるPLC特有の問題もあります。

それがノイズです。電力線すなわちコンセントに繋ぐものはさまざまですが、特にモーター類はノイズが混じりやすいため、通信速度に大きく影響してきます。

ドライヤーや掃除機、コンプレッサータイプの除湿器などモーターを使用している機器をPLC機器の近くのコンセントで使うとノイズで通信速度が低下します。

他にも電子レンジやACアダプターの影響も受けやすいため、設置するコンセントの回りでこれらの機器は使わないようにするのがベストでしょう。


●乱立する規格

PLCにはメーカを超えて互換性がありますが、同じ通信方式を採用したもの同士でないとペアリングができません。

国内ではパナソニックやIO-DATAが採用しているHD-PLCと、バッファローやシャープが採用しているHomePlug AV(旧製品にはUPAもあり)がありますが、HD-PLCとHomePlug AVはペアリングすることはできません。

また、HD-PLCとHomePlug AVを屋内で混在させるとお互いがノイズ源となるため、家庭内でPLCを仕様する場合は規格を統一しておくことがトラブル回避に繋がります。


●PL-05H/2レビュー

内容物一覧

内容物一覧

PL-05H×2個(設定済み)
ギガビットLANケーブル×2本
セットアップカード×2枚
ジェルシート×2
説明書
CD-ROM(設定ツール・電子マニュアル)

PL-05H

PL-05H/2にはPL-05Hは2個セットされています。

本体は手のひらに納まるものの、コンセントに挿しっぱなしにするには思っていたよりも厚みがあります。

PL-05H横

PL-05Hの外装は非常にシンプルで、リセットボタンとペアリングに使うPLCボタンのみと非常にシンプルです。

PL-05H裏

PL-05H背面にはMACアドレスと本体のパスワードが記載されています。

SetupCard

このままだとPCから設定する際にパスワードを見ることができないため、1個づつセットアップカードが付属しています。

とはいえ、PL-05Hの操作については本体のPLCボタンで十分に事足ります。

PL-05H上

PL-05Hの上部には放熱用のスリットが設けられています。発熱の関係もあるので上下逆さまに付けたり、横にしてコンセントに付けるのは避けたほうが無難でしょう。

PL-05H下

PL-05H下部にはLANケーブルの差し込み口が1つ用意されています。

ギガビットケーブル

付属のLANケーブルはギガビット対応です。

粘着パッド

PL-05H/2には粘着パッドが同梱されていますが、これはPL-05Hのコンセント差し込みプラグの左右に取付けて、自重で勝手にコンセントから外れるのを防ぐもののようです。

178g

PL-05Hの重量は178gとそれほど重くないのですが、コンセント内部にあるプラグを固定するテンションがへたっているものに差込むと、自重で保持できなくなりPL-05Hが落ちるのかもしれません。

場合によってはこれを切って貼る必要がある

私の環境では粘着パッドを使用せずともしっかりと保持していましたので、環境によりけりといったところでしょうか。

コンセント差し込み推奨

設置に関しては特に難しい設定もありません。PL-05H/2はPL-05H同士がすでにペアリング済みのため、PL-05HにLANケーブルを差込んだ後、コンセントに差込むだけで直ぐに使用できます。

また、PL-05Hには親機子機の概念がありませんので、片方をモデムもしくはルーターに接続し、もう片方を接続したいパソコンや無線LANルーターの近くのコンセントに差込むだけです。

ステータスランプ

起動してからPL-05H同士で接続するまでの時間は短く、コンセントに差込んで最短で10秒もかかりません。

正常に接続が完了すると、右側の家にコンセントマークのランプが点灯します。このランプが付かない場合は環境が悪いので通信環境を改善する必要があります。

コンセントに直挿しする、同じコンセントにACアダプターを付けない、PL-05H同士が同相のコンセントになるように使用するコンセントを変えるなどすれば接続できるようになるかもしれません。

ちなみに画像のようにOAタップや延長コードに接続して使用することは推奨されていません

消費電力は通信時で4W

この状態で消費電力を計ってみたのですが、通信時で4W、アイドル時は3Wという結果でした。

24時間繋いで使うモノだけでに省エネなのは嬉しいところです。

ベンチマークテスト

使用できる環境を整えベンチマークテストをしてみました。

計測はNAS(DS212)のデータをDell Latitude E5520で読み書きする際の速度で比較します。

ギガビットLANケーブル直差し

最初は比較としてギガビットLANケーブルを直接Dell Latitude E5520に差込んで計測しました。

受信は最大477.5Mbps、送信は最大355.6Mbpsという結果でした。PL-05Hの最大転送速度(理論値)は240Mbpsなので計測するには十分な環境であることを確認できました。

OAタップ

PL-05H同士をOAタップ内で通信させた場合では、受信が最大90.3Mbps、送信は最大89.5Mbpsという結果でした。

PLCはADSLと同じく減衰が激しく、機器同士の距離が短いほど高速になるのですがOAタップ内でこの速度です。

OAタップ内での通信レベル

このときの通信環境を付属のツールで確認してみたのですが、リンクレートは200Mbpsと実測の倍以上の数値が表示されていました。

どうやら無線LANと同じく、リンクレートと実効レートの差は約半分になるようです。

次にコンセントにPL-05Hを差し込み計測を続けました。

キッチン受信

キッチンは直線距離で約15m離れた3部屋隣ですが、ブレーカーが異相ということもあって速度は受信が最大3.8Mbps、送信は最大2.7Mbpsと芳しくありません。

リビング受信

同じく異相の隣部屋であるリビングでは、直線距離約12mのコンセントを使用して計測てみました。こちらも受信が最大5.1Mbps、送信は最大3.9Mbpsと大差がありません。

客間受信

同じ距離にある客間では同相のためか受信が最大17.1Mbps、送信は最大13.8Mbpsと異相に比べ倍以上の速度が出ています。

この速度なら、インターネットへの接続以外にも実用性が見えてくる速度です。

速度比較グラフ

速度については減衰や環境によるところが大きく、実際に取付けてみないと分らないというのが現状のようです。

高速な通信速度を求めるのであれば、屋内工事でギガビットのLANケーブルを配線してもらうのが確実ですが、インターネットの接続に使うのであれば、同相の環境にしておけば十分に使える速度が出る結果となりました。


●PL-05Hと無線LANルーターでタブレットPCやスマートフォンを繋いでみる

PL-05Hに無線LANルーターと組合わせて使う

PL-05Hは有線LANで接続するタイプで、無線LANで接続するタブレットPCやスマートフォンでは使えません。

しかし、PL-05Hと無線LANルーターをLANケーブルで接続することで、無線LANで接続することができます。

ちょうど手元に中継器として使用していたWHR-G301Nがあったので、お役ご免となったこの無線LAN親機を無線LANで通信できなかった部屋のPL-05Hに接続して使ってみました。

PL-05HにWHR-G301Nを組合わせて使う

WHR-G301N場合、ルーター機能は不要なのでスイッチでルーターモードをOFF(ブリッジモード)にして、青色以外のソケットにLANケーブルを差込み、PL-05Hと接続して使います。

もし、初めから無線LANで接続するのであればPL-05Hと同じHomePlug AV1.1規格を採用している同社のWPL-05G300を使う方法もあります。

このWPL-05G300はPL-05Hに無線LANルーターの機能が追加されたもので、タブレットPCやノートPCを無線LANで直接WPL-05G300と接続することができます。

そのため上記のように無線LAN親機を後から追加する必要がありません。

デジタルTVやデスクトップパソコン、ネットワークプリンタなど有線LANのみでの利用や、無線LANルーターが余っているならPL-05Hを使い、それ以外で無線LANを使うのであればWPL-05G300を使うというのが正解だと思います。

PL-05HとWPL-05G300は混在利用可能とメーカー側が発表しているので、必要に応じて使い分けると良いでしょう。


●まとめ

ハイパワー型の無線LAN親機に中継器を付けてようやく通信できる部屋がPL-05Hで快適に通信できるようになり、いままでの苦労と費用はなんだったのかというほどインターネットへの接続が快適になりました。

環境による転送速度のばらつき、ノイズやブレーカーの相性問題といったPLC特有問題もありますが、有線LANの配線工事をするよりはるかに安価で有線LANネットワークを構築できるという点には魅力を感じます。

遠すぎたり、鉄骨で電波が遮られて無線LANの電波が届かないという場合には、PL-05Hを導入したら解決できるかもしれません。

もしこれでダメなら、残りは有線LANケーブルを業者に施工してもらうという手しかないでしょう。